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《本記事のポイント》
- 安全が確認され、避難解除が進む福島
- 帰還か定住か、永遠に援助をすることは難しい
- フロンティア福島に帰還しやすい施策を
今村雅弘復興相の「自己責任」発言が物議をかもしている。
4日の閣議で、福島第一原子力発電所の事故で自主避難した人への支援の窓口について、「地元の実情に詳しいのは県」という理由で福島県などの自治体に任されており、今後もその方針を続けることが確認された。閣議後の会見で、記者からの「(自主避難して帰れない人は)自己責任だとお考えですか」という質問に、今村氏は、「自分はそう(自己責任)だと思いますよ」と答えた。
震災以降、福島県は避難指示が出なかった地域に住んでいたが、原発事故の影響を不安に思い、「自主避難」した人たちに住宅の無償提供をしてきた。それが今年の3月末で打ち切られた。この質問はそれを背景としたものだ。
このやり取りの中で出てきた「自己責任」という言葉については冷静に考えなくてはならない。
放射線への不安があおられ、必要の無い避難が行われた
そもそも、福島での生活を取り戻し、雇用を取り戻すためには、行政がもっと早く帰還に向けて動かなくてはならなかったはずだ。それを妨げたのは、放射線への不安をあおるような政権の対応だった。当時、自然界の放射線量よりも少ない年間線量1ミリシーベルト以下が除染目標と定められた。
自然放射線は、全世界の平均では年間2.4ミリシーベルト、日本の平均では年間1.4ミリシーベルトあると言われている。それよりも低い年間1ミリシーベルトを目指す科学的根拠はない。
この除染目標が定められた結果、あたかも年間1ミリシーベルト以下でなければ危険であるかのような認識が様々な媒体でみられた。こうして不安をあおられ、必要のない避難へと駆り立てられた人は多い。当時のマスコミ報道や、判断をした政治家の責任は大きいと言える。
事故から6年が過ぎた現在、避難解除区域が増え、安全が確認されていても、福島へ帰還する世帯は少ないという。放射線量に対する不安がまだ残っていたり、避難した土地での生活が定着したなど、それぞれに理由はあるだろう。
しかし、だからと言って永遠に政府が援助し続けることは難しい。どこかで「帰還しない世帯は、避難先に定住した」という判断が働くのは当然のことだ。
福島はフロンティア
今必要なのは、帰還したい人が生計を立てられるよう、福島に産業を立ち上げることだ。
福島県では、復興のための企業の雇用支援を行いつつ、「医療関連産業」「再生可能エネルギー関連産業」「ロボット関連産業」の3つを復興をリードする成長産業と位置付けて、これらの産業に従事する企業の福島進出支援に取り組んでいる。また、被災区域に事業所を持つ中小企業の事業継続・再開支援も始めた。
雇用の創出と産業の立ち上げを促進していくには、同時に福島県の交通インフラの整備も行う必要があるだろう。首都圏や仙台との交通がスムーズになり、人が多く集まってくるようになれば、風評被害も不安も収まってくるはずだ。
福島の土地は可能性に満ちている。今、少しずつ福島を愛する人が集まり、チャレンジを始めているところだ。福島が未来都市建設のビジョンを打ち出せば、そこに帰還し、移住したいと考える人もさらに増えてくるのではないか。そうしたフロンティアスピリットのある人を応援したいと思うのは筆者だけではないだろう。
(HS政経塾 野村昌央)
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