中南米をめぐる日中の資源外交のゆくえ
[HRPニュースファイル1080]
http://hrp-newsfile.jp/2014/1613/
文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成
◆中南米訪問に力を入れる安倍首相
7月25日から中南米訪問を開始した安倍首相は、メキシコ、トリニダード・トバゴ、コロンビア、チリを訪問し、8月1日にはブラジルのルセフ大統領と会談します。
日本の首相の訪問は、メキシコ、ブラジル、チリが10年ぶり、トリニダード・トバゴとコロンビアが初となりますが、今回の訪問には、日本のエネルギー安全保障を確保すると同時に、中南米に浸透する中国の影響力に対抗する狙いがあります。
安倍首相は、25日に「メキシコの石油増産やシェールガス開発が、世界のエネルギー市場の安定にとって重要だ。日本の技術と資金が今後有効に活用されることを期待する」と述べ、「トリニダード・トバゴで天然ガス、チリでは銅、リチウムなどの開発で日本の技術支援や投資を」(産経ネット版7/30)活発化させる方針を示してきました。
◆中南米に浸透する中国の影響力
安倍首相は、中南米にてインフラ輸出、資源・エネルギー面での連携、国連での地位向上を図るための味方づくりなどを進めていますが、すでに習近平氏は7月中旬に中南米四か国を訪問しているため、今回は、東アジアでの日中の対抗関係が地球の裏側にまで持ちこされています。
8月1日に安倍首相はブラジル入りしますが、習近平氏とルセフ大統領との首脳会談では、ブラジルの鉱山開発企業に約5千億円規模の融資、アマゾン流域で建設中のダム開発支援、ブラジルのエンブラエル社製の航空機60機の購入等が決まっています(産経ネット版 7/18)。
習氏は、「中南米30カ国以上が加盟するラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)の首脳会議にも出席し「2024年までに中南米との貿易総額を現在の約2倍の5千億ドル(約50兆円)以上にする」(産経ネット版 7/25)と豪語しました。
現在、長年の積み重ねもあって、中国の資源外交や貿易拡大のための世界戦略は中南米にまで浸透しています。(習氏は就任以来、二回目の中南米訪問を行なっており、前主席である胡錦濤氏も中南米を訪問している)
筆者である私も、ペルーに住む知人から「日本語を学ぶ人が減り、ビジネスで有利な中国語を学びたがる人が増えている」という話を聞いたことがありますが、今後、日本はGDP第二位奪還計画を立てるとともに、もっと国際広報に力を入れていかなければならないでしょう。
日本の首相が訪問できたのは10年ぶりであることを考えると、今後、日本にとって大切なのは、世界規模で「敵を減らし、味方を増やす」外交戦略を展開することです。
そのためには、「常に地球儀を見ながら考えていた」とも言われる毛沢東以上の戦略眼を持った大政治家が、日本から出て来なければならないでしょう。
◆中南米最大の親日国ブラジルとのさらなる関係強化を
中国に比べると、なかなか外遊できない日本の首相は後手後手になっていますが、習氏の中南米訪問にはベネズエラやキューバなどの反米国も含まれているため、日本としては、ブラジルなどの国々に「自由主義、民主主義国の連携」を訴えることで、中国との差別化を図ることができるでしょう。
1日に安倍首相が赴くブラジルは150万人の日系移民が住む南米最大の親日国であり、日本とは歴史的にも文化的にも経済的にも深いつながりを持っています。(日本からのブラジル移民には100年以上の歴史がある)
そして、2016年のリオデジャネイロ・オリンピック、2020年の東京オリンピックにおける相互の協力、ブラジル人移民の受入れ、南大西洋の深海油田開発への協力、ブラジルからの石油、鉄鉱石の輸入など、日本とブラジルの間で進めるべき取組みも数多くあるのです。
ブラジル側には、「中国の軍事的脅威は地球の裏側にある自国にまで及ばないので、確執が続く日中両国とうまく付き合い、日中両国からブラジルに有利な融資や支援などを引き出したい」という考えもあるでしょうが、日本としては自由主義、民主主義国としての価値観の共通性や日系移民を通じた交流の歴史などを強調し、単なる経済関係以上の、深い協力関係を目指していかなければなりません。
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