行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

士業ビジネスのモラル(シリーズ第7回 その2)

2007-09-04 03:10:09 | 行政書士のお仕事

 前回お約束したように、ひとつ間違えば犯罪行為に手を染めてしまうような事例をいくつか紹介してみよう。

【事例1】日本人と結婚して1年数ヶ月で、姑さんとの不仲が原因で、離婚してしまった女性のケース。

書 士:「離婚届は、もう出したのですか?」

相談者:「ええ、主人は本当は良い人で、別れたくなかったと思うのですが・・・母親との間で板挟みになっていて、仕方がないと思って諦めたのでしょう。昨日出しました。」

書 士:「今はどういったお仕事ですか?そして失礼ですけど、最終学歴は?」

相談者:「貿易会社でアルバイト事務員をしてます。大学は、結婚したので、2年目で中退してしまいました。」

会社上司:「よく働いてくれるので、会社としては、何とかしてあげたいと思うのですが、何か良い方法はあるのでしょうか?」

書 士:「お話を伺った限りでは、婚姻期間が短いので、元日本人の配偶者としての在留資格の変更は許可されないでしょうし、学歴もせめて短大でも卒業していれば、貿易業務で翻訳などをやっているようなので、可能性があるのですが・・・」「仕事を続けるというのは難しいですね。」「離婚されたばかりで、失礼な質問ですが、どなたか交際している方でもいるのですか?それであれば、待婚期間が過ぎるのを待って、結婚されるのも方法かとは思うのですが・・・」

相談者:「とくに・・・。今は・・・いない、の・・ですが・・・」

会社上司:「この年まで、縁がなかった男ですから、XXさん良ければ、形だけでも私の名前をお貸ししても良いのですが・・・。それで、XXさんが日本に残れるのであればですが・・・。」

書 士:「ちょっと、待って下さい!」「それは、偽装結婚になってしまいますよ!」「それだけはお勧めできません。」「最悪、お二人とも捕まってしまうのですよ!」

相談者:「あのう・・・。その話、少し考えさせて下さい。嘘の結婚とかではなくて・・・」「でも、急な話で、びっくりしちゃって・・・」

書 士:「あら!意外な展開になって来ましたねぇ!」「しかし、まあ、お二人の心が本当に熟すまで、もう少し待って見ましょう。ところで、XXさんはお若いし、日本語もお上手ですから、大学受験をして見ませんか?まだ6ヶ月以上あるので、勉強は間に合うと思うのですが、やってみませんか?」「学校生活が慣れるまでアルバイトの許可は下りませんが、今の在留期間ぎりぎりまでは働けます。そして、学校を真面目にちゃんと通えば、後期からは1日4時間以内のアルバイトも許可されますよ。頑張ってみませんか?」

相談者:「あ~!その方法いいかもしれません。実は、もっと勉強もしたかったんです。」

会社上司:「日頃良くやってくれているので、会社としてもXXさんが勉強できるような態勢で協力して行きます。」

 と、まあ目出度し目出度しといった結末ですが、実は、この話し、5年~6年ほど前に実際にあった二つの話をくっつけて作った架空の話です。しかし、偽装結婚してまでも、何とか日本に残してあげたいと言った方が、本当にいましたし、姑と折り合いが悪く、日本人夫と離婚して、急遽大学受験の勉強して、見事に合格した外国人女性も本当にいました。

 前者の場合、変な同情が過ぎると、偽装結婚を助長したり、或いは見逃したりすることになってしまうのです。本事例のように、同情か恋愛感情かが不明瞭な事案の場合については、結婚という話を敢えて教唆するような言質は極力避けるべきでしょう。やはり、原理原則を相談者には、とことんまで説明し、理解して貰うことが大切なのです。

 一方、後者の場合ですが、このような適切なアドバイス(大学受験)ができるかどうかが、最大のポイントです。相談者ご本人の年齢や将来性を考えれば必然的に出てくるアドバイスなのですが、ついつい簡単な解決策である、身分を使った解決法、すなわち、次の結婚相手を見つけるように、と、まるで偽装結婚を教唆しているのと同じ事なアドバイスになってしまいます。

 ちなみに、こういった外国人と偽装結婚しても良いと思うような、いわゆる戸籍を売るような日本人男性とのルートがあって、もし紹介でもしたのならば、これはもう立派な犯罪です。

 ですから、下手な親切心や同情から、犯罪へ関わることを避けるためには、やはり実務に精通し、的確なアドバイスが常に出来る行政書士であることが求められます。その為には、短時間に相談者のシチュエーションを確実に把握し、あらゆる可能性を検証できる知識が不可欠ではないかと思います。これが足りないと、親切心や同情心ばかりが先行してしまって、結果として、虚偽申請に関わってしまう事も多々あるのではないかと想像する次第です。

【事例2】建設業許可に関する相談で、要件不足がはっきりしているケース

書 士:「お話を伺った限りでは、社長ご自身の技術者としての経験年数が、どうしても1年足りませんね。」「やはり、XXの有資格者を常勤で雇用されるしかないでしょうね。」

相談者:「常勤ですか?アルバイトというか、非常勤の有資格者では駄目なんですかねぇ?」

書 士:「常勤性については、社会保険の加入や通勤定期券のチェックがある場合がありますから・・・」

相談者:「何か、そういった有資格者をご紹介頂けないですかねぇ!それも、こちらにとっての好条件で・・・。」「そうゆう事、やってくれるんじゃないのですか?」

書 士:「それは、名板貸しといって、犯罪になっちゃいますよねぇ。」「こんな僅か10万15万の報酬で捕まったら、割が合いませんよ。尤も、それが、100万、150万でも、私は、やりませんけどねぇ!ハハハ。」

 こう言ってしまえば、勘違いしている相談者は、大人しくお帰り頂けると思うのである。ちょっとでも、物欲しそうな顔をすれば、そこに付け込まれるのは確実なのだ。何せ、彼ら経営者の方々は、海千山千の強者ばかりですから・・・。中には、裁判所の法廷でさえ、平気で嘘を並べ立てる輩もいるくらいなのですから・・・。

 さて、次回は、恥ずかしながら自分の実例も含めて、過去に実際に騙されたり、利用されたりした事例をご紹介しようと思う。

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