ここ数年の傾向ですが、インターネットによる検索が普及した為なのでしょうか、メールや電話で問い合わせてくるクライアントさんは、ある程度下調べをして、その事情に極めて詳しい方々が多いようです。そして、そのような依頼人の方々の事案に限って、ネット上に答えが見つからない場合が多いのです。考えて見れば当たり前の話ではあります。ネットで答えが見つかれば、敢えてお金を払ってプロに頼む必要など無い訳なのですから。
従って、皆さんの事務所に問い合わせが来た場合、その8割の問い合わせは、ネット等で調べてもよく分からなかったから、我々プロに聞いて見ようと思った事案なのです。更には、その調べても良く分からなかったという事案は、概ね約40%の情報しか入手できていません。それは、概ね依頼人はワードによる検索しかしておらずに、当該官公庁などのサイトから必要な情報や答えを見つけられなかったケースだからです。つまり、全体の必要情報のうち、概ね60%の情報は、素人がネット上検索などして調べたとしても正確な答えが見つからないような事案なのです。しかし、慣れた者が検索すればこの60%の取得できなかった情報のうちの約6~7割である約40%に相当する情報を官公庁のサイトから入手することができます。つまり、ネット検索だけでも、必要情報の80%程は入手できるのです。
従って、依頼人と新人の差は、この40%の官公庁情報取得が即刻入手できるかどうかだけの話なのです。そして、新人の方々とベテランとの違いは、更に残りの非公開情報である20%に関わる非公開情報に関する知識と経験が豊富なのか、或いは無いかだけの話なのです。
一般的には、この残り20%の非公開情報に関する知識が、いわゆる業務経験といわれる部分になります。ところが、この20%の非公開業務情報うちの約5~8割は、ある方法で調べることが可能です。そう、当該官公庁の担当官に直接聞きに行くことなのです。場合によっては、電話で済む場合もあります。つまり、新人とベテランとの差は、官庁に上手に聞き出すことができれば、ベテランとの差は、僅かに4%から最大でも10%程度だけの情報の差だけになってしまうのです。しかも、これは直ぐにでも出来るようになります。
そうすると、実際に不明で難解な事案は、実は全体の僅かに4~10%しか無いことになります。な~んだ、大した事は無いじゃないか!と思われたら、あなたはもう失格です。実は、この4~10%の壁は、とても厚く、とても険しい壁なのです。1年や2年では、到底破ることなどできません。少なくとも3~5年は掛かります。それも、可成りの経験を積んだとしてもです。
この僅か4~10%部分の8~9割が分かってしまえば、基本的にはクライアントからの問い合わせで、答えに窮する事は無くなります。残りの1~2%というのは、本当に希少な事案ですから、ある意味ではプロとしても大変面白い、或いは興味をそそられる事案となるのです。
ここまで来れば、もう立派なプロです。ですから、皆さんはまずは、官公署に問い合わせなければならない部分を、少しずつ経験を積んで、1日でも早く減らせるようにすべきでしょう。
ネットでの回答ですと、時間的な余裕があります。しかし、電話ですと基本的には即答です。それも、1から10まで知っていても、全部は話しませんよというスタンスで話す訳ですから、聞く方は圧倒されているはずです。つまり、依頼人側が、「この人は、とても良く知っていそうなので、事務所に訪ねて、感じが良さそうだったら正式に依頼しよう」と思う方が多いと思います。
しかし、いつも「役所に確認してから、改めてご連絡致します!」では、「こいつは慣れていないなぁ!この事案は絶対にミスは出来ないから、他のベテランの居る事務所に問い合わせて見よう!」と思われたら、そこでゲームオーバーです。
つまり、まずは官公署にいちいち問い合わせなくとも、依頼人に即答できるようになるか、なれないかが、仕事量がぐ~んと増えるかどうかのボーダーラインなのです。国会での大臣の答弁は、優秀な官僚達が想定模範回答集を事前に作っている事は有名な話です。新人である皆さんも、ある意味では新任の大臣のようなものです。その答え一つで、依頼人からの評価が決まってしまうからです。ですから、常にご自身で想定問題、模範回答集を作っておきましょう!
商人は、常に良い商品を仕入れなければ、その商いを続ける事は絶対にできません。我々行政書士は、当該手続きに関わる更新された最新の専門的な知識を常に堅持する事なのです。これは、私のような10年選手や、20年30年選手でも全く同じなのです。それが出来なくなったら、どんなベテランでも、もう第一線のプロとは言えないと断言できます。
ですから、その為には、私は相当数の最新の専門書を、常に購入して勉強し、更には、常に関連する官公庁のHPなどで公開されている最新の法令の変更に目を光らせ、そして、講習会などに参加して、官公庁の担当官や同業者のちょっとしたヒントを何とか得ようと日夜努力しています。そうしないと、私自身が後進の方々や先人の方々に遅れをとってしまうからです。これは、決して終わることはありません。エンドレスです。これで十分という事は決してありません。それは、法令は必ず改正され続け、官公庁の告示・通達も出され続けるからです。
ところで、私の事務所に問い合わせがある相談のうち、手続きとして受託できうる案件であれば、その95%以上は、そのまま依頼に結び付いています。ところが、10年前、9年前は、問い合わせて頂いたクライアントの方々の半数以上の方々は、そのままご依頼して頂く事には至りませんでした。それは、未熟であった当時では当然の事なのでした。
しかし、新人である皆さんは、おそらく喉から出が出るほど依頼を増やしたいと思っていらっしゃる事だと思います。そこで、その秘訣といいますか、糸口については、次回最終回にてお話したいと思います。