行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

外国人在留カード導入の本当の目的とは・・・?

2009-07-21 11:18:41 | 社会・経済

 外国人在留カードの導入に関して、巷間賛否両論がありますが、その導入の本当の目的は一体何だったのでしょうか?

 それはずばり、住民税、健康保険料、年金保険料などの支払いを回避、忌避する外国人に対する徴収が最大の目的であると思われます。

 一般的には単身赴任か出稼ぎ感覚の外国人は、一時帰国した後には必ず転居し、更には頻繁に転居するような外国人に至っては、転居後の実際の住居地が不明になってしまっているケースが非常に多いのです。ですから、結果として所得のあった翌年に課税される住民税の課税や、健康保険料の徴収が事実上できていない地方自治体は相当数に上り、その未徴収税額や未収保険料額は相当な額に上っていると云われています。

 問題は、こういった課税や徴収システム上の瑕疵を知っていて、敢えて悪用している外国人が、残念ながら可成りの数にのぼっていることにあります。

 我々日本人は勿論の事、比較的安定した勤務先に勤めている外国人や就学児童を抱える外国人家庭、それに、日本人や永住者と婚姻している外国人の方々ですと、当然の事ながら住民税や健康保険料の支払いを免れることなど到底出来る筈もありません。

 しかし、一部のあざとい外国人は、住民税はおろか、健康保険料、年金保険料などを全く払っていない者達が実際相当数いるのです。これは、納税の義務や健康保険制度に於ける相互扶助の精神からして、明らかに不公平であるとの声は、既に一部外国人の間からも挙がっていたのでした。確かに、一部の外国人だけが、結果としてこれらの市民としての義務を免れるような状態を放置することは、社会正義に反していると云わざるを得ません。

 また、外国人登録制度では、一時的な長期海外出張者の場合、市区町村に仮に転出届をすると、外国人登録証を返却しなければならなくなり、在留資格喪失の可能性もあるので、便宜上実体のない日本での住所を引き続き維持しなければならないという制度上の矛盾もあります。これが、在留カードと外国人住民基本台帳制度との併用になれば、外国人登録証ではなく在留カードですから、重要な身分証でもあるカード返却の必要もなく、長期海外出張が余儀なくされている外国人の市区町村への不在の届出も可能となります。

 しかし一方では、外国人に対する過多の個人情報までもが中央官庁によって管理されたり、地下に潜ってもいないような平穏に暮らしている不法残留者があぶり出される可能性があるなど、確かに気がかりな点も多々あることは否定はしません。しかし、その辺りの点では国際的な非難を浴びない為にも、入管当局に運用面での慎重な取扱に期待するしかありません。

 1990年の入管法の大改正から19年、最低限の義務を果たさない一部の外国人達を制度上容認してしまったり、実体のない住所登録をしなければならないような矛盾を抱えている現行の外国人登録制度を、何としてでも死守すべきだとは到底言えないような状況であることだけは確かなようです。

 結果として地方分権に逆行するような中央官庁による在留カード制度への移行(3年以内)にまで発展させてしまったことは、残念な結果ではありますが、一部の外国人によって招いた不幸な結果と云わざるを得ないような気がします。

 おそらく近い将来、日本政府は数百万人単位の外国人を日本へ入国就労させる必要性が生じる事態が起こりうることも視野に入れているのだと思います。

 現行の外国人登録制度を維持したままで、実際にそんな事態となり、多くの外国人が日本に入国就労することになった場合、仮に相当数の外国人達による納税や保険料の回避や忌避が起こり、不公平感による外国人排斥運動にでも発展したら、それこそ目も当てられません。最悪の場合、諸外国で起こったような悲劇が起こる危険性さえも孕んでいるからです。

 しかし、この在留カード制度を導入すれば、こういった外国人は事実上日本に留まる事ができなくなります。ですから、模範的な市民として住民税、健康保険料、年金等の納税等の支払い義務を確実に行っているのは寧ろ在日外国人であるという、結果として”在日外国人=善良で模範的な市民”といった良いイメージに結び付いて行くような気がしています。

 以上の理由から、今回の入管法改正での最大の目玉である在留カード制度の導入目的は、おそらくこういった近未来に於ける外国人に対する入国・在留政策の中で、その結果として起こりうる社会的な影響までもを視野に入れた改正ではなかったのかと、私個人としては推測しています。

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コメント (2)
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