行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

33年前まで米国に居た日本人不法就労者?

2010-06-13 12:49:41 | 国際・政治

 毎年6月は、不法就労外国人対策キャンペーン月間だそうだ。

 ここ数年、毎年のように不法就労外国人対策として、通行中の外国人に警察官が外国人登録証や旅券の提示を求めて在留資格の有無を確認したり、入管警備官が工場などで働く事業所の抜き打ち訪問による就労資格のチェックを強化しているようなのだが・・・。

 http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri01_00004.html

 不法就労者といえば、アジア、アフリカ、南米等の外国人ばかりと思われている方々が多いだろうが・・・。

 年配の方で海外駐在されていた方々などはご記憶の事だとは思うのだが、実は僅か30数年ほど前には、日本人不法滞在者が欧米にかなりの数居たことは、もう既に忘れ去られようとしているようだ。

 1977年の夏休みのある日、友人達と自動車でアメリカのテキサス、アリゾナ、カリフォルニアと横断旅行したことがある。その時、ロス・アンゼルスのリトルトウキョウで、久しぶりの日本食が食べたくて某日本食屋に入ったのだが・・・。

 その店では、我々と同世代だと思われる若い日本人アルバイトが所狭しと働いていたのである。メニューのドル表示さえなければ、まるで日本に戻って来たような錯覚さえ覚えるような雰囲気の店であった。

 そんな日本に居る雰囲気と懐かしい料理を味わいながら友人達と話し込んでいたのだが・・・。ふと気が付くと、日本人アルバイト達が急に誰も居なくなっているのである。

 おやっ、と思って見回すと制服にUS Immigration、つまり移民局と書かれた屈強な男性がカウンターの中にいる料理人風の日本人と話をしているではないか。

 「移民局の人間が来て、従業員がほとんど居なくなったという事は、ここで働いている彼等の殆どがビザ切れだったんだな。」

 「ああ、こんなに居ると思わなかった。ひどいもんだ。こうはなりたかないよな!」と語りながら食事を続け、帰ろうとして会計をしようとした私達であったが、いつの間にやらあの消えた不法就労の日本人アルバイト店員達が、どこからともなく戻って来ていたのであった。

 「ありがとうございました!」、と元気よく挨拶する彼等。

 すると友人の一人が、

 「あいつら、結構慣れているね。」

 翌日、帰国の途に就く前に、同じリトルトウキョウ内にあるカフェテリアでコーヒーを飲んでいた私達の近くにいた、別な日本人の若者達の小声での会話が、偶然耳に入って来た。

 「今度は、XX月頃には恩赦があるらしいよ。」

 つまり、彼等は恩赦によるビザの取得を待ち望んで隠れ棲んでいる日本人の不法滞在者だったのだ。

 このように、不法就労日本人は、私が実際に目にした33年前には、このロスアンゼルスのみならず、サンフランシスコやニューヨークにもかなり居たらしいのである。そして、はたまたヨーロッパのパリやロンドン等々にも相当数が居たそうである。

 こんな話を、つい先日参加させて頂いた慶応大学東アジア研究所の研究会ミーティングの席で、20代30代の若い研究者や学生さん達を前にしてお話しさせて頂いた時、「えぇ~」と、驚嘆されてしまった。

 それ程に、今の若い世代の方々は、かつて、いやほんの僅か前まで、日本人不法滞在者をよく海外で見かけるほど、日本という国がそれほど豊ではなかった事を全くご存じなかったようである。

 そんな我々の世代では当たり前の話を、若い世代の方々がもう全くご存じなかった事が、実は私にとっては大変な驚きであったのだった。

 1977年当時、確か外国為替レートは1ドル308円であった。従って、仮に米国の時給が3ドル?(詳しくは知りませんが・・・。)としても、米国の時給は日本円で900円以上と、当時の日本での時給400円(これも確かな記憶ではありません。)に比べて、2倍以上にもなる良い稼ぎが得られる国であったのだ。だから、彼等の行動も分からない訳でもないのである。

 一般的に、国際的な人の流れは、水の流れとまったく逆となることは余りにも有名な話である。つまり、水は高いところから低いところで流れるが、人の流れは所得の低い国から高い国へ流れるのである。

 1977年当時の米国は、日本よりまだまだずっと豊かな国であり、日本より高い所得の国であった訳である。しかし、いまどき不法就労のアルバイトをしに米国に渡る日本人の若者などまずいないであろう。つまり、米国の相対的な国力が日本に比べて低下した(或いは、日本の国力が上昇した。)ことは紛れもない事実のようだ。

 そうゆう意味では、アジア、アフリカ、南米から絶え間なくやって来る外国人にとっては、日本という国は、まだまだ所得が高く、国力のある国である証拠でもあるのだ。

 しかし、この外国人達が、日本を素通りして中国や韓国に向かう日が無いとは言い切れない。ましてや、将来日本の若者達が再び不法就労者となって海外に散らばるような国にならないとも限らないのだ。

 いや、これからの政治家や官僚達には、この事を忘れずに、国家の舵取りだけは決して間違って欲しくないものだ。

 最後に、不法就労者を取り締まる事に力点を置くよりも、不法就労者を安価で劣悪な条件で雇用することで不当な利益をあげている企業を、むしろ厳罰を以て取り締まる法律・施策が最も重要であると考える。

 それは、不法就労者を著しく減少させたいのであれば、雇う側を厳しく取り締まった方が、最も効果的であるということは誰もが分かっている訳であるから、企業からの圧力やしがらみに屈せずに是非それを実行に移して頂きたいと思う次第である。

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コメント (2)
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