『行旅病人及行旅死亡人取扱法』とは、住所も身寄りもない、いわゆる「行き倒れ人」の行政機関による救護やその取扱に関する法律なのだそうで、その歴史は意外と古いのである。
行旅(こうりょ)という言葉が法律等で最初に出て来たのは、明治十五年太政官布告第四十九号『行旅死亡人取扱規則』のようで、明治三十二年には正式に、法律第九十三号 行旅病人及行旅死亡人取扱法として立法化され、一部は改正されているものの、現在も有効な伝統のある法律なのである。
竹永三男氏の史料である【行旅病人救護・行旅死亡人取扱法規とその運用実態-日露戦後の福島県における事例-(The administrative rescue and treatment of persons dying on the street in Fukushima Prefecture after the Russo-Japanese War : Mitsuo TAKENAGA)】によると、そもそも乞食として放浪していた者や騙されて故郷から連れ出された少年などが行き倒れとして発見され、この病人の救護・治療、或いは、仮埋葬などの費用を各府県で負担する事を定めたものらしい。
従って、身元が知れて親族等がいる者は対象外となるようである。また、昨今では旅行中の外国人などもその対象となるらしい。
各地方自治体では、それぞれの施行規則を県条例で定めており、各県によってその細部では多少異なるようだ。
なお、死亡した行き倒れ人、つまり行旅死亡人は官報により公告される。その公告内容をデータベースにしたサイトがあるので、行方不明者がいればネットで調べることも可能のようだ。
http://theoria.s284.xrea.com/corpse/
ちなみに、昨今の行方不明老人達で捜索願が出されていない(身寄りが居ない方など)ようなケースでは、こういった行旅死亡人となっている可能性が高いとも云われている。
我々行政書士会会員からの会費で成年後見の一般社団法人を設立し、社会貢献を目指すと標榜している行政書士会であるのならば、少なくともこのような一人暮らしの老人の方々の孤独死や行き倒れとなる悲劇を、少しでも減らすような社会貢献をして頂きたいものである。