行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

無国籍ネットワーク&UNHCR共催のシンポジウム

2011-12-12 09:15:25 | 多言語行政書士協会

 無国籍ネットワークと国連高等弁務官東京事務所と共同開催のシンポジウムが、12月11日、日曜日の午後2時~5時半に明治大学で行われた。

 「日本における無国籍の課題、無国籍削減条約批准に向けて」というテーマで、神奈川大学法科大学院阿部浩己教授の基調講演に続いて、UNHCR駐日代表のヨハン・セルス氏、同法務官のダニエル・アルカル氏や国立民族学博物館準教授で無国籍の研究者であり無国籍ネットワーク代表の陳天爾氏らのスピーチがあり、続いて無国籍者の救済に係わっている弁護士の小豆沢史絵氏、実際の無国籍者のビルマのチン族のチンさん、中国籍を回復された李さんなどを交えてのお話しがあった。

 特に、多民族国家ビルマのチン族のチンさんの悲惨なご経験を聞くに至り、無国籍で苦しむ方々を何とか救済しなければならない現状があると、おそらく多くの参加者の方々が感じたに違いないと思う。

 シンポジウムの結論としては、UNHCRは先ずは日本政府に無国籍者を認定する機関の、早急なる設置を求めてはいるのだが、よく考えて見ると、事はそうは簡単には行きそうもない。

 それは、出入国当局である入管局としては、外国人を強制退去させる場合、その本国へ送還することが原則である以上、強制退去先を失って行政執行ができない状態になることを恐れているのではないかと想像できるからである。

 例えば、強制退去処分となった者が故意に無国籍状態となる場合や、無国籍を強制退去を避ける道具に使われる恐れがあると、おそらく入管当局は考えていると想像される。

 確かに、送還する国が無ければ、長期収容する事となり、それが非人道的だとして世界各国から非難される原因になるために、仮放免を許可したり、場合によっては在留特別許可を出す必要に迫られるのである。

 とはいえ、この問題をそのまま放置するすることは、偽装認知を危惧するあまり、日本人認知子の国籍を長年認めてこなかった場合と非常に酷似していると思う。この間、苦しんだ子供達の事を考えれば、この様に再び行政庁による不作為行為を繰り返すべきではないと私は思うのである。

 つまり、偽装無国籍者が出難いような強力な罰則や実効性のある防止策を設ければ、この問題は解決に向けて一気に進められるような気がするからである。

 事実上の立法準備機関も兼ねる行政庁は、とかく法を悪用される可能性のある制度の創設を嫌う傾向にあるのだが、今後の世界情勢や朝鮮半島情勢などから難民でかつ無国籍者が多発する可能性も多々あるのである。

 そんな事態になってから、付け焼き刃的な対処によって国際的な非難を受ける人道的な配慮に欠けた失態を犯し、国際的な信用を失墜するよりも、当該行政機関は予めきちんとした無国籍者に対する救済ルールを設けて置くことこそが、寧ろ日本政府自身の先進的な取り組み姿勢を世界から評価される良い機会になるのではないかと、私個人としては思うのである。

 最後になるが、日行連常任理事の姫田格氏や東京都行政書士会元国際部長の榎本行雄氏などのお姿を見かけることもできたように、我々行政書士としても無国籍者に対して積極的に関心を持って頂ければと思った次第である。

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