行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

あまりにも姑息な・・・

2007-12-18 15:59:55 | ちょっと一言!

 今朝、入管法違反者であるクライアントとその配偶者を東京入管に出頭させるべく、品川駅中央出口の時計台の前で待ち合わせていたのだが・・・。

 定刻8時半になっても現れない。おかしいと思ったら案の定、ご主人から私の携帯に電話があった。「警察に留められているので、また連絡する」との事。山のように改札口から溢れ出る通勤者の流れの奥を見渡すのだが、どこに居るのかが分からない。仕方なく、再び入場して駅コンコースなどを探したが見付からない。あきらめて、再び時計台に戻ると、詰め所に連れて行かれたとの事。当然である、超過滞在者なのだから。

 だから、こうして品川の東京入国管理局警備部門に配偶者と共に出頭中であったのだが、何という事なのだろうか。自首してくる者を警察署近くの駅かバス停で、逮捕してしまうような罠を張っているようなものである。

 詰め所は、京急とJRとの乗り換え口の陰に隠れるような所にあった。比較的年配の私服警察官が数名おり。既に、事情聴取が行われていたのである。私は、彼らの出頭に付き添っていることを説明し、超過滞在者に関する分厚い資料を見せて簡単に説明したのだったが・・・。勿論、それで今のデジタル的なお役所仕事で、奥さんである超過滞在者を放免してくれるとは思っていなかったし、彼らにできる筈もなかった事はよく分かっていたのだった。

 責任者風の刑事は、申し訳なさそうに説明はしてくれるのだが・・・。どうせ、霞ヶ関からの指示で、不法残留者の摘発数を上げるために、こんな馬鹿げたことをやらされているのである。だから、敢えて彼らに詰め寄ることもしなかった。それは、ベテラン刑事の丁重な態度からして”彼らも霞ヶ関の点取り虫達の犠牲者なんだ”と思えたからであった。私は、ただ淡々と年配の刑事に説明を続けたのだった。

 幸い、クライアントご夫妻は落ち着いていて下さったので、私も冷静にご主人にご説明ができたと思う。しかし、しかし、しかし・・・だ。自主的に帰国を希望する外国人達が通る、品川駅コンコースで尋問して逮捕すれば、確かに不法残留者の検挙数はほんの一時的には増えるであろう。しかし、こんな事をして、不法残留外国人の間で噂になり、帰るに帰れない外国人が苦し紛れに、凶悪な犯罪を犯したらどうするつもりなのだろうか?

 出頭者は、クライアントのように引き続き在留を希望する者やら、帰国を希望する者やら年間数万人に上ると思うのだが・・・。滞在を希望する者は、今後は車かタクシーで入管に行くようになるのだろうから、それはそれで良いのであろうが・・・。しかし、電車でしか移動できないような生活困窮者は、おそらく怖くて出頭しなくなってくると思われる。そうなると、職も無い、帰国もできない彼らに残された選択肢は何になるのであろうか?窃盗、強盗、麻薬売買、売春等々の凶悪・重大犯罪に走らざるを得ないのではなかろうかと危惧してしまうのである。

 ご存じかも知れないが、帰国を希望する外国人出頭者は、出頭しても直ぐに帰れる訳ではないのである。指紋と写真を採取され、指名手配かどうかの確認がなされ、早くとも出頭から10日程は出国できないのである。だから、重大犯罪を犯して、国外に逃亡される虞は極めて少ないのである。仮にそうだとしても、顔写真と指紋は採取され、データベースのいわゆるブラックリストに記録されるために、暫くは再入国はできない筈であるし、国際指名手配も可能となるのである。それなのに、それなのに・・・。

 こういった帰国しようとする出頭者に対してまで、このような馬鹿げたことを警察が続ける結果として、更なる犯罪や重大犯罪を誘発させることになったとしたら、霞ヶ関の警察官僚はどうされるおつもりなのであろうか?こんな馬鹿げた取締よりも、未解決の重大事件への捜査員の投入や、盛り場などで今でも繰り返される薬物取引や拳銃の発砲事件などを取り締まっていただきたいと、一国民として切に願う次第である。

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6 コメント

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もし、自国の国民が外国で同じ扱いを受けていたら... (なむ)
2007-12-19 20:31:03
もし、自国の国民が外国で同じ扱いを受けていたら・・・・・とかは、考えないですよね。
以前指紋押捺が問題になっていましたが
あの騒動からはなにも収穫する気さへ
ないのでしょうね。
更に酷い仕打ちになっているようで仕方ありません。
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なむさんへ (中村)
2007-12-19 20:57:51
なむさんへ
 今回の問題点は、年金の名寄せに関する政治公約不履行に関連しているのです。小泉元首相が4年前に、不法残留外国人を5年で半減させると公言したことに起因します。その期限が来年の夏か秋だからなんです。
 当時で、約28万~30万の不法残留外国人がいましたが、現時点でも、まだ18万人はいるようです。だから、政治公約である14万~15万人まで不法残留外国人を減らすために、政府や霞ヶ関がやっきになっているのです。それも、只の数合わせだけのために。
 ですから、それが逆効果になったり、更に問題を深刻化させるといった事は、彼等にとってはどうでも良い事のようです。「当面の問題をクリアーする」これが、点取り虫の正体なのですから。
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本当に国のやることって理解に苦しみますよね。 (すず)
2007-12-19 22:28:35
本当に国のやることって理解に苦しみますよね。
年金などの解決しなければならない問題があるにも関わらず、今度は参議院議員の宿舎を数十億円掛けて建て替えるといっているのですから、あきれたものです。議員宿舎って一等地にありながら、家賃も格安だそうですね。
 やっぱり日本の「勝てば官軍」なのかな~と思ってしまいます。
 あっ、先生のブログの内容とかけ離れた内容のコメンですいませんでした・・・
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すずさんへ (中村)
2007-12-20 01:26:53
すずさんへ
 防衛省の守屋元事務次官をはじめとして、税金をまるで拾ったお金のように無駄にどんどん浪費したり、自分達の天下り先の高額な退職金や役員報酬の確保のために、独立行政法人などへ無駄な交付金をどんどん付けたりしている訳ですから、国や地方自治体が借金だらけなのは当たり前のはなしです。

 一説によると、独立行政法人への交付金1割を削るだけで、消費税2%分に相当するそうです。
 本当に、この国はもう危ないかもしれないと、正直かなり不安になって来ています。
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目先のことだけにとらわれて、それを強行していっ... (さとみんみん)
2007-12-23 15:02:40
目先のことだけにとらわれて、それを強行していったらどうなるか…ということまで上の人々は考えが及ばないのでしょうか?
先生のように、広く深い視点で考えてもらいたいものです!
クライアントさんが落ち着いていて下さったのが、せめてもの救いのような気がしました。
でも…これからほんとにどうなってしまうのでしょうか?
漠然とした不安を感じます。。。
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さとみんみんさんへ (中村)
2007-12-24 00:00:35
さとみんみんさんへ
 コメントありがとうございました。ところで、一説によると良心のある有能な官僚は、今でもどんどんと辞めているそうですし、優秀な新卒者も国家公務員上級試験に受かっても入省しない傾向にあるそうです。
 確かに防衛省の守屋元事務次官なんか見ていると、あんな禄でもない人間を、官僚最高位の事務次官してしまう程、内部の人材の質が著しく低下しているのは紛れもない事実のようです。
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