今でこそ、同業の実務研修会が東京会本会、支部、任意団体などで頻繁に行われるようになりましたが、私が開業した頃の1999年当時では、研修会の開催は極めて少なかったのでした。
まして、インターネット検索なんて便利なツールも無く、入管局などの官公庁自身もその申請に関わる情報公開が積極的ではなかった時代ですから、自らが必死でその知識を体得するしか手はありませんでした。
当然ながら、徒弟制度さながらに新人を使う大ベテランの先生方も相当数いらっしゃったように記憶しています。
ところで、私はどのように業務を体得したかと言えば、
入管実務で言えば、当時大手町にあった申請窓口(当時は、就労(企業勤務などの在留資格)審査部門、永住審査部門(日本人の配偶者などの身分系の在留資格)等に別れていた)の前の長椅子で申請を待つあいだ、そして、申請が終わってからも、黙って聞き耳を立てて、実務の勉強をしていました。
A~D案件という入管の内部的な評価分類の存在や、不許可や問題となりそうな事例、或いは、受理して貰え無いような特殊例など、数々実際の申請例をカウンター越しから聞こえて来る外国人申請人と審査官とのやりとりの生の会話から、実際に聞いて覚えたものでした。
このように苦労して実務を覚えた一方で、当時の東京会国際部では年に2回程、統括官クラスの担当者を呼んでの講演を行っており、私としては本当に心待ちの研修会の一つでありました。
それは、実際に現場審査官達の口々からこぼれる言葉をヒントとして、実際の役に立ちそうないくつもの糸口を嗅ぎ取ることが出来たからでした。
研修会のあいだ、彼等の一言一句を聞き漏らさずに耳を澄まして聞いており、「これだっ!」というような、実際に実務に使えそうな数々のヒントを聞き取った記憶があります。
ですから、彼等の話の表面的な説明内容よりも、その口調や語り口、或いは表情などから、彼等のスタンスや入管局としての考え方などを読み取ろうとする習慣が今でも身に付いています。
ところで、当時の国際部長のE先生は、こういった場に限らず、ご自分のノウハウを惜しみなく後進の者に公開していました。
それは、おそらく業務に自信がお有りになったからだと思います。それは、E先生をお見かけする場がこういった官公庁の現場のみならず、学界、官界などの幅広い会合の場でもお見かけするからです。
私自身もそのようなE先生を見習って、ここ2~3年は後進の方々へ、積極的に自分の拙い実務経験を提供するようにしています。
もっとも、私はE先生ほど、行政書士としての造詣が深い訳でも無いので、申請実務上の経験や知識を、乞われればお教えする程度です。
但し、私のバックグラウンドにあるビジネス経験やビジネス感覚だけは、どうしてもお教えする事ができません。実は、この部分が最も実務に役に立っているのですが・・・。ですから、行政書士の実務上の経験や知識を提供し、公開することにはまったく抵抗がありません。
むしろ、後進の方々に早く肩を並べて頂き、お互いに切磋琢磨して語り合いたいと思うようになっています。そしてその方が、楽しいじゃないですか!
その昔、自分が苦労したからこそ、若い方々にはそんな無用で、無駄な苦労や回り道はして貰いたくないと思うのです。