一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

三品和弘 『経営戦略を問いなおす』『どうする?日本企業』(その2)

2011-10-28 | 乱読日記

昨日の続き

2冊目『どうする?日本企業』では、横並びでイノベーション、品質、多角化、国際化、をうたう日本企業の「成長戦略」が機能しないことを実例をあげて説明しています。  

面白かったのが国際化のところ。  

問題です。
つぎの外資規制はどこの国のことでしょうか

① 海外からの輸入、海外への送金、外国企業による土地の購入、外国企業による国内企業の買収を制限し、外国企業の活動を原則禁止
② 外国資本の出資比率を50%以下に制限した上で、投資を認可する条件を「国家経済の自立とその健全な発展に寄与する」「国際収支の改善に寄与する」とする。
③ 許認可を前提に独資(外国企業100%出資の子会社の設立を認める)。ただし利益の海外送金は依然として禁止。  

ほとんどこれは今の中国の状態なのですが、実はこれは過去の日本の話です。
①は1949年「外国為替及び外国貿易管理法」、②1950年「外資に関する法律」、そして③は1961年の出来事です。
この後日本は④輸入の自由化・資本の自由化(1964年IMF8条国に指定、OECD加盟)⑤送金の自由化(1979年、1997年外為法改正)と続きますが、④のあとにも非関税障壁が残り、日米貿易摩擦の原因になったのは記憶に新しい(といっても30年前のことなので僕等の世代にとってですがw)ところです。  

著者は少子高齢化で国内市場は縮む一方なのでグローバルに展開する必要がある、という安易な「国際化戦略」を批判します。  

自らが新興国であったときは外国企業の「侵攻」を見事に阻止して自国企業を守り抜いた国が、次は外国に「侵攻」して成長を続けようと目論むのでは、いくら何でも身勝手に過ぎると思いませんか。そもそも、そこまで虫がいい目論見を新興国がすんなり許してくれるのでしょうか。海の向こうの「桃源郷」に甘い期待を寄せる前に、現実を見つめなおしてみませんか。

そして規制下の日本に進出して成功した外資企業の事例に基づき、業種により早期参入にメリットのある業種、後発参入のほうがよい業種、国内産業との競合があり難しい業種の違いがあること、自由化以前では政策にメリットがある企業でないと参入は難しいことなどについて語り、進出先の国のいるステージと自社の業種業態を冷静に判断することの重要性を指摘しています。  

たとえば中国と日本を自由化にむけて仮に同じ時間軸に乗せると、今の中国は日本が裁量行政だった1970年代の位置にいることになります。


こんな感じで巷間言われている「成長戦略」の陥穽をついているので、どこか腑に落ちないと感じていた方は共感する部分が多いと思います。

中盤ちょっと冗長な感もありますが、さらっと読めますし、鋭い指摘も多いので、「成長戦略」を熱く語る側の人にも『経営戦略を問いなおす』とあわせて一読をオススメします。





コメント
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