一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

元農水事務次官の告白

2011-11-08 | よしなしごと

日経ビジネスonlineの記事「農業の守り方を間違った」元農水次官の告白

共感できる部分もあり、できない部分もあり。
(以下抜粋の部分は若干前後します)


何しろ「原則関税撤廃」というのが大きな誤解だ。撤廃する品目もあるが、そこは正に交渉して決まる話だ。米国は米豪FTA(自由貿易協定)で砂糖などを関税撤廃の例外にしている。TPPでも米豪FTAの内容は変えないというのが米国の基本姿勢だ。若干は変えるところがあるとしても、基本は絶対に守るだろう。

日本がどうしてもコメを守りたいならば、早く交渉に入って、我々はコメ問題をこう考えると主張するべきだ。米韓FTAでコメを例外にした韓国が、もしTPPに入ってくれば、当然コメを例外にするよう主張する。日本が先に入り、WTO(世界貿易機関)のドーハラウンド(多角的通商交渉)でそうしたのと同じように、韓国と一緒にコメを守ればいい。  

情報がないのが問題なら、まず交渉に参加しろということだ。交渉に参加して情報を取り、日本の強み、弱みを踏まえて交渉する。協定の中に自分たちの考えを反映させるよう、一番国益に沿うものを勝ち取る。そして協定の形ができあがったら、批准するかしないかはまさに国会の役割だ。


このへんは共感できます。
交渉する前にどうこう言っても仕方ないし、交渉に入ったら負ける前提のところがそもそもまずいと思います。

ただ、今までの各国とのEPA・FTA協議でも農水省の人はNOの一点張りだったという話も聞いたことがあるので、実際にできるかどうかはちと心配。
一方で内容はともかく調印することが目的、という省庁の人もいるようで、TPPに参加するのなら国・官僚組織としての交渉力を磨く必要がありそうですし、交渉過程を(事後的にでも)きちんと示すべきだと思います。
さらに野田政権はG20で他国の関心がないのに消費税10%とか言うし、それを「国際公約」といかいうマスコミもいるのでなおさら心配です。


ただ、それ以外のところは今ひとつよくわかりません。  


農業で言えば、小沢さんがかつて言ったように、戸別所得補償を導入すれば日米FTAも乗り切れるはずだった。2009年のマニフェストにもそう書いてある。農村の振興と国際化は両立させる、というのはそういう意味だ。そういう政策目的をもっていたはずなのに、マニフェストと全く関係ないことをやってしまっているのは、政策目的なき、究極のバラマキと言わざるを得ない。


「戸別所得補償を導入すれば日米FTAも乗り切れる」というのは、戸別補償は「補助金」ではないから非関税障壁じゃない、というロジックでFTAに抵触しないだけで、日本農業の発展にプラスになるのでしょうか?
戸別補償は日米FTAとセットだというなら、なぜ小沢グループはTPPに反対しているのでしょうか。(このへん私の理解不足かもしれませんが)


私の原点となる主張は、農業経営は総合産業ということだ。経営資源は農地、人、技術であり、作物を加工し、付加価値をつけて販売、マーケティングする。そういう意味では製造業と何ら変わらない。今は「6次産業化」という言葉を使っているが、先進的な農業者は前からみんなそうしている。  

私はそういう経営体を「持続的農業経営体」と呼んでいる。すでに存在している経営体を点から面へと広げていく。既存の制度の壁を取り払うため、持続的農業経営体の総合支援法を作り、そこで農地の問題、新規参入も含めた人の問題、技術の問題を取り扱い、企画力や販売力を高めていく支援体制をどう作るか考える。  

今の農地制度を廃止するぐらいまでやればいい。それは経過措置を取ればいいし、持続的農業経営体支援法のなかに使いやすい簡単な農地制度として入れてもいい。今の農地法の特例法をその中に書くやり方もある。要するにやる気になればいろんなことができるはずだ。  


この「原点」っていつのことなんでしょう?
事務次官のときにやっていれば今更反省はしなかったはずだし、経歴を拝見すると事務次官を2001年に退官後は農林中金総合研究所理事長、農林漁業金融公庫総裁を歴任。2007年からNPO(特定非営利活動法人)日本プロ農業総合支援機構副理事長、とあり、少なくとも農林中金総合研究所理事長や農林漁業金融公庫総裁のときに主張されればもっと影響力があったのでは?  

事務次官経験者って退官後、天下りで十分利食ったあとにNPO法人の理事長とか大学教授とかになって宗旨替えする人が多いように思うのですが、「今までは間違っていた」と言われてもどうしても色眼鏡で見てしまいますね。

それに、この人は先進的な取り組みの人を例に挙げているだけで、結局自ら何か規制を突破したとか、少なくとも先進的な取り組みの人を支援したというわけでもないようです。

せっかく反省するのなら、現役のときにそういうことができなかった背景にある官僚組織や政治家の関わり方の問題点などを掘り下げて欲しかったと思います。


やはり人間は生身だから、保身もあるし、出世欲もあるし、いろんな思いがごちゃごちゃにある。そういう中で、政治というものがどっちを向くのか気になる人たちもいる。改革を始める時は、ほとんどがその改革を理解していないか、改革に反対か、改革に消極的だ。改革をする時、組織の中に信念を持った人間が1%いればいい、と私は言ってきた。

農業関係者は、とかく排除の論理に陥りやすい。農政のことは、俺たちだけしかわからない、俺たちが一番わかっているんだ、となると、内輪でしか通用しない用語ができてくる。そうした用語を理解しない人たちは全部わかってない連中ということになる。

コメント
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