一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

吾妻ひでお『アル中病棟 失踪日記2』

2014-03-05 | 乱読日記

このブログを始めた最初の頃に出た『失踪日記』 の続編で、漫画家の吾妻ひでおがアルコール依存症になり失踪、野外生活をしていた時代が描かれた全編に続き、本書では家族にアルコール依存症治療の専門病院に入院させられてから退院するまでの日々が描かれています。

『失踪日記』については
吾妻ひでお『失踪日記』(前編) または宮澤賢治「眼にて云ふ」
吾妻ひでお『失踪日記』(後編)
と、退院直後の日記風の 『うつうつひでお日記』 をご参照。

『失踪日記』から8年が経ってから、つまり退院してかなりの期間が経ってから上梓されたことに象徴されるように、本書は一つの作品として、病棟に入っている自分を含めた患者を漫画家としての視点から描いています。
(巻末の対談でとり・みきも触れていますが、退院したところで終わる本書の最後の大ゴマが象徴的です)

『失踪日記』と異なり、今回は依存症治療の病院が舞台なので、患者が沢山登場します。
そこでは皆アルコール依存症の患者が日常を送っているわけで、依存症が「いい」とか「悪い」 とかではなく「こういうものだ」、という風にリアルにかつコミカルに描かれます。
そしてそれをとりまく病院のしくみとか依存症の人をささえるボランティアの会(2つあってそれぞれ微妙な距離感らしい)の様子も、(多少)面白おかしく描かれます。

アルコール依存症は、何年後でも一度飲むと再発してしまうそうで、巻末のおまけでも酒の自販機と半日にらめっこしたエピソードが描かれていますが、 「中の人」だったころのことを作品として描けるようになるまでにここまでの時間がかかったということは頭の片隅に入れながらも、 ギャグ漫画家吾妻ひでおの復活を喜びながら、所々でクスッと笑いつつ読んでいただきたいと思います。



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