元経済産業省の官僚で、公務員制度改革にかかわり経済産業省を干されて退官し、今はマスコミなどで活躍中の古賀茂明氏の著書。
ちょっと遅まきながら、支援の気持ちもこめて2冊購入。
前者は現役官僚の(といっても「大臣官房付」においやられていた)時代、東日本大震災直後の昨年5月、後者は退官後昨年11月の発行です。
『日本中枢の崩壊』は古賀氏がかかわってきた公務員制度改革がどのように骨抜きにされてきたか、また民主党政権が官僚にどのように取り込まれてきたかを、具体的な手口を詳細に交えながら説明しています。
『官僚を国民のために働かせる法』は新書版ということもあり『崩壊』の中の「官僚の生態」、人事の仕組みや天下りのメカニズム、チェックが利かない公務員の待遇、組織防衛になぜインセンティブが働くかなどを中心に書かれています(1日で読めます)。
私も官僚に知り合いはいますが、この辺のところは当然ながらあまり語られない世界なので、「さもありなん」という部分に加え「そこまでやるか」と参考になる部分が多い本です。
特に古賀氏は審議官まで出世している人なので、記述にねたみやひがみを感じないところもいいです。
大事なのは、こういう本を読んで「官僚はけしからん」と憤るだけでなく、法律・政令や予算(一般会計・特別会計)の仕組みなどについて(政治家やマスコミはもちろん)自分たちも官僚の説明を鵜呑みにせずに自分たちでもきちんと読み解いて理解することで継続的に監視を続けることだと思います。
古賀氏だけでなく「埋蔵金男」高橋洋一氏など、官僚OBで官僚の手の内について批判的な人も増えてきています。
こういう人たちを、一時的に持ち上げたあげくに「消費」してしまうのでなく、ちゃんとした居場所を用意して継続的にこちら側の味方にすることが大事だと思います。
そういう人のポジションが確立してくれば、身過ぎ世過ぎでマスコミに出続ける必要もなくなるし、もっと名乗りを上げてくる人も出るでしょう。
そして中にはトンデモな人がいたとしてもいずれは淘汰されていくと思います。
余談ですが、『崩壊』で、古賀氏がOECDに派遣されたくだりで、同じ海外派遣ならJETROのほうがよかったと回想する部分が面白い。
たとえばJETROの出先の次長や大使館の書記官であれば、周りは全部日本人で、部下もいて、秘書もついていて、かなりのサポート体制があり、仕事もそれほど忙しくない。
古賀氏の上の2冊も使いまわし度が高いので、ちょっと心配だったのですが、万が一公務員制度改革がネタ切れになったとしても、次はODAのムダを追求できそうですね。
その状態が国民にとってハッピーかは別として。