褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 十二人の怒れる男(1957) 法廷映画の傑作

2025年01月23日 | 映画(さ行)
 ハリウッドには法廷を舞台にした映画はたくさんあるが、その中でも名作として燦燦と輝くのが今回紹介する映画十二人の怒れる男。ご存知の通りアメリカの裁判は陪審制。本作においては、国民の中からほぼ無作為で選ばれた12人の陪審員たちが、裁判で出された証拠品を基に全員一致の原理で有罪か無罪かを決定する仕組み。国民が有罪か無罪かを決めるとは、まさにザ・民主主義。当時の冷戦時代を考えれば、アメリカのプロパガンダ的な作品といえなくもないが、アメリカの底力を感じさせる映画になっている。

 殆どの時間が密室で繰り広げられるストーリーの紹介を。
 陪審室において12人の陪審員たちが集まる。その日は異常に暑い日だった。18歳の少年が父親殺しの疑いを掛けられており、あらゆる証拠からこの少年が父親を殺害したのは明白のように思われた。しかし、12人の中で1人だけ無罪に手を挙げたことから事態は意外な方向へ動き出し・・・

 一瞬で有罪になりそうなところを、陪審員の1人であるヘンリー・フォンダだけが無罪を主張する。他の11人から変人扱いされるかのように罵声を浴びたり、好奇な目で見られる。ヘンリー・フォンダが無罪を主張する理由がこうだ。『自分も無罪だとは言い切れない。しかし、1人の命がこんな簡単に決められて良いものか、どうか。議論しようではないか』。全員が有罪だと判断してしまうと、罪の重さから少年は死刑になってしまう。そこへ、ヘンリー・フォンダが一石を投じたわけだ。そして、今まで出された証拠を基に粘り強く、論理的に時には感情的になりながら、もう一度推理し直していくのだが、その過程が非常に興味が惹かれる展開になっている。
 そして、この12人がそれぞれ個性的なキャラクター設定になっている。さっさと終わらせて野球の試合を観に行きたがっている者、子供が嫌いな者、育った環境が悪いから人を殺してしまうんだなんて言い出す者、多数に流される者等。12人の主義や主張、そして偏見がぶつかり合っていく様子を見せられる。
 本作を見ると必ずしも多数が正解だとはわからないし、偏見が正しい見解の邪魔をすることの危険性を感じさせる。少数意見の大切さ、議論をすることの大切さが身に染みる。
 殆どのシーンが暑い密室で繰り広げられ重苦しさを感じる。それ故にラストシーンは爽快な気持ちで観終えることができる。しかし、ここで繰り広げられている推理が本当に正しいのかどうかわからない。よってこの少年は無罪なのかわからないし、本当は有罪なのかもしれない。とりあえずは1人の命が助かった。
 最近の日本においても紀州のドンファンの事件などで裁判について考えさせられることが多い。人間が人間を裁くことの難しさを痛感するし、民主主義国家の良さを少しぐらいは理解できる映画として今回は十二人の怒れる男をお勧めに挙げておこう

 監督はシドニー・ルメット。社会派監督らしい良心的な作品が多い。核戦争の恐怖を描いた未知への飛行、テレビ業界の狂乱を描いたネットワーク、ナチスのトラウマから解き放たれない男を描いた質屋、警察の腐敗と戦う男を描いたセルピコ、犯罪映画の狼たちの午後、ポール・ニューマン主演の本作と同じく法廷映画の評決、リバー・フェニックス主演の旅立ちの時、ショーン・コネリー主演の反戦映画である、監督の遺作にあたるその土曜日、7時58分などお勧め多数

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コメント (5)
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