静岡へ来たなら、気になっていた 「おでん横丁」へ行ってみないと。
いつか見たグラビアのキッチュな姿が記憶に残っている。
それにしてもどうよ、このにぎにぎしさ。 満艦飾のめでたさよ。
まるで時代劇の終幕近く、きれいどころが手に手に桜の枝を持って出てくる
花柳糸之社中の群舞のような華々しさ。
さすがにまだ明るい中、この中に入って行く気にはなれなんだ。
というわけで、日も落ちてから。
一見、ひと目を気にして入る悪所に見えるが、
ややこしい客引きなど一人もいない、「青葉おでん横丁」。
この桜の造花は、秋になればもみじになるんだよ。
ひと通りちら見して、あてずっぽうで入ったのが「なごや」。
静岡で名古屋とは、これいかに。
年配の女将さんが一人。 どことなく落ちつける。
店内は、よくある地方のスナックのようでもあり。
でも、決定的にちがうのは・・・
これだ!
ズズ~ン!!・・・・・・おでんの鍋がすえてあること。
まぁ、おでん横丁なのだから、当然っちゃあ当然。
塩辛なんぞをたのみ、焼酎なんぞ所望。
気のいいおばちゃんと世話話。
静岡市内にはいっぱい屋台があり、そいつが昭和39年、
東京五輪の開催に合わせ、廃止に追いやられた。
そこで屋台置き場だったこの場所で、軒並み固定の店にしたという。
当初から続く店は、なごやを含めてもう2軒ほどしかない。
しぞーか割り。 抹茶を立てて焼酎で割る。
こいつがなかなかごきげん。
珍しいところで「すじ」を。初めて東京で食った時にはカルチャーギャップだった。
大阪ではすじといえば牛スジ、こっちのはサメの軟骨がコチコチッと歯に当たる。
美味いかどうかというと、まぁ、趣きがある。
全国のおでんを網羅した労作、新井由己氏の「とことんおでん紀行」(凱風社 1999年)によると、
“ゆでかまぼこの一種で、西日本で好まれる「牛すじ」のような動物の筋肉部のことではない。
はんぺんの製造過程で除去された(サメの)皮・中落ち・軟骨・筋の多い肉を練りつぶし、混ぜ合せた後に
成形して茹でたもの。水戸辺りから出始め、西は浜松辺りまで出回っている。主に関東で消費される”
とある。東京の老舗おでん屋では、小判型で一見コロッケのようなスジだった。
そして、忘れずだし粉をしっかりふりかける。
たしかお母さん、だし粉は焼津から始まったと言ってたような。
言い方を変えるとですな、それほどだしの方にお金をかけかくとも、だし粉でうま味をカバーできるという
ことでもあるんぢゃなかろうか。馴れないとちょっと魚臭かったりする。
豚モツも行っとこう。
今回は行けなかったが、駄菓子系というのもある。
つまりは駄菓子屋で子供相手に商うようなものだった。するとおでんだし自体にお金をかけず、
だし粉や、甘辛い味噌をかけたりして食べさせるのも納得できる。
ふと思い出した。 赤塚不二夫作「おそ松くん」のチビ太とは静岡県人だったのではあるまいか。
常に串に刺さったのを持っている。三角(コンニャク)・丸(がんも)・四角(なると)の3種類。
なるとをおでん種にするなんて、関西では見たことがなかった。
…ナルトってのは、ご本人に聞いたので間違いない。
ところが、静岡にはちゃんとナルトのおでんがある!
しっかりと色がついて、赤いうず潮がよく見えないが。
これぐらいクタクタに煮て味が沁みると、ちょっと美味い。
「なごや」の屋号は、亡くなったご主人が、名古屋で洋食の修業をした方だから。
ふだんは静かに飲みたい方だが、狭い店だしね、隣り合ったひとに
喋りかけられては黙っているわけにもいかんし。
佐賀嬉野の観光大使のようなことをしてる御仁と、某薬品メーカーの営業マン。
まぁ何かの縁という奴である。
ほぉ・・・壁には石塚英彦、「まいう~」のいっしゃんも来た様子。
いたって色気はないけれど、また寄れる店ができて、ほっこり。
さぁて、とぼとぼと帰りましょうか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます