たこ焼きに対する、大阪人の偏愛ぶりは外から見るとおかしなもんだろう。どうみても露店のおやつである。百歩譲っても玩具菓子の如きものだ。だが、こういうものでも美味い不味いは厳然としてある。
浪花町界隈にはこういう景色が広がる。長屋があり、物干し台がある。
昔ながらの路地がまだある。だがひとたび火事などに見舞われたら、ひとたまりもない。
そのたこ焼き屋は、こんな街の中にある。
古色蒼然たる看板に対し、真新しい店舗。実は隣家が出した出火によって、類焼。去年から閉めていた。やっと復活、丸1年ぶりだ。
この一年、いろいろなことがあった。
一番大きな出来事は、鍋前に立っていた息子さんが亡くなったことだ。
いつもにこやかで控えめなお兄サンだったが、再建のストレスなどもあったのだろう、病巣が見つかってから、進行はやたら早かったそうだ。
店内は腰板をめぐらせた以外、昔とほとんど変わらぬレイアウト。鍋前の姿もほっとするほど同じ。メニューも一緒。ここで牛乳を飲み、あるいはサイダーを飲み、たこ焼き20個とかを昼食代わりに食べてゆく者もいる。
TVは大阪場所の中継。午後のたこ焼き屋にぴったりの長閑なる風景。保証牛乳というのがいい。
さっそく、12個を所望。そのままでだしが効いていて充分美味いが、
店で食べると、自由にソースも塗れる。ここのたこ焼きは強火で表面をカリカリに焼くこと。途中、油を足して、しっかり焼き目がつくまでひっくり返し続ける。
飾り気のない、実質本位な、無骨なたこ焼き。人気の店なのにフォロワーとする店は聞いたことがない。それだけ簡単そうに見えてマネのできるものではないのであろう。
たこ焼きの味が一番判る飲み物は水なのだが、あんまり愛想がないので、ビールを抜く。
二代目亡きあとは、今までも手伝っていた孫が本気で性根をくくったようで、今、じいちゃん、ばあちゃん、かあちゃん、孫の4人で変わらぬ姿で店頭で焼く。まずは安泰であることを喜びたい。
右手にちらりと見えるのは、大阪コナモン協会から贈られた真っ赤な暖簾。そこには親子三代の名前が染め抜かれている。
たかがたこ焼き。だけど、日々、高いレベルの品質を作り続けるという覚悟は並大抵ではない。こうしてプライドを持って、ゆるがせにしない仕事師がいるから、大阪のたこ焼き、隅におけないのだ。
柄にもないが、帰りに孫に「頑張ってね…」みたいなことを言ってしまった。
1年ぶりに来れたことを喜びながら、頬張ったアツアツのたこ焼きは、相変わらず美味いけど、ちょっと胸にジンとくる味がした。
天五中崎商店街 うまい屋
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知りませんでした。
お店を「復活」されて良かった。と心から歓び、食べに行こっ!と思って読んでいたら胸が熱くなってしまいました。
そうですか・・・・
なかなか面白い店が点在しています。
南光さんの店、円さんの店(双方バーです)もあり。
ミナミの餃子「南平」も出来てます。
麺にカレー粉を打ち込んだ店主肝煎りの「力餅食堂」だってある。「稲田酒店」も情緒ある立ち飲みです。
たこ焼き屋も多いですが、ぜひ食べに行ってあげてください。
最期に棺桶に入れてほしい好物と問われて、本気で迷ったことがあります。
やっぱりたこ焼きかな。
天王寺を経て通勤してた頃は、しょっちゅう「やまちゃん」に並んでました。
久しく食べてないな~。
表面カリカリ…そそられます。
天五中崎商店街、行ったことないけど、捜してみるか。
だけど、あのシュークリームみたいな皮一枚残し、中は灼熱地獄のトロトロ生地。毎回、口の中ベロベロになるけど、あれもまた旨いのだ。
前もって言うといてや、棺桶に入れるために手配するからさ。しかし…焼き場でいい匂いさせてどうすんだ!あ?