フルートおじさんの八ヶ岳日記

美しい雑木林の四季、人々との交流、いびつなフルートの音

前田りり子「フルートの肖像 その歴史的変遷」

2009-03-10 | 濫読

バロックフルート奏者前田りり子が、フルートと音楽の歴史を概括した本である。

序文で次のように述べている。「18世紀のフルートで、現代の巨大ホールいっぱいに無調性の現代音楽を響き渡らせることは不可能です。しかし、響きの良い、例えば貴族の館の一室でバッハやモーツァルトを演奏するならば、現代の楽器が失ってしまった素朴な優しさと気品を、昔のフルートが持っていたことに気がつくでしょう。」

フリードリッヒ大王のフルート教師を長年務めたクヴァンツが「フルート奏法(試論)」を著し、そこで悪い演奏のことを次のように言っている、と書かれている。これは、成る程と、よく分かった。

「悪い演奏とは音程が正しくなく、音が誇張される場合。不明瞭であいまいでわかりにくく、アーティキュレーションがつけられず、気が抜けて怠惰で、引きずるように眠たげで、粗野に無味乾燥に奏される場合。全ての音に区別なくスラーをつけるか、タンギングをする場合。速度が守られず、音符の長さが正しく取られていない場合。・・・・とにかくすべての感覚、感情を持たず、また自身感動することなしに演奏し、あたかも他人の代理で歌ったり奏したりしなくてはならないかのような感を持たせる、場合である。」

写真は、庭に咲いたヒアシンス