フルートおじさんの八ヶ岳日記

美しい雑木林の四季、人々との交流、いびつなフルートの音

スピルバーグ監督の「リンカーン」を観る

2013-04-25 | 日記

野暮用で大阪に帰ったついでに映画を見ようと、なんばパークスシネマの上映欄を見ると、
スピルバーグの「リンカーン」がまだ上映されていたので観に行くことにした。

娯楽作品ではないので、観客は少なかった。貧しい家庭に育ったリンカーンが独学で大統領になる、奴隷解放、南北戦争の終結、暗殺に倒れる、誰もが知っているリンカーンの生涯の何に焦点を当てようとしたのか、興味があった。

アメリカ映画なので、南北戦争で華々しく戦う場面などを想定していたが、ほとんどそんな場面はなかった。ストーリーは、アメリカ議会での憲法13条の修正(奴隷制の禁止)にかかわって、共和党と民主党の多数派工作を軸に進んでいく。それにしてもアメリカ議会は面白い。議員同士が激しく論戦するからである。エスプリの利いた皮肉や当意即妙のヤジ。

共和党が奴隷解放を主張し、民主党がそれに反対しているとは、現在とは全く反対と思える政治的スタンスである。合衆国憲法の修正手続きは、上下両院総数の3分の2の可決が必要だ。共和党=リンカーンは民主党の切り崩しを計る。落選議員の仕事先を保障するという、買収まがいの手段を使っているのにも驚いた。あれこれの議会工作の末、最終的に議会で憲法13条の修正案は通過する。

しかも憲法13条の修正が発効するためには、上下両院の3分の2可決の後、4分の3の州が批准しなければならないことになっていて、北部を中心に4分の3の州が批准することにより、ようやく奴隷制は禁止されることになった。

余談になるが、憲法を改正するということは、それだけ重みがあり、重大な国民的合意が必要なことなのである。「過半数を取って改正できるようにする」と騒いでいる、どこかの国とは大違いだ。

議会工作と同時に進んでいる南北戦争では、息子を戦争へ行かせたくないという、大統領の夫婦とは思えないリンカーン夫婦のやり取り、があった。リンカーンを演じたダニエル・デイ=ルイスの冷静でユーモアたっぷりな演技が良かった。この映画で3度目のアカデミー主演男優賞を得たというのも頷ける。

リンカーンの暗殺はどのように取り上げられるのかと思っていたら、銃で撃たれる暗殺場面が出てこなかったのが、不思議だった。

そのことに関わって、朝日新聞の天声人語でアメリカで「銃規制法案」が否決され、オバマ大統領が、「恥ずべき日だ」と言い、「明日に向かって撃て」で激しい銃撃戦を演じたロバートレッドフォードが、映画における銃の扱いに問題提起している、とあった。

スピルバーグ監督もそのことを意識して暗殺場面を映画で描かなかったのでは、と思った。

12時からの映画は、見終えると、既に午後の3時近くになっていた。お腹が減ってペコペコだったので、シネマのすぐ隣のイタリアンの店に駆け込んでランチを食べた。
店の中は、若い女性ばかりで、男性は私一人なのには驚いた。この店も、サラダ、パン、デザートはバイキングで食べ放題なのだから、人気があるのであろう。