日々のあれこれ

現在は仕事に関わること以外の日々の「あれこれ」を綴っております♪
ここ数年は 主に楽器演奏🎹🎻🎸と読書📚

おじいちゃんと お酒 (5)

2009-05-05 19:07:00 | Weblog

「みっちゃん、武夫さんってかなりお酒が好きみたいね」

ミツコの姉、長女は初顔合わせのとき、隣に座っていたミツコに耳打ちした。

 

「私、見たのよ! 武夫さんの杯が、傾いてお酒がこぼれそうになったときにね・・・。

『お~っとと!』 と言いながら、武夫さんの すぼめた口ったら、杯に吸い付かれるように・・・・・!」

 

ここまで話し、姉は笑いながらも、ちょっと心配そうにミツコを見た。

 

「まさか、大酒飲みってことは・・・ないとは思うけど。お酒好きってことは、間違いないわねえ」

 

ミツコは多少、不安になった。

というのも、ミツコたちの父。私にとっては、会った事もない「ひいじいちゃん」になるのだが、大酒飲みで、夜中でも小学生のミツコに酒を買いにやらせたらしい。

「一升瓶で買って来い!」

「はい」

昔は道という道は、あぜ道で、しかも雨が降ると、水たまりが出来る。

たとえ晴れていたとしても、小さな子供が一升瓶を抱えて帰るのは至難のわざだ。

ちょっと休憩、のつもりで力を抜くと、一升瓶の底が小石にたまたま当たった! なんてことに、なりかねない。

せっかく買ったお酒も、みるみる内に砂埃がする道に飲ませてしまう羽目になるのだった。

「絶対に、お酒飲みとは結婚しない!」

将来の夫選びにおいて、幼いミツコが天に誓ったことだった。

 

「姉さん。まさか、よっぱらったら理性もぶっとぶような人じゃ・・・ないわよね。たしなむ程度っていうのが、一番厄介だっていうけれど、武夫さんはたしなむこともないと聞いて、安心していたけれど・・・」

例え飲めても、好きでも飲まない人もいる。

選択として。

おばあちゃんの孫の私が、まさしくそういうタイプだ。

そしてー。

結婚後に分かったことだが、若い頃のおじいちゃんは、まさしくミツコが望んだ通りの夫だった。

「お酒は好きだが、子供達の養育が何より優先じゃ。お酒は飲まない」

ミツコと姉の心配は、取り越し苦労に終わったとな。^^

 

続く・・・

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北朝鮮での新婚生活

2009-05-05 16:07:35 | Weblog

結婚前は南朝鮮でミツコの姉一家と共に暮らしていたおばあちゃん。そこでの暮らしは郵便局でタイピストの仕事を持ち、甥っ子である私の父の世話をし、充実していたそうだ。十代から、結婚する23歳まで、5年以上の南朝鮮生活を送ったことになる。

しかし、結婚後は北朝鮮へ移住していたおじいちゃんと新婚生活を送るため、姉一家の家を後にした。親族とも日本にいる家族とも別れて見知らぬ土地へ向かうのは、このときが初めてだったという。もっとも、おじいちゃんは夫になったわけだから、その後、一番近い人となっていくわけだが、住み慣れた南朝鮮を離れるときの心境は、そうではなかったらしい。

姉夫婦、甥っ子達と別れを告げ、ミツコは武夫につれだって、北へ向かった。寒い。とにかく寒い土地だった。手足がしびれる、窓から顔を出すと、外の空気が肌を刺す、といった感触は生まれてはじめてのものだった。

いつものように洗濯をする。洗い終わった洗濯物を干したあと、ミツコはかじかむ指に息を吹きかけ、温めた。寒すぎる外とは うって違って、室内はオンドルがあり、床暖房効果で温かい。これは日本では見たこともないものだった。寒い国では、外は寒くても家の中は温かいと、確かに耳にしたことがある。こういうことか、とミツコも思った。

しかし、北朝鮮の寒さで驚いたのは、ほんの数時間後、干し終えた洗濯物を再び手にした瞬間だった。カチカチに凍り付いているのだ! これでは乾くどころではない。冷凍衣類になっている洗濯物に手を触れ、震え上がる。

これが、北朝鮮での暮らし・・・。

外へ出ると、キムチをつけていたタルで、洗濯物を洗う主婦を目にし、ミツコは口をあんぐりとあけた。

「食べ物を入れておいたタルで、洗濯するなんて!」

それだけではない。再び、そのタルではキムチが漬けられるのだと後日、知ったときは言葉もでなかった。

今、ミツコは南朝鮮よりも遥か遠くへ嫁いだのだと実感していた。

そう。

母国である日本から より遠くへ来てしまったのだと・・・・。

 

続く・・・

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする