昨年の夏は、ノモンハン事件、ソビエト連邦・ドイツ、2つの祖国に翻弄された人生を歩んだ個人の体験記等、第二次世界大戦前の世界の歴史について書かれた著書を読む機会が多かった。 ノモンハン事件に関しては、きっかけはNHK特集視聴。そこから関連図書を探すという流れがここ数年、続いている気がする。今年はガダルカナルについて特集があったが、出だしの部分だけ見て、いつの間にか寝入ってしまっていた。体力勝負の身体介護の仕事を終えた後、家事全般を一人でこなすので、どうしても睡魔が襲ってくる。 自分一人なら散らかす人がいないから楽だろうが、毎日一人で食事というのも味気ない。 ファミレス使用の鉄板焼きや、(ハンバーグ) 自分が提供したものよりもお値段が張る食材と比較されたり、(カキ)
まぁ、色々あれど、だからこそ低予算で美味しく、栄養バランスが取れた食事を考える糧となる!
恐ろしく話題が逸れてしまった…激しい食糧難に陥る、負けるとわかっている戦争へと突入していく祖国日本を想いながら、北海でイギリス艦隊に沈没させられたドイツ、ウラヌスで散っていった一人の日本人がいた。 彼の名は堀場大佐。日本が開発した秘密兵器を友好国ドイツに届ける任務を部下の望月と共に遂行中、 日本にとって当時はまだ中立国であったイギリスを相手にドイツ兵と共に戦い、命果てた…。
これって小説の形をとっているが、実話なのだろうか? 巻末には参考文献が1つもない。 全くのフィクションという可能性もある。 しかし、二人の日本兵が北海で任務遂行中の同じ時期、日本国内では海軍、陸軍、外務省…あらゆる場所でそれぞれの思惑が語られるが、そこに登場する人達の名前のいくつかは知っている。 開戦に踏み切った経緯も一般的に知られている通り…ということは、やはり実話?
ウラヌスが最初に遭遇する危機は、ドイツの敵国であったソ連に発見された時だった。この時、人種差別主義者であったハイケン艦長が表向きは来賓であった二人の日本人、とりわけ堀場大佐に対する心の変化が読み取れる。 この辺りも小説としての著書の読み応えある部分! 表情や態度に出さない、かすかに瞳の奥に読み取れる光というか…
実際の戦闘場面、爆撃で人が肉片となって船内に飛び散り、ぬるっと…その中を必死で任務に就くため走った…といったような描写に結構、きてしまったというか、 (読んでいた時間帯は少しは涼しくなった深夜であったにもかかわらず) 映像ではなく活字だけに想像力を超えて感じる部分があり、望月氏同様、自分も吐き気が…しかし、実際にどの戦艦でも起こった事実であろうから。
生き残った望月氏が病状で必死に語るという形で物語の幕が開き、そして閉じる。
ヒトラーにとっては外交も国際法もただの紙切れ。日本の猿が米国と開戦に踏み切れば、米国は艦隊を日本に差し向けざるを得なくなる。 ドイツは背後からの脅威を排除でき、対ソ連戦に専念できる。 日本は秘密兵器をドイツにプレゼントすることで、対米国戦にも参戦してほしいだろうが、 約束はいつだって反故に。 裏切ることも出来る…
そう考えていたヒトラーに 米国との宣戦布告を決意させた男がいた。 イギリスによる砲弾でウラヌスから爆風で海に投げ出され、その後救命ボートでドイツ兵に助け出され、ボロボロになりながらも車椅子でヒトラーと対面した望月氏の力強い言葉が…
「閣下が…そして、貴国が手に入れられるのは、九三式魚雷だけではありません」(401ページ4行目)
「自分達は…日本人は…堀場大佐のように…与えられた持ち場を、愚直に守り抜きます。ドイツ人は…アメリカとの戦争に…突入することによって…、誠実なる一億人の日本人を味方につけることが出来るので…あります」 (401ページ8行目~10行目から抜粋)
日本人を猿と馬鹿にしていたヒトラーも、この男なら信頼できる、と確信する。イギリス艦隊を爆破した九三式魚雷も。 更にいえば、ヒトラーがどういう男がよく熟知していたからこそ、実戦で使用し、その威力を開戦前に実際に見せつける必要がある、と先の先まで堀場大佐は読んでいたのではないか? と望月氏は後になって考える。
ノモンハン事件同様、もし、『ウラヌス』が開戦前の出来事として、世の中に知られていない実話(勿論すべてではないにしろ、小説という形をとっているので)だとしたら…?
開戦前のドイツ、ソ連、イギリス、そして日本を取り巻く事件として語り継がれるべきことだと思った。他に資料や著書がないか、調べてみなきゃ。