春花秋実(50㎝×35㎝)
私は今まで“鼬(コリンスキーも)”の毛の筆を使っていました。
毛が比較的固くバネがあり、筆先が纏まりやすいなど
運筆の操作が容易だからです。
先日のブログ(「佛心」 2020.6.15付)で書きましたが、
亡くなられた家内のお友達から御形見としていただいた
大筆(ともに穂長8㎝ほど)2本のうち1本が羊毛筆でした。
このときはじめて“羊毛筆”なるものを意識したといっても過言ではありません。
その方の書に見る通り、羊毛筆(多分こちらで書かれた)は上手く使いこなせば、
かすれや躍動感のある表現ができたり、伸びやかで柔らかい表現ができるようです。
これをご縁に、この羊毛筆にチャレンジしてみようと思いました。
ただ、いきなり御形見の大筆はムリで、
数年前、妹からもらっていた羊毛の中筆(穂長5㎝ほど)を
用いて書いたのが本作です。
この中筆、台湾の国立故宮博物院でのおみやげということで、
筆そのものの信頼は厚そうです。
でも見るからに難しそうで、今まで使用していませんでしたが、
まずはこちらから、と。
書き始めると、さすがに穂長が細長く、毛も柔らかく、
筆先は開いたままで纏まりにくかったり、
捻転した毛も中々戻らないなど、
その操作は容易ではないことを実感しました。
そんな中、youtubeなどで、羊毛筆で書く上でのポイントは何か、自分なりに探しました。
今回は、そのうちのただ一つのことに気をつけながら書きました。
それは、線を書く際、その線の終りや屈折部では、
筆を立てて筆先を揃えるようにすることです。
立てて揃える・・・すなわち小休止時に筆の態勢を、
出来るだけ元の状態に戻してやり、
そして、その次の線などに進むのです。
こうすることにより筆先のばらけや捻転を少なくできるようです。
このポイント、羊毛筆を学んで初めて知りましたが、
鼬毛などでも応用できそうです。
上の4字で、春、花、実は結構屈折個所が多く、練習には格好の字です。
“春花秋実”なる言葉、一般用語がどうかは分かりませんが、
かってある書家の方の個展を銀座で見たときの
“春華秋實”なる作品からヒントをいただきました。
(“華”の字はチョッと、・・・という次第であります)
それぞれの字体のお手本としては、
“春”“花”は高塚竹堂先生の書道三体字典、
“秋”は関戸本古今集、
“実”は松本芳翠先生の千字文(草書)
を参考にさせていただきました。
コメントを拝読し、相変わらずの飽くなき探求心に感心しますとともに、ど素人ながら成程と思うことがありました。
筆を立てると言うことは、一瞬筆の動きが止まり、筆先も伸びると思いました。即ち筆先が整う。
羊毛筆は、より厳密に手の裁きが要求されるようですから、全身全霊を込めて書面に表現する書道家の良い道具かも知れません。妹様に感謝ですね。
山羊の毛を100%使用した筆で 毛が柔らかく、粘りがあり、墨の含みが良いのが特徴、おだやかな味わいのある文字を書くことができるが非常に柔らかく、使いこなすには技術が必要とありました。
改めて見るこの作品、選ばれた文字もご自分で工夫された技術もなるほど、と納得です。