◆ スティーブはイメージじゃない !? やはり迫力の点では大田だが腰と両足に爆弾を持つ身で・・
田淵が引退して後釜に誰が座るのか?「四番打者は打線の顔。130試合出場に不安のない人じゃないといけませんね」と広岡監督が発言した事で後釜の最有力候補だった大田が脱落した。代わって浮上したのがスティーブ。昨季は129試合に出場して打率 .338 ・101打点と文句なしの成績を残した。しかし何故かスティーブでは四番の座にしっくりこないという声がチーム内部のみならず他球団からも聞こえてくる。本塁打20本では物足りず威圧感に欠けるというのがその理由。
「迫力?そりゃ大田さんの方がありますよ」とは他球団の投手たち。不敵なツラ構え、何をしでかすか分からない不気味さ。加えてあの長打力とくれば四番打者に相応しい。確かに広岡監督が指摘するように大田はここ2~3年は腰と足に爆弾を抱えており万全の体調で開幕を迎えていない。毎年のようにオーバーペースがたたり4月になると怪我をした。「本当ならオッサン(田淵)に代わって自分が先頭に立ってやりたかったけど今年こそ怪我をしたら駄目だと言い聞かせてペースを落とした。また怪我をしたら今度は野球生命を断たれる気がする」と昨年までとは一味違ったキャンプを送っている大田は苦しい胸の内を明かした。
大田が現役に拘るのは昨年のオフに練馬区大泉の東映撮影所近くの高台に新居を購入したからだ。高年俸の大田でもキャッシュで買った訳はなく、5年のローンを組んだ。庶民からすればとても短いローン返済期間だが、ひとたび怪我をして引退したらたちまち無収入になってしまう。出来るだけ長く現役で稼ぎたいのが本音である。その為に身体に負担のかからないようにスタンスの幅を狭くした新打法改造に取り組んでいる。紅白戦で四番に座った大田とスティーブだが結論は出ていない。そんな中、中村渉外担当が緊急渡米をした。表向きは大リーグキャンプの視察が理由だが、何をするか分からない西武だけに予想外の新助っ人が四番に座る事になるかもしれない。
◆ 昨シーズンと同じ轍は二度と踏まん。落合が徹底的にスローペース調整した事情とは
昨季のデータがある。ロッテのチーム打率2割7分5厘はリーグ1位。しかし得点は1位の阪急とは39点差の3位。阪急が1点を奪うのに要する安打が1.7本に対してロッテは1.9本を要した。更にチーム本塁打数はリーグ5位の149本でパワー不足も明らか。とにかく昨季のロッテはチャンスに決定打が少なく勝負弱さが目立ち、満塁本塁打は0本だった。ちなみに最多は近鉄の8本。主砲の落合は打率.314 ・33本塁打・94打点と数字上は四番の重責に応えたが勝負所で結果を出せなかった。何度か満塁の場面で打席に立ったが本塁打どころか無安打に終わった。特に前半戦のスランプは酷く、チャンスに三振、併殺を繰り返した。
昨季は暮れの契約更改でのゴタゴタが影響し下半身を充分に作らないままキャンプインして打撃フォームを崩してしまった。だから今年は「下半身が出来上がるまで打ち込みはしない(落合)」と決めて異常とも思えるスローペースで調整している。と同時に危険な練習も始めた。ホームベースの真後ろに立ち、自分に向かって来る球を打つという奇想天外な練習方法。もしバットに当てる事が出来なければ球は自分を直撃する。「バットの出を早くして球を充分に引きつけないとダメ。勿論、体が開くのは厳禁」と。昨季は3年連続で手にしていた首位打者のタイトルを明け渡しチームのスタートダッシュ失敗の張本人になっただけに落合は必死だ。
「昨年はチームに迷惑をかけたので今年はその借りも返さなくてはならない。家のローン(毎月140万円)もあるし、首位打者のタイトルを奪還して優勝しなくちゃ」と落合は静かに燃えている。稲尾監督も「ウチが優勝するか否かは落合のバットにかかっている。本人も今年は開幕から飛ばせるように色々と考えているようだ。『お前がどんなに不振になっても四番から外さない』と言ってある」と落合の今季にかける変身ぶりに期待している。主砲・落合のバットがロッテ悲願の優勝の鍵を握っている事だけは間違いない。
◆ 肩身の狭い投手陣が危険地帯と指摘する " 右ゾーン " は本当に大丈夫?
安芸キャンプ開始早々、投手陣が揃ってヒゲをたくわえ始めた。むっつり右門の野村や寡黙な山内らベテランをはじめ普段から紳士然として身だしなみには気をかけている山本和から若手の池田や中田まで、とにかく投手全員が鼻の下に無精ヒゲを伸ばし始めたのだ。末永マネージャーは「揃いも揃って見苦しい」と訝ったが実は投手陣のミーティングで「皆でヒゲを生やそう」と決めて実行したのである。弱体投手陣、エース不在、外人依存…と阪神投手陣は後ろ指を指されて久しい。「ウチらはあっちこっちで弱体と言われている。よ~し顔だけでも逞しく見えるようにしようじゃないか、と皆で話し合ってヒゲを生やすのを決めたんだ」と某ベテラン投手が明かした。
その投手陣ミーティングで話題となったのが " 右方向ゾーン " だ。「なあ皆、俺たち投手も確かにダメかもしれんがウチの守備陣、特にライト方向はお粗末じゃないか?」…。一塁・バース、二塁・岡田、右翼・真弓の右方向の守備力の事だ。バースの守備範囲は左右60cm 、足に爆弾を抱えている岡田の守備範囲も狭く一・二塁間に飛んだ打球を遠回りして処理する悪い癖は一向に直らない。加えて右翼は急造外野手の真弓とくれば「安心して右打者の外角を攻められない。打球が飛ぶ度に冷や汗が出る(某投手)」の声も頷ける。例えば右方向へ打たせまいと内角攻めが多くなる。しかし内角一辺倒とはいかず外角への誘い球も必要になりボールカウントを悪くする。これがかつての江夏や小山のように精密な制球力が有れば問題ないが、まだ未熟な池田や中田には自らを窮地に追い込む事となる。
スライダーが武器の野村や山内にはいよいよもって恐怖の右ゾーンな訳で吉田監督はOBの鎌田実氏を安芸に呼び岡田の守備力向上を図るなど苦心しているが往年の鎌田-吉田の華麗な二遊間の守備には程遠い。ならばせめて真弓の守備の負担を減らしセンターラインの強化の為に足も肩もある北村を中堅に起用したが練習中に右肩を脱臼する怪我を負い早くも構想が崩れてしまった。打球が右方向に飛ぶ度に投手もベンチも冷や汗が出るシーンが目に浮かぶ。「はい、ウチの大きな課題ですわ」と一枝コーチはハッキリと口にする。キャンプ、オープン戦の中でどこまで修正・向上させる事が出来るかが今季の阪神の命運を握っている。
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