やったぞ!4万8千人
何と後楽園球場に詰めかけた観衆は4万8千人。巨人戦ではない。日ハム悲願の「後楽園球場を満員に」というスローガンがとうとう達成された。4月10日の阪急戦だった。この日は「第3回・少年ファイターズの会」が大沢監督の出身地である神奈川県藤沢市片瀬の諏訪神社の神輿が試合前のグラウンド上を練り歩くなどの催しをして、スタンドはプレゼントされた日ハムの球団旗を手にしたチビッ子ファンでジャンボスタンドまでギッシリ大入りの大賑わいだった。「三塁側の席まで埋まったのは嬉しいですね」と営業担当者は大喜び。後楽園球場にパ・リーグの試合で4万8千人が詰めかけたのは史上初の快挙であった。
これまでの後楽園球場での最多は昭和48年の日拓 vs 太平洋クラブ戦の4万人。ちなみにパ・リーグ最多は昭和37年に神宮球場で行われた東映 vs 大毎戦の6万5千人だ。一般内野席に若干の空席があり満員とはいかなかったが、去年に続き観客動員パ・リーグ1位を狙うフロント陣は満足気だ。球場を訪れていた大社オーナーは「実際に観客が多いと球場全体の迫力が違うなぁ」と驚きを隠せない。対阪急戦はこの試合の前まで6連敗中で1勝6敗と劣勢だったがエース・高橋直投手が2失点完投の力投を見せチビッ子ファンを喜ばせた。
勇者にハムは喰わせん!
勝率5割まであと一歩の6勝8敗(4月20日現在)の成績の日ハム。強くも弱くもないがV3を狙う阪急に対しては4連勝中である。今季初対戦となった4月9日(後楽園)は山口投手に抑えられ負けたが2戦目は高橋直投手が好投、3戦目は佐伯投手・宮本投手のリレーで連勝した。「まぁ敵地だから仕方ないか」と敵将・上田監督を口惜しがらせたが、19日からの西京極シリーズも快勝した。勝つには勝ったものの阪急キラーにしては珍しく?4点も取られた高橋直だったが「阪急戦の勝ち方の秘策を知りたいって?いいですよ教えてあげますよ、(高橋直が苦手とする)南海戦の勝ち方を教えてくれたらね。ウフフ」と余裕たっぷり。
翌20日は宇田投手と江田投手の継投で勝利したのだから阪急の日ハムに対する苦手意識は相当なものだ。勝利投手になった江田は昭和48年7月28日のロッテ戦で勝利して以来のプロ2勝目だった。「こんなに嬉しいことはない。やっと報いられて…」とこみ上げる思いを抑え切れず男泣き。「カーブとスライダーで勝負しましたが、こんな良い投球が出来るなんて(江田)」と言っていたが、先発した宇田も変化球を低目に集めて5回を被安打2に抑えた。勝ち星こそ逃したが宇田は「僕は次にまた頑張ればいいさ」と江田の勝利を喜んだ。
この2人は高橋直と同じアンダースロー投手。2人にとって高橋直の " 阪急キラー " の投球が大いに参考になっているのは明らかだ。「とにかくよ、阪急戦になると皆が自信を持っているから、いくらリードを許しても負ける気がしねぇのさ」と大沢監督。だが一方で南海戦は相性が悪すぎる。今季は何と0勝4敗1分けと未だ勝てていない。高橋直が言うように南海戦の特効薬が見つかれば一気に上位進出も可能だ。「阪急は引きずり下ろしたから次は南海を叩く番だぜ」と大沢監督は " 混パ " の演出にやる気満々だ。
お待たせしましたの復活宣言
「開幕から1ヶ月以上も経ってからでは遅すぎるかもしれないけど、もう大丈夫です」と話すのは高橋一投手。開幕戦で高橋直投手がクラウンを抑えて勝利し、連勝を狙って登板した2戦目だったが基選手に満塁本塁打を浴びて敗れチームはその後ズルズルと連敗街道に突入してしまい、その責任を一人で被ったように落ち込んでいたのが高橋一だった。高橋一自身も二度目の登板となった南海戦で1点リードの場面で救援登板したが野村選手に同点ソロ、柏原選手に決勝2ランを浴びて敗戦投手に。「せっかくの勢いを消してしまって申し訳ない」と意気消沈。大沢監督に「アイツは大事な場面で使えねぇ」とまで言われる始末だった。
実は肩痛、腰痛を隠して投げていたのだ。「肩でも腰でも一方を痛めると片方をかばって負担が大きくなってしまう」とドクターストップがかかり戦線離脱。その後3週間の加療&軽いトレーニングを経て5月1日のロッテ戦にテスト登板したが、腰痛を再発し周囲を慌てさせたが大事には至らず一安心。9日の南海戦に先発し敗戦投手にはなったが2失点で完投し「あれだけ投げられたらもう大丈夫でしょう。ご心配をかけました(高橋一)」と明るい表情に。
高橋一の表情が明るくなったのはもう一つの心配事が解消されたからだ。開幕直後に娘の正美ちゃんが鼻血が止まらなくなり緊急入院をした。大量の輸血をするなど一時は命の危険な状態が続き、高橋一と奥さんは3日間ほど不眠不休の看病をした。肉体的にも精神的にも厳しい中で徐々に体調を崩すようになり野球どころの話ではなくなったのだ。正美ちゃんの容態もようやく安定して10日ほど経って退院することが出来た。「お陰様でもう大丈夫です。安心しました(高橋一)」という状態になってきて本人の投球内容も安定し始めたのだ。
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