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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 727 週間リポート・近鉄バファローズ

2022年02月16日 | 1977 年 



さすがエース言うことが違う
エース鈴木啓投手が開幕試合でロッテ打線を僅か3安打に抑えて完封一番乗りで勝利した。しかも無四球のオマケつき。去年まで開幕投手を2年連続で神部投手に譲っただけに喜びもひとしおだ。「開幕戦で勝つと負けるのでは大違い。その責任を感じながら1球1球丁寧に投げた(鈴木)」と。鈴木が開幕投手の栄誉に輝くのは実に9回目。開幕戦通算6勝は別所毅彦氏と並ぶ日本タイ記録だ。「ここ2年は開幕戦から外れていたが、これで僕が開幕戦に強いということがハッキリしたと思う。やっぱり投手として意地がありますからね」と久しぶりの開幕戦勝利に普段無口の鈴木が饒舌に。

対戦相手のロッテから見た鈴木は?「勢いづかせてしまった。ストレートが速かったよ(有藤選手)」「手も足も出ないという感じではなかったけど、上手に打ち取られてしまった。去年までとは少し配球が違っていた(山崎選手)」「スズキは日本で投げるピッチャーではない。大リーグで投げるべきだ。それにしても凄いピッチャーがいるもんだ(リー選手)」といった具合でロッテ打線はお手上げ状態だ。一方の近鉄首脳陣は手放しの喜びようだ。「あれほど安心して見ていられた試合は最近ではなかった。完璧だった(杉浦投手コーチ)」「言うことなし。やっぱり鈴木や(西本監督)」と100点満点の評価だ。

この開幕戦の勝利で鈴木は通算200勝まであと2勝に迫った。「200勝?僕はあまり記録にはこだわっていない。真面目に、一生懸命にやっていれば数字は自然と後からついて来るものだからね。200勝も目標ではなく、あくまでも通過点であって意識していない。そんな個人的な数字より阪急や南海を倒してウチが上位に浮上することだけを考えています」と自分の記録よりチームのことを考えているあたりは、さすがエースである。


たくましくなったねぇ
太田投手が4月10日のクラウン戦で今季初勝利を完封で飾った。被安打3・無四球という完璧な投球内容だった。この試合の始球式を終えてそのまま観戦していた佐伯オーナーは試合後に太田をつかまえて右手を差し出した。「僕の手は汚れていますけど…」と太田が言うのを遮り佐伯オーナーは太田の手を強く握り締めた。御年73歳の老人と25歳の若者。そこには時を越えた思いが詰まっていた。思い起こせば8年前、夏の甲子園大会で空前の人気者となった太田はその年の暮れに近鉄に入団した。入団発表の会場だった大阪・近鉄本社5階にある会議室に詰めかけた報道陣は320人。その入団発表の場で2人は固い握手を交わしたのだった。

佐伯オーナーは「8年前に会った太田君はひ弱そうで期待よりも心配の方が大きかった。しかし今は逞しくなったねぇ。完封はお見事でした」とその成長ぶりに目を細めた。太田にとっても嬉しい握手だった。「(四度目の)完封より、(二度目の)無四球の方が嬉しいですね」とこれまで四球を連発して自滅するケースが多かっただけに収穫は大きかった。4月5日の対阪急1回戦では井本投手をリリーフしたが終盤に突如制球を乱して四球を連発して無残な結果に終わっていた。「あの試合でだらしない投球をして監督の信頼を失くしていたので今日は気合が入りました」と肩の荷を下ろし、ホッとした表情の太田。

太田は過去7年のプロ生活で10勝以上をマークしたのは僅か二度で昭和49年の10勝(14敗)、昭和50年の12勝(12敗)のみである。そんな太田が目指す勝ち星は「15」。果たして可能な数字なのだろうか?在阪の評論家は「突如コントロールを乱して自滅する悪い癖を直して、完投できるスタミナをつければいけるだろ」と見ている。課題の制球力は今回の無四球試合で分かるように、徐々にだが改善されつつある。あとは佐伯オーナーが「逞しくなった」と感心していたスタミナに期待しよう。太田にとってこの完封勝利は何にも負けない財産になった筈なのだから。


もし新聞を拾わなかったら
テスト生で入団して苦労を重ねてきた佐藤文男投手が4月25日の対日ハム4回戦(後楽園)でプロ入り初勝利を飾った。先発した板東投手の後を継いで5回裏から登板し被安打5・無失点に抑えた。佐藤文と聞いても知らないファンも多いだろう。入団したのは昭和47年で初登板は4年後の昨年だった。しかも僅か1試合・1イニングのみだったので知らなくても当然だ。そんな佐藤文が今季は開幕から一軍入りを果たし開幕3試合目の阪急戦で今季初登板し、勝利した日ハム戦は四度目の登板だった。

さて冒頭で述べたように佐藤文はテスト入団だが広島・戸手商からプロ入りする動機が面白い。高校3年生の時に道端で拾ったスポーツ紙に近鉄の入団テストの記事が掲載されていたのを見て「テストを受けてみるか。もともと野球は好きだし腕試しだ」と思って応募し見事に合格した。もしもスポーツ紙を拾わなかったら今の佐藤文はなかった。「今まで頑張ってきて本当に良かった。これまで何度やめてしまおうかと考えたことか。でもその度に自分で決めた道だからと踏みとどまった。今日の勝利は一生忘れません」と佐藤文はプロ入り7年目の初勝利に目を潤ませた。

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