オレ笑う人、ボク泣く人
金城投手がツキ男ぶりを如何なく発揮している。といっても金城投手の勝ち星がやたらと増えているわけではない。不思議と金城投手が投げた試合は負けないケースが続いているのだ。4月3日に広島から移籍後初勝利を上げて以来、24日まで3週間ほど自身の勝ち星は無かったが、リリーフした投手が勝ち投手になった。金城投手が登板した試合の勝率は高くツキ男と呼ばれていることに「そう言われればそうですね。ボクが打たれてもチームは負けていない(金城)」と驚いている。これも巡り合わせだろうがナインからは「あいつが投げると負けない気がする」と言われ本人も悪い気はしない。
一時の山内投手がそうであった。投げれば勝つ、といった状態が続いた。投打の信頼関係が築かれ、投打共に気楽にプレーすることで凡ミスが減り勝利に結びつく好循環で勝ち続けた。同じような現状に金城投手は「今の状態がそうそう続くとは思えませんけどね。南海に移ったばかりだし、皆の援護が僕には一番嬉しいです」とニンマリ。広島での直近2年間での勝利数は3勝。今季はそれを遥かに上回り、昭和48年の10勝、同49年の20勝にいかに近づくかだ。「20勝はともかく10勝は早い時期に達成したい。その後は少しでも勝ち星を積み重ねてチームの優勝に貢献したい」と金城投手は意欲的だ。
逆に勝利の女神に見放されているのが藤田学投手。開幕当初は藤田投手も金城投手のように順調に勝ち星を稼いでいたが、5月の声を聞くやいなや勝てなくなった。一時はこのまま20勝するのではと思われていただけに突然の状況の変化に本人は勿論、首脳陣も首を傾げる。快進撃からくる反動や疲れ、相手チームの研究など原因は色々考えられるが、「ちょっと出来過ぎという感じもありましたね。5月はもう少し勝てていてもおかしくなかったけど…。神様に嫌われちゃったかな」と藤田投手はガックリ。
自分の誕生月である5月に勝てない妙な巡り合わせに藤田投手は首をひねる。4月は投げれば勝つ状態でしかも全て完投勝利だっただけに5月になると全く勝てなくなるとは本人が首をかしげたくなるのも無理のない話だ。しかしそこは若い青年の藤田投手、「しばらくすればツキも戻って来るでしょう。今は1試合、1登板を大事に丁寧に投げるだけです。そうすれば勝利の女神も僕に微笑んでくれるでしょう」と落ち込まず前を向いている。
藤田投手のようにツキに見放された投手が多い中で江夏投手ひとりが5月の勝率をグ~ンと良くしている。1完投を含めて2勝3セーブだ。「単なる巡り合わせやろ。自分じゃそれほど調子が良いとは思えんけどな。ただ真っすぐで空振りが取れるようになったのは確かやな(江夏)」と4月は鳴かず飛ばずだった江夏投手の浮上は今イチ調子が上がらない南海には心強い。佐藤投手が先発グループに回ったことでリリーフ役を江夏投手が担うことになり、「江夏がビシッと抑えてくれたらこれからのウチは上昇するで」と野村監督の期待は大きい。
みちのくで惨敗。東北はイヤ
「東北はツイとらん。ゲンが悪いよ」と地元の人が聞けば気を悪くするだろう言葉を野村監督が口にしたのも無理はない。今季は "お客さん " にしていた日ハムに3連敗。しかも3敗とも後味の悪い逆転負けとあって思わず東北地方に八つ当たりした野村監督であった。そもそも今回の八戸・青森の東北シリーズが始まる前から南海は東北地方では勝てないという印象はあった。ロッテの本拠地・仙台での勝率は他球場と比べて低く「ここはゲンが悪い」と思う選手は多い。日ハム戦の前が仙台でのロッテ戦だったが、結果は1勝2敗で負け越し。2敗が共に1点差負けと後味悪さを残したまま空路で青森の三沢空港に向かったが天候不良で仙台へ逆戻り。
仕方なく6時間の列車移動を余儀なくされた南海ナインはヘトヘトで、東北と聞いただけでウンザリするのも頷ける。挙句の果てが対日ハム3連敗で流石の野村監督もムッツリ顔に。更に不運というかツキの無さが重なった。ロッテ戦で藤原選手がイレギュラーバウンドした打球を顔面に受けて全治2ヶ月の重傷を負った。それで終わらず悪事は重なるもので藤原選手の代役で一番打者として気を吐いていたベテランの広瀬選手が次の日ハム戦で右足太もも肉離れで戦線離脱。「東北で強くなる方法はないやろか…どうも『北』は方角が悪くて困っとる」と縁起にこだわる野村監督はどうしようもないツキの無さを嘆くことしきり。
手負いの野村は怖い
既に伝説的になっている「手負いの野村は怖い」は生きていた。対阪急前期最終戦でそれは立証された。その前のロッテ戦、ホームベース上でのクロスプレーの際に左足首を白選手にスパイクされて5cmの裂傷を負った。病院で3針を縫う治療をされで全治10日の診断を受けた。チームドクターの診断も同じで2~3日の安静を言い渡されたのだが、3日後の阪急戦にはスタメンでマスクを被り逆転本塁打を放つ超人ぶりを見せつけた。手負いの野村は怖いと阪急だけでなく各チームの先乗りスコアラーに印象を植え付けた。なにしろこれまでも少々の怪我では休まず、むしろ普段以上に大暴れするのだから相手にとっては始末が悪い。
さすがにまだ抜糸していない足は痛むので試合後のノムさんは破顔一笑とはいかなかったが、勝利の味は格別だったようで上機嫌だった。「やはりホームランは力やないなぁ。タイミングや。俺のホームランは宝クジみたいなもんやで、滅多に当たらん」と軽いジョークが飛び出すほどだった。肝心の怪我については「やろうと思えば出来るんや。要するに気持ちの問題。今の連中はちょっと怪我をすると『ここが痛い、あそこが痛い』と言って大事を取りたがるけど昭和ヒトケタ生まれはそんな気にはなれんよ(野村)」と阪神の田淵選手が聞いたら耳の痛いことを言う。これが24年間プレーし続けてきた男の秘訣なのかもしれない。
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