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# 372 第65回・夏の甲子園大会

2015年04月29日 | 1983 年 



高校野球史上初の「夏・春・夏」の三連覇を目指した徳島・池田高に対し全出場校が打倒池田に燃えた1983年の夏だった。第1の挑戦者は群馬・太田工、左腕の好投手・青柳を擁し戦前の予想も意外と善戦するのでは、と見られていた。試合開始早々に太田工が先制点を取り「もしや」と思わせたが2回にあっさりと池田高が逆転すると終わってみれば16安打・8得点で圧勝。青柳投手は「江上と水野には打たれたくなかった…」と意識する余りリズムを崩してしまったようだ。ただ勝つには勝ったが初戦という事もあって池田高に硬さもありやや物足りない面も目立った。続く2回戦の高鍋高戦では試合前のシートノックから気合が入ってキビキビと動いていた。恐らく蔦監督に手綱を絞められたのだろう、初回からの先制攻撃で勝負あり。試合前に「胸元にシュートを投げて仰け反らせてカーブで勝負」と語っていた高鍋高のエース・清野投手だったが9回を除く毎回の20安打・12失点と当初の目論見は脆くも崩れた。

3回戦では史上初となる前年度の決勝戦カードの再現となった広島商戦。広島商・沖元投手は球を低目に集めて先ずは無難な立ち上がりだったが2回に水野に本塁打を喫したのを皮切りに4回に集中打を浴びた。水野と並ぶ主砲の江上は水野とは違ったタイプで水野が初球から積極的に打つのとは逆に狙い球を絞って打つタイプなのだが広島商の分析は充分ではなかった。打ち気のない江上に際どいコースを狙って制球を乱して歩かせ、打ち気にはやる水野や高橋といった後続に痛打を浴び大量得点を許してしまった。この試合の水野投手は出来は悪く高鍋高戦より球威は無くスライダーを多投して広島商打線を抑えていたがアクシデントが起きた。沖元投手が投じたシュートが水野の左側頭部を直撃し水野はその場に昏倒した。投げ終えてベンチに戻る度に氷で冷やし続けて奮闘する水野に打線も援護しベスト8一番乗りを果たした。ちなみにこの試合に勝って春・夏甲子園通算14連勝の大会記録をマークした。

準々決勝の相手は中京高。今大会で池田高を倒す最有力候補と呼び声が高くエース・野中投手は水野投手と遜色ない好投手と言われていた。投手力は互角、攻撃力は池田高が上だが守備力は中京高が優り横綱同士の対決が実現した。野中投手は期待通りの投球で池田打線を5回まで8安打・1失点と好投したが中京打線は水野投手に4回までに7三振と沈黙。中京ナインは「やっぱり水野は速い、凄い」と圧倒された。5万8千人の大観衆の異様な熱気に押されたのか両チームとも硬さが見えて試合巧者の池田高にもミスが出た。5回表無死から安打で出塁した井上が坂本の右中間二塁打で本塁突入するもタッチアウト。無死二・三塁にするのがセオリーだったが焦りが出た。これで流れが変わり5回裏に中京高が同点に追いついた。野中投手の投球が冴えて追いついた中京高が有利な筈だが池田高はここから底力を見せる。1対1で迎えた9回表「後半の野中君はカーブを多投していたがカーブを捨てて必ず投げて来る内角球を狙え」と指示していた蔦監督。その指示通りに吉田が3球続いたカーブを見送って次の直球を捉えて決勝点となる本塁打を放ち池田高が勝った。

最大の難敵を倒して三連覇まであと2勝となった準決勝戦の相手は1年生エース・桑田投手がいるPL学園。試合はPL学園の打線が爆発する。広島商戦での死球の影響が残っていたのか水野投手は本調子とは程遠かった。PL学園は2回に小島が安打で出塁すると続く桑田はカウント2-0と追い込まれながらも3球目のインハイの直球を強振すると打球は左翼席へ。水野投手が甲子園に来て初めて浴びた本塁打だった。PL学園の攻撃は続き住田も本塁打を放つ。水野投手は打ち込まれて大量失点を喫した。「2回に4点取られてもまだ大丈夫と気持ちを入れ替えたけど6点を追加されて緊張の糸が切れてしまった。PL学園は強かった」と主将の江上も潔く負けを認めた。一方のPL学園の桑田は「たとえ打たれても相手は3年生、当たり前だ」と開き直って小気味いい投球に終始した。伸びのある直球と縦に大きく割れるカーブで池田打線を翻弄し、昨年夏の徳島県予選大会から続いた連勝を「38」で止めた。強いチームも負ける、それも零封で。これもまた高校野球だ。

決勝戦に勝ち上がったのは今春のセンバツ大会でも決勝まで進んだ横浜商とPL学園。好勝負が期待されたがPL学園は加藤と清原の本塁打などで横浜商を寄せ付けなかった。特に桑田投手の力投が優勝の原動力となった。横浜商は桑田投手の立ち上がりを攻めて二盗、三盗塁と足で揺さぶったが1年生エースは動じなかった。過去に坂本(東邦高)や荒木(早実)など1年生の活躍はあったが桑田ほど堂々と決勝戦まで投げ抜いた例はなかった。完投する余裕はあったが最後は上級生に花を持たせる形で7回でマウンドを降りた。桑田と同じく1年生の清原も先制本塁打を放つなど活躍した。過去の優勝チームで1年生がこれほど躍動した例は記憶にない。今大会は池田高の史上初となる三連覇が話題となったが達成出来なかった。この記録を塗り替えるのは桑田や清原を擁するPL学園かもしれない。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
当時の思い出 (松尾沙樹)
2020-03-13 08:32:39
太田工業の先制も最高でした。
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No title (松尾沙樹)
2020-03-13 08:42:39
太田工業-池田戦もNHKTVで応援していました。
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当時の思い出 (松尾沙樹)
2020-03-13 09:04:01
所沢商業-PLと太田工業-池田もNHKTVで応援していました。
返信する

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