Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

#41 西武ライオンズ 誕生 ②

2009年06月24日 | 1978 年 
   …前回からの続き

西鉄黄金期は遠い昔の事で今やBクラスが定位置のお荷物球団を買収したのは、江川の交渉権が
あればこそでした。たった一人の選手がチームを一変させるという事を堤氏は以前に経験していました。
国土計画というアイスホッケーチームを保有していましたがチームは低迷していました。打開策として
堤氏は岩倉組に所属していた岩本選手を引き抜きました。岩本は当時 ホッケー界のスーパースターで
この引き抜きで岩本は出場停止処分を受け、国土計画も批判されましたがチームは強くなりました。

今回はその岩本役が江川なのです。だからこそ負債も含めて10億円という大金を叩いたのでした。
しかし江川の西武入りに待ったをかけたのが鈴木実行委員会議長でした。鈴木はセ・リーグ会長で
巨人べったりの人物でした。「江川のような大物選手の入団を球団売買の道具にすべきではない」
そして江川の交渉権放棄が西武への身売りの条件で、それを中村オーナーも約束したと漏らした。
一方の中村オーナーは「そんな約束をした覚えはありません」と言い切ったことで話はややこしく
なっていきます。そんな重要な事をなぜ書面ではなく口頭で済ませたのか、書面に残せない理由が
あったのか。

話を総合すると身売り発表の前日にコミッショナー・両リーグ会長・中村オーナー、そして何故か巨人の
正力オーナーも同席して江川の交渉権についての話し合いが持たれました。その話し合いの中で江川の
交渉権を放棄しない場合は球団譲渡と本拠地移転は認めないとの"口約束"が確認され中村オーナーも
「承知した」そうです。しかし堤氏には伏せられていたようでライオンズ買収の会見で記者から"口約束"に
ついて質問されても、逆に質問した記者に「それはどんな内容のモノですか? 後でよく聞かせて下さい。
ライオンズの所有する権利は当然すべて継承するものと承知しています」と敢然と言い放ちました。

堤氏が会見中 終始笑顔を見せなかった理由は、この"口約束"を知らされてなかったからでした。
球団売買の際に、ほんの数人の関係者間で裏工作が行なわれていた事に「もしこの"口約束"が
本当なら球界を監視・指導すべき立場の人間が特定球団寄りだという証明ではないか」と反発する
声も多く聞かれてパ・リーグ球団は一致して「西武は江川の交渉権を所有する」と認め、セ・リーグ
球団にも同調を求めました。世論も今回の"口約束"に批判的でコミッショナーらの目論見は崩れ
去りました。

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