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山本純一写真集『カムイの生命(いのち)鼓動する野生』=写真展は2022年4月7~12日、札幌

2022年04月12日 09時06分00秒 | つれづれ読書録
 前作の写真集「カムイの大地 北海道・新風景」出版とそれを記念した写真展の開催から3年。
 野生生物を主なモティーフにした写真集が北海道新聞社から出版されました(奥付は3月26日)。
 3千円プラス税。計101点のカラー写真を収録しています。

 前作と最も異なるのは「鼓動する野生」という副題からもうかがえるように、生命の循環に肉薄していること。
 母親にすがるコギツネなどの愛らしい姿だけではなく、新聞やテレビなどが回避しそうな死骸の写真もかなり含まれます。
 猛禽が血のにじんだ魚を脚でつかんで羽ばたいていたり、フクロウやキツネがえさをくわえていたり。
 表紙になっているヒグマの写真も、サケの腹が割けて赤いものがにじんで血しぶきが飛び散っています。
「きれいごと」ではない、といって必要以上に残酷な描写に走るわけでもない、自然のありのままの姿がきっちりとらえられているといえましょう。

 写真集には撮影機材はすべて記載されています(ほぼ全カットがキヤノンの一眼レフかミラーレスカメラで撮られています)が、絞りやシャッタースピードまでは書かれていません。
 ただ、この表紙を見ても分かりますが、500分の1以上の高速シャッターで切られているショットがかなり多いです。速いシャッターで、ピントもばっちりあっているのは、もちろん山本純一さんのプロとしての腕のなせる技でしょうが、一方でご本人も後書きにつづっている通り、デジタルカメラの進歩のゆえでもあるでしょう。
 フィルム時代の感度では絶対に無理なシャッタースピードで撮られた写真がかなりあります。

 個人的にいちばん驚いたのは、ハシボソミズナギドリの大群が海面をびっしりと埋めている1枚。
 撮影地が「羅臼町」とあるので、知床の海なのでしょうが、極地地方で撮ってきたような、圧巻のショットです。前後にはクジラの尾びれの豪快な写真もあり、知床の大自然が日本離れしているのがよくわかります。

 写真集にはキャプションはごく少ないのですが、写真展の会場には、サケが空を飛んでクマと目を合わせている不思議な1枚のヒミツが種明かしされています。


 会期中には北海道新聞社の道新プラザ「DOーBOX」で8、12日に「講演と映像上映会」があります。
 また、北大総合博物館で写真展「カムイの大地 生命の鼓動」が4月16日(土)~5月29日(日)午前10時~午後5時に開かれます(月曜休み)。こちらでも4月23日(土)と5月14日(土)午後1時半(開場1時)に講演会が催されます。


2022年4月7日(木)~12日(火)午前10時~午後6時(最終日~5時)
道新ぎゃらりー(札幌市中央区大通西3 北海道新聞社大通館7階)

□写真家 山本純一 http://yamamoto-photo.com/

過去の関連記事へのリンク
山本純一写真集「カムイの大地 北海道・新風景」出版記念写真展 (2019)

山本純一写真展 The sun also rises ~日はまた昇る~ (2017)

山本純一写真集「越冬」 (2013)
【告知】山本純一写真展 越冬-命の鼓動-(2013年3月7~18日札幌ほか)

Breath of Nature-自然の息吹- 山本純一写真展(2008年)
「越冬」山本純一写真展(2007)




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