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■春陽会道作家展 (2015年11月23~28日、札幌)

2015年11月28日 13時13分23秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 絵らしい絵が多いと思うのよ、春陽って―。
 大ベテラン会員だった生前の八木伸子さんは、そんなことをおっしゃっていた。

 八木さんをはじめ、谷口一芳、宮西詔路、崎山かづこの各会員が亡くなり、すっかり代替わりした春陽会の北海道研究会。20世紀からの唯一の会員である、オホーツク管内美幌町の安田完さんも、今年は出品していない。それでも、顔ぶれを変えつつ、今年も道内の作家による展覧会は開かれている。
 きっちりと毎年、支部展を開いているのは、おもな団体公募展では、自由美術と春陽ぐらいなもので、これは立派なことだと思う。
「大御所がいなくなってさびしい、と言われます」
と会友の豊嶋章子さんはこぼすが、道内の春陽についていえば、まだまだ健在だといえると思う。

 その豊嶋さん、「黄昏時」「夕べ」と題したF100号を2点出品している(冒頭画像)。
 かつてグレーを基調にびんのある室内空間を描いていた豊嶋さんは、淡い黄色に覆われた空間を、俯瞰気味の視点で描写している。
 いろいろなものを取り去っていき、引き算の末に、いかに少ない要素で画面が成立しうるか、という問題意識の存在が感じられる。そこでできた画面は、言いようのないあたたかみと親密さに満ちている。豊嶋さんは、少女趣味に流れたのではないかと懸念されていたようだが、各モティーフが小さいので、そこは気にならない。

 折登朱実さんの「shelter」にも注目した。
 折登さんといえば、モノトーンで、風景や室内の気配を、豊嶋さんよりも茫漠とした画面で追究してきた画家。それが、背景の青っぽい灰色は変わらないものの、中央に母子像のようなものがはっきりと浮かび上がっているのだ。
 ぼんやりした絵画空間に、現実世界との接点が出てきたということなのだろうか。
 一方、新出リエ子さんの作品は、かつてのヒマワリから、ますます抽象度を増して、エネルギーの純度を高めているように感じられる。

 佐藤愛子さんの作品は、さまざまな色をちりばめたにぎやかな絵と記憶していたが、今回の2作はいずれもモノトーン。すばやい線描が特徴となっている。

 小黒雅子さんは、幾何学的な色面分割による抽象画を制作しているが、今回の「景(1)」は、オイルチョークを用いているのだろうか、白のストロークがかなりの部分を覆い、画面に動感をもたらしている。

 河合春香さんの絵は、抽象的だが、赤い傘をさす二人連れのようにも見えてくる。


 出品作は次の通り。
 2013年に出品していた会友のうち荒川敬子さんと奥田順子さんの出品がなかった。

会員
折登朱実 shelter(F100)
新出リヱ子 開―感(F100)

会友
奥山哲三 ソラノネイロ(F130)
小黒雅子 景(1)(F100) 景(2)(S100)
落合輝美 大地の樹(望春) (F100)
小原敦美 林(F100)
川股正子 鳥来る日I(P100)鳥来る日II(P100)
川真田美智子 棲I(F100) 棲II(F100)
斎藤啓子 彷徨う風(S100)
佐藤愛子 戯れ(F100)静思(F100)
佐藤史奈 氷る海(F100)凍てる海(F100)
田中 緑 海辺にて(F100) 冬過ぎて春来たるらし(F80)
豊嶋章子 黄昏時(F100)夕べ(F100)
福島靖代 北の杜から7月の記憶(F100)
安田祐子 雨宿の日々(F130) 潮の薫りと紅い風(P100)
山形和子 市の女(F120)
山本周子 風をきく(F130)風をきく(F100)
米澤史子 想(F100) チベット風景(F100)

一般
金田隆喜 共に生きる(F50) 流木(F30)
河合春香 reflexion(S80)
鈴木いずみ 電気街へ行こう(F60) shibuya crossing(F60)
高橋清子 ロンド I(F100) ロンド II(F100)
守谷匡子 ヴァイオリンの夢(F100)

2015年11月23日(月)~28日(土)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)


□春陽会サイト http://www.shunyo-kai.or.jp/

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