北海道美術ネット別館

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中江紀洋「原田康子文学碑」ー釧路の野外彫刻(55) 2024年夏の旅(18)

2024年09月15日 13時42分00秒 | 街角と道端のアート
(承前。54はこちら)

 幣舞橋の南側の斜面に大きな時計がありますが、その上はぬさまい公園(幣舞公園)になっており、そこにある彫刻は紹介済みです。
 次のリンク先は、作者不詳の「花を持つ天使」など。

ぬさまい公園で(釧路の野外彫刻 47)。遠軽→北見→釧路。2021年10月9日は3カ所(7) - 北海道美術ネット別館

(承前)釧路の幣舞橋を渡り、出世坂を上ったところにあるぬさまい公園(幣舞公園)です。ここは、公園の中よりも、公園の斜面に設置された巨大な花時計のほうが有名だと思われ...

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 ほかに中野五一「松浦武四郎蝦夷地探検隊」と、中江紀洋「地殻交信機」については2008年に書いています。
 
 なぜこの文学碑は黙殺していたのでしょうか。
 おそらく「文学碑だから」という理由でしょうが、このカテゴリの記事で何度も言及している冊子『北海道の野外彫刻』や、サイト「北海道デジタル彫刻美術館」にも掲載はされていません。

 自然の石に文字を刻んである記念碑なら、このブログでは取り上げません。
 しかし、これはデザイン的な要素があります。つまり、天然の石ではない意匠のかたちによって作られています。

 しかも作者は北海道を代表する彫刻家のひとり、中江紀洋さんです。
 ここで取り上げない理由が見当たりません。
 
 原田康子(1928~2009)は釧路出身の小説家を代表する存在。
 東北海道新聞の記者をしながら地元の文学同人誌「北海文学」に書いた恋愛長篇小説『挽歌』が1956年に単行本化されて、大ベストセラーになり、映画化もされました。
 北海道新聞などに連載した『海霧』は2003年の女流文学賞を受賞しています。

 戦後の道内に住んで創作活動を続けた女性の小説家では、三浦綾子と原田康子は双璧といっていいでしょう。

 原田康子の名を一躍世に知らしめた「挽歌」の一節が、刻まれています。

高台から見降すと
下町には明りがともっていた。
しかし町の明りの果ては、
広い真暗な湿原地に呑みこまれているのだった。



 裏面には次のようにあります。

原田康子作『挽歌』は、昭和三十一年(一
九五六年)釧路の同人誌「北海文学」に発表、
のち東都書房から出版されて空前のベストセ
ラーになった。更に映画化されたことなどに
よって、全国に大きな反響を呼んだ。
『挽歌』が、釧路の社会文化の発展に与えた
□□の大きさは、計り知れないものがある。
□□の功績を讃え、同志相計り、多くの市民
の協力を得てここに文学碑を建立した。
  一九九八年九月一六日
    原田康子『挽歌』の碑建立期成会 


 □の部分は解読できませんでした。 

 サインも下の方に見えます。

 「Norihiro Nakae」と読めます。


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北の彫刻展2006
=以上、画像なし
中江紀洋展(2004年)




(この項続く) 


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