北海道美術ネット別館

アート、写真、書など展覧会の情報や紹介、批評、日記etc。毎日更新しています

最近の札幌(3) ギャラリー巡りの「中心部外し」について

2024年11月14日 10時29分25秒 | つれづれ日録
(承前)
 熱心な読者の方ならお気づきかもしれません。
 筆者にとってギャラリー巡りは生活の中心のひとつですが、その在り方が最近大きく変わってきています。
 手短にいえば
必ずしも札幌の中心部のギャラリーに足を運ばなくなった
ということです。

 実名を挙げるのもいささかしのびないのですが、
・さいとうギャラリー
・スカイホール
・三越ギャラリー
・ギャラリー大通美術館
・カフェビストロ+ギャラリー・オマージュ
・富士フイルムフォトサロン札幌
・らいらっく・ぎゃらりい
など、週替わりで展示替えをしている中心部のギャラリーは、とりあえず訪れるという習慣が30年近く前からあったと思います。

 しかし最近は、意図的に中心部外しをすることが増えました。
 これらの会場で、絵画教室展や趣味のサークル展を行われている間に、中心部以外(中島公園駅附近なども含む)のギャラリーでは気鋭の作家たちによる個展などが開催されています。
 かぎられた時間の中でどちらを優先すべきなのかは、いうまでもありません。
 結果として、上記の会場で何かしら開かれているときでも、伺うことなく終わるという場合が多くなっているのです。
 もちろん、ご案内をいただいている場合は別ですが。

 これまで中心部のギャラリーを訪れていたのは、勤務先に近く、仕事の合間などに行けたという現実的な事情もあったといえます。
 しかしいまは、地下鉄を大通駅でどうしても降りなくてはならない理由は見当たりません。


 筆者がギャラリー巡りを始めた1990年代は、全道展や道展、新道展の会員や、団体公募展には属さないものの意欲のある作り手たちが、毎年あるいは隔年で、中心部のギャラリーで個展を開くのがならわしになっており、彼ら・彼女らは自分が画家・作家であるという自覚をもって自作を世に問うていました。
 その代表的な会場として、さいとうギャラリーやスカイホールのほかに
・札幌時計台ギャラリー
・ギャラリーたぴお
・ギャラリーユリイカ
・大同ギャラリー
・アートスペース201
などがありました。
 いま列挙した五つのギャラリーはいずれもなくなっています。
 世代交代に伴い、いまなお毎年(あるいは隔年、2年おきに)個展を打つ画家はほんのひと握りに減りました。
 
 道立近代美術館は道内の美術家たちを選抜した企画展を毎年のように開いていましたが、21世紀に入ってからその種の機会は激減しました。また、新聞などに展覧会評を書く評論家もめっきり姿を見なくなりました。
 渾身の成果を披露しても、それにこたえてくれる人や機関がなくなってしまったわけです。作り手のモチベーションが下がったのだとしたら、それも当然のことといえましょう。
 もちろん、個展を開く習慣がなくなったのは、ほかにもインターネットの普及、搬入搬出に時間がかかるインスタレーションの増加など、さまざまな複合的要因があると考えられます。
 
 1990年代以降のこの傾向は、東京で銀座の貸し画廊が減って、それ以外の地区にギャラリーが分散するようになった減少と軌を一にしているといえそうです。
 
 筆者は、現在も中心部のギャラリーを巡ることを習慣にしている美術ファンたちのことを批判するつもりはまったくありません。人が何を見ようと自由です。ただ、せっかくアートを見ることが好きなんだったら、もったいないと思います。
 ただ、漫然と(と、あえて言いますが)展示を見て回る時間も体力も自分にはありません、と言いたいだけなのです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。