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■丸山恭子彫刻展 (2022年11月29日~12月4日、札幌)

2022年12月07日 09時55分04秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
 丸山恭子さん(道展会員、札幌)は、写実から少し離れた裸婦像を作ってきた彫刻家です。

 会場でいちばん古い「ははは」(2018)には、次のような説明が付してありました(ルビは筆者がつけました)。

どうしても手放したくないもの
どんなに脅されようと、命に代えても守りたいもの
母性という言葉には、握りしめたその指先の
毛細血管までたぎる血潮の熱さがこもっている
だが現実の社会では 人肌の温もりを失った
凍りつくような出来事が後を絶たない


 このテキストは、作者の思いがこめられていて、なかなか読ませるのですが、続いて次のようにあるのにはいささか驚きました。

<自分語りはもういいや
 ふと、裸婦に語らせることは終わりにしようと思いました。>

 えっ?
 良いアートって、作者の感情がこめられているものではないの?

 もちろん、幾何学的な抽象画など「美のための美」を追究した作品、あるいは、現実の社会問題にコミットした作品にも、意義はあります。
 でも、たとえばゴッホやロダン、ムンクなどの絵や彫刻が、見る人の胸を打つとすれば、それはとりもなおさず、作品から伝わってくる作者の気持ちゆえなのは、言うまでもありません。

 ただ…。
 「作者の気持ちを裸婦に託す」
というのも、彫刻業界の約束事なんですよね。
 それはそれで、窮屈な側面が強い。
 人間の裸って、一見とても普遍的なもののようであって、実は日常生活では一般的なシチュエーションで見られるものではないですし。

 それ以降の作品は、いずれも着衣の女性像です。
 しかも、上体をひねった女性像「そもそも」「もそもそ」「そのさき」など、形態の妙に、重点が置かれているように見受けられます。

 また、素材的には、従来の石膏せっこうやFRPから、きついにおいのない新たな樹脂が用いられています。
 「雨の声」は、ドレスの下半分が水色に着彩されています。 
 
 
 次の画像は、手前が「羽」、奥が「地の声」。

 「地の声」には、新型コロナウイルスの収束を願う気持ちもあるそうです。

 最後の画像は「地の声」を正面から見たもの。

 このほか、会場には、テラコッタの作品がたくさん並んでいました。

 2015年の小品展でも、軽みを感じさせる裸婦を出品していた丸山恭子さん。

 重たい気持ちを解き放って、形態と感覚の世界にあそぶ、というのも、彫刻のひとつの在り方なんだろうと思います。

 丸山さんにとっては、それはそれで、新しいステージなんだろうなと、感じました。

 具象彫刻いかにあるべきか、といった、しかめつらしい問いから解放された道がそこにあるのかもしれません。



2022年11月29日(火)~12月4日(日)午前10時半~午後6時半(最終日~5時)
さいとうギャラリー(札幌市中央区南1西3 ラ・ガレリア5階)

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さっぽろ雪像彫刻展 (2019)

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第39回北海道教職員美術展 (2009、以下画像なし)

第5回ノルテの作家展 (2007)

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