
道立三岸光太郎美術館にはもう40~50回は足を運んでいて、さすがに、一度は見たことのある作品がほとんどなのだが、それでも、初めて見る作品があって、そういうのに出合うとなんだかうれしい気持ちになる。
単に、忘れてしまっているだけなのかもしれないが。
今回は「コンポジション」という後期の抽象画を冒頭に置き、マチエールがでこぼこだったり、山あり谷ありの三岸の人生行路をうかがわせるような作品だったりを並べていたのだが、初めて接する(と思われる)絵が多くてなかなか新鮮な展覧会だった。
といいつつ、こちらは出世作として知られる「檸檬持てる少女」。
1923年(大正12年)、当時の洋画壇で新興勢力だった春陽会展で、厳選を勝ち抜いて入選したことで知られる。
ちなみに「持てる」というのは文語であり、「持つことができる」という意味ではない。
この絵を好きな某出版社の編集者がテレビ雑誌の表紙で芸能人にレモンを持たせて登場させることを思いついたという挿話は有名である(←もちろん冗談なので、本気にしないでください)。
右側は「風景」。
モノタイプ版画とのことで、初めて見たと思う。
三岸の版画というだけで、かなりの珍品。
そのとなりの「崖ノ風景」は、我孫子附近の写生。
岸田劉生の影響を感じさせると同時に、たしかこのあたりにはバーナード・リーチや柳宗悦といった「白樺」人脈の文人・芸術家が集まって住んでいたんじゃなかったっけ?
このあたりに木村荘八から三岸への書簡が展示してあって、新人への先輩の親心の諸相をうかがわせて興味深かった。
右は「風景」。
ビリジヤン多めな絵。これではいったいどこなのか、よくわからない。
小さな立体2点は1932~33年ごろ、帰省した際に陶磁でこしらえたらしい「男の首」「女の首」。これも珍品といっていいのではないか。
まあ、いろんなことに手を出す人だなあと感服するが、20代の若者らしい好奇心といえるのかもしれない。
次の絵、左側の「裸の男」も、これまで見た記憶がない。
大作「男二人」のエスキスではないかと思われる。
会場の解説パネルにあったとおり、同時代のフランスを代表する画家のひとり、ルオーの影響が明らかだ。
人物の輪郭線が黒々と太い。
その右となりは「大通公園(北海道風景)」。
これは、北大で初めて公開されたと記憶しているが、図録には「筑波大学蔵」となっている。
そして、どうも大通公園の風景っぽくない。
山々の形状は北大キャンパスから望んだ手稲山連峰ではないかという説もあるという。
右は「金華山風景」。
以前にも見たかもしれないが、この「金華山」というのが宮城県の島ではなく、岐阜の名所だということを知ったのは、間違いなく初めて。
節子の実家の近くということだ。
その左側は「大通公園」で、この絵はよく展示されている代表作のひとつ。
さっぽろテレビ塔ができるまではこのあたりのランドマークだった消防の望楼が描かれている。
美術館の公式サイトには次のようにありました。
2022年12月17日(土)~23年4月18日(火)午前9時30分~午後5時(入場は午後4時30分まで)
月曜日(1月9日は開館し翌10日休み)、12月29日~1月3日、3月31日~4月6日休み
mima 道立三岸好太郎美術館(札幌市中央区北2西15)
・地下鉄東西線「西18丁目駅」4番出口から約670メートル、徒歩9分
・中央バス、ジェイ・アール北海道バス「道立近代美術館」から約450メートル、徒歩6分
(小樽、岩内方面行きの都市間高速バス、ていねライナーなどの快速を含む全ての系統=北大経由は除く=が止まります)
・市電「西15丁目」から約730メートル、徒歩10分
・ジェイ・アール北海道バス「桑8 桑園円山線 桑園駅―円山公園駅―啓明ターミナル」で「北3条西15丁目」降車、約160メートル、徒歩2分
・ジェイ・アール北海道バス「54 北5条線 札幌駅前―西28丁目駅」「58 北5条線 札幌駅前―琴似営業所」で「北5条西17丁目」降車、約490メートル、徒歩7分
・ジェイ・アール北海道バス「51 啓明線 札幌駅前―医大病院前―啓明ターミナル」で「大通西14丁目」降車、約630メートル、徒歩8分
単に、忘れてしまっているだけなのかもしれないが。
今回は「コンポジション」という後期の抽象画を冒頭に置き、マチエールがでこぼこだったり、山あり谷ありの三岸の人生行路をうかがわせるような作品だったりを並べていたのだが、初めて接する(と思われる)絵が多くてなかなか新鮮な展覧会だった。

1923年(大正12年)、当時の洋画壇で新興勢力だった春陽会展で、厳選を勝ち抜いて入選したことで知られる。
ちなみに「持てる」というのは文語であり、「持つことができる」という意味ではない。
この絵を好きな某出版社の編集者がテレビ雑誌の表紙で芸能人にレモンを持たせて登場させることを思いついたという挿話は有名である(←もちろん冗談なので、本気にしないでください)。

モノタイプ版画とのことで、初めて見たと思う。
三岸の版画というだけで、かなりの珍品。
そのとなりの「崖ノ風景」は、我孫子附近の写生。
岸田劉生の影響を感じさせると同時に、たしかこのあたりにはバーナード・リーチや柳宗悦といった「白樺」人脈の文人・芸術家が集まって住んでいたんじゃなかったっけ?
このあたりに木村荘八から三岸への書簡が展示してあって、新人への先輩の親心の諸相をうかがわせて興味深かった。

ビリジヤン多めな絵。これではいったいどこなのか、よくわからない。

まあ、いろんなことに手を出す人だなあと感服するが、20代の若者らしい好奇心といえるのかもしれない。

大作「男二人」のエスキスではないかと思われる。
会場の解説パネルにあったとおり、同時代のフランスを代表する画家のひとり、ルオーの影響が明らかだ。
人物の輪郭線が黒々と太い。
その右となりは「大通公園(北海道風景)」。
これは、北大で初めて公開されたと記憶しているが、図録には「筑波大学蔵」となっている。
そして、どうも大通公園の風景っぽくない。
山々の形状は北大キャンパスから望んだ手稲山連峰ではないかという説もあるという。

右は「金華山風景」。
以前にも見たかもしれないが、この「金華山」というのが宮城県の島ではなく、岐阜の名所だということを知ったのは、間違いなく初めて。
節子の実家の近くということだ。
その左側は「大通公園」で、この絵はよく展示されている代表作のひとつ。
さっぽろテレビ塔ができるまではこのあたりのランドマークだった消防の望楼が描かれている。
美術館の公式サイトには次のようにありました。
画家・三岸好太郎(1903-1934)の造形は、多様に変転しつつ、繊細な詩情と斬新な着想で魅力を放ちます。
幾重にも塗り重ねた色彩の深み、厚塗りの画面の盛り上がりや凹凸、なめらかな部分とザラザラする質感の対比、さらに絵の具を引っかいて線を刻む手法、紙や印刷物を貼り付けたコラージュ等々、前衛的な実験にも挑みつづけました。
そして31年という夭折の生涯も、高揚、前進、熱中、陶酔の一方で、苦悩や不安、混迷なども含んだ、高低・明暗、山あり谷ありの連続であったともいえるでしょう。
本展では、三岸の画業と造形にそうした起伏や凸凹(デコボコ)を見ながら、さまざまな作品・作風の展開のなかで、新しい表現を求め続けた彼の実験精神に注目します。
2022年12月17日(土)~23年4月18日(火)午前9時30分~午後5時(入場は午後4時30分まで)
月曜日(1月9日は開館し翌10日休み)、12月29日~1月3日、3月31日~4月6日休み
mima 道立三岸好太郎美術館(札幌市中央区北2西15)
・地下鉄東西線「西18丁目駅」4番出口から約670メートル、徒歩9分
・中央バス、ジェイ・アール北海道バス「道立近代美術館」から約450メートル、徒歩6分
(小樽、岩内方面行きの都市間高速バス、ていねライナーなどの快速を含む全ての系統=北大経由は除く=が止まります)
・市電「西15丁目」から約730メートル、徒歩10分
・ジェイ・アール北海道バス「桑8 桑園円山線 桑園駅―円山公園駅―啓明ターミナル」で「北3条西15丁目」降車、約160メートル、徒歩2分
・ジェイ・アール北海道バス「54 北5条線 札幌駅前―西28丁目駅」「58 北5条線 札幌駅前―琴似営業所」で「北5条西17丁目」降車、約490メートル、徒歩7分
・ジェイ・アール北海道バス「51 啓明線 札幌駅前―医大病院前―啓明ターミナル」で「大通西14丁目」降車、約630メートル、徒歩8分