札幌の中舘侑子さんは、英国に何度も通って水彩画を学んだ。
にじみを生かし、写実的でありながら適度に省筆を効かせた画風で、人が水彩画といって思い出すときまず念頭に浮かぶであろう、いかにも透明水彩らしい風景画や花の絵を描く。いわば水彩画の王道だ。
今回は50点以上を並べている。
半数以上がイングランドやスコットランドに材を得た風景画で、庭や牧場などが描かれていると
「ああ、Engiish garden という言葉があったよなあ」
と、行ったこともないのに、かの地がなんだか懐かしくなる。
「夕刻のWest Dean Garden」など、まさにそういう懐かしい広がりをたたえた風景である。
水をたっぷりと含ませて表現したにじみは「技法のための技法」ではない。「風立ちぬ」など、大気の湿り気と、移ろいやすい気象を描くために、絵の具がにじんでいるのだと思う。
「希望」は、水平線と空を題材にしているのだろうが、奔放な色使いが、もはや抽象に近い域に達している。
残りは、フランスを描いた絵もあるが、ほとんどは札幌を中心とした道内の風景である。
とくに北大の第二農場は、連作のように何度も取り上げており、雪の農場から盛夏まで、四季折々の情景が楽しめる。
真駒内のエドゥイン・ダン記念館や、道庁赤れんが庁舎などもあるが、いわゆる「名所集」という感じはなく、それぞれの現場で得た空気感が伝わってくる。
会場中央には、旅の印象などを、じゃばら状の紙に描いたものなどが展示されていた。
中舘さんによると、このじゃばらの紙は、今は売られていないらしい。水彩で描いても、裏にうつったりしない、すぐれものであったらしい。
2015年10月22日(木)~2015年10月27日(火)午前10時~午後7時(最終日~午後5時)
道新ぎゃらりー(札幌市中央区大通西3 北海道新聞社本社「道新プラザ」)
□北海道イラストレーターズクラブαのページ http://illustrators.us/yuko_nakadate/
■中舘侑子水彩画展(2002、画像なし)