人間歳とってくると感性が鈍くなってくる。
滅多なことでは感動しなくなってくる。
そのめったなことが最近あった。
缶詰で感動したのであった。
ある缶詰のフタを開けてその中を見たとたん、ハラハラと涙がこぼれ落ちた。
センチメンタルなどと責めないでください。
実につまらぬことが悲しかったのである。
それはオイルサーディンの缶詰であった
小さな鰯たちが12匹、全員頭のない身体で、横一列に整然と並んでいるのが可愛そうでならなかったのだ。
いい歳こいてそんなつまらぬことに涙するなんて、それは感動の涙ではなくて、ただ歳をとって涙腺が緩んだだけのことじゃないか。
と責める方々もいらっしゃると思う。
だがオイルサーディンの鰯たちは、肌がピカピカして輝いていて、いかにも跳ねそうに見える。
跳ねそうに見えるのだが、悲しいかな彼らには頭がない。
24の瞳はどこへ捨てられたのか
オイルサーディンの缶詰を持った手が、悲しみでワナワナと震えてタブタブの油がこぼれそうになるのであった。
それにしてもオイルサーディンの小魚たちは、なぜあのように整然と並べられるのだろうか。
他の魚の缶詰、サンマにしても鯖にしても鰯の味付け缶にしても、ただ突っ込んであるだけだ。
オイルサーディンの缶詰めは、あれは多分手作業ですよね。
手作業で一匹一匹横一列に並べていく。
整然と横一列に並んでいるのを、きちんきちんと端から一匹づつ食べていく。
ということで、缶から何かにあけて食べてはいけないのである。
近頃サバ缶が大ブームで、サバ缶がツナ缶を上回る売り上げになっていると聞く。
サバの浜値も上昇し、サバ缶も値上げせざるを得ないということだ。
イワシもサバたち同様青物魚の代表なので、このあと大ブームになる。
とアタクシは予言するのであった。