庭の薔薇がいくつか咲き始めた。8年前に通信販売で買った20本ほどの苗が幸いにもほとんど生き残り、毎年花と香りを楽しませてくれる。できる範囲で手入れをしているが、やはり年によっては害虫に花を傷つけられたり、葉が黒ずむような病気にかかったりする。今のところ今年は順調なようだ。今咲き始めた薔薇はもちろんどこかで開発された園芸種ばかり。
一方で、世界中に150~200種類の薔薇の原種があるといわれているが、そのすべては北半球にある。ヨーロッパ、アメリカ大陸、中国そして日本にも原種はあり、これら原種の薔薇を交配することで、園芸品種は作られている。現在の薔薇の園芸品種は3万種以上といわれ、原種の薔薇は、これらすべての園芸品種の親となったもの。
原種の薔薇は、ほとんどが春だけの一季咲きで、園芸品種に比べれば姿かたちに華やかさに欠けるところはあるが、人間の手の入っていないその清楚、素朴な姿が好まれて庭のみならず公園、道路のそばなどに植えられることもある。また、もともと自然に自生している薔薇なので、病虫害に強く、どれも育てやすい。
北海道であれば、海岸の砂浜でも見られるのが「ハマナス」。薔薇の原種の一つである「ハマナス」はロサ・ルゴサ(Rosa rugosa)、「ルゴサ」は、「しわの多い」の意味で、葉脈がくぼむ葉の形状から名づけられ、英語名でジャパニーズローズ(Japanese Rose)と呼ばれる。茎にはやわらかいとげが密生してあたかも鎧でも纏っているようだ。ちなみにハマナスは雅子皇后のお印である。
数年前、実家の墓参りをしたときに、敷地の中に自生していたハマナスを墓掃除のついでに掘り起こし、庭に移植した。対で移植したのだが、うち一本は翌年芽を吹くことなく枯れてしまい、もう一本はたくましく大きく育った。今では庭の一角でしっかりと存在感を示すまでになり、一週間ほど前から赤紫色の花が咲き始めた。香りはまぎれもなく薔薇のそれで、甘いというよりははっきりと自己主張するような、官能的と言っても良い強い香り。ただ園芸の薔薇に比べるとあっという間に開き切りすぐ花びらを落として散ってしまうのが惜しい気もする。この写真の花は、あの夏のはじめの、誰も見る人もない、強い日差しが照り付ける中で咲いていた色と同じだ。
ハマナス
ブルー・ムーン
ホワイト・クリスマス
クイーン・エリザベス
お庭にこんなに美しい薔薇が咲いているなんて、素敵です。
トゥールには、ロンサールのバラ園があるのですが、ロンサールは女性を花に例えることが多かったと聞いて、日本人女性にとってはあの有名な歌が浮かんでしまい、花=終わりある美しさと感じてしまいます。フランス人の先生に質問したら、この時代の平均寿命を考えると一概にそうとは言えない、と言われました。他の国ではどうなのでしょうか?
薔薇の詩人と言われるロンサールの薔薇園があるとは、トゥールはさぞ美しい街なのでしょうね。ロンサールは自分の悲恋から薔薇の花のはかなさをうたったのかもしれませんが、イギリスでは薔薇を一族の紋章にしたり(薔薇戦争の両家のように)と、必ずしも短命ということはなく強い花という意味もあると思います。なお、おっしゃておられるロンサールの有名な歌とは、
A Sa Maistresse の第2節
Las! voyez comme en peu d'espace,
Mignonne, elle a dessus la place
Las! las ses beautez laisse cheoir!
O vrayment marastre Nature,
Puis qu'une telle fleur ne dure
Que du matin jusques au soir!
のことでしょうか?たしかにこの歌では朝から夕暮れまでの一日の命ですね。
ご回答ありがとうございます。はい、トゥールにはロンサールが住んでいた家があるのです。とても美しい街なので、次にヨーロッパに来られる機会がありましたらぜひお立ち寄りください。
はい。ロンサールが花の短命を歌った詩、そうです。わたしはどうしても、かの有名な、花の色はうつりにけりないたずらに、、、と重ねてしまい、やはり男性は女性の美しさを期間限定と考えているのか、と。邪推です。
イギリスの紋章では薔薇を美しくて強い花、という意味で使われていると知り、納得です。
楽しいやりとりをありがとうございました。