コロナ禍のしばらく前、高校の同期生が還暦を迎えるというので、盛大な同期会が催されたことがある。今日、本棚を整理していたらこの同期会の記念誌が偶然出てきたので、つい座り込んで見入ってしまった。当時の一学年は10クラス、一クラス50人だったので、同期生は500人。共学だったが、男女比は約2対1だった。この同期会に出席したのは多分4割くらい。
幹事が母校から名簿を貰ってきたのだろう、その時の記念誌には全員の名前がクラス毎にアイウエオ順に書かれている。この高校は一年から二年に進級するときにクラス替えがあり、二年と三年の間にはクラス替えがなかった。一年の時に親しくなった友人のうち何人かはまた一緒になった。そのうちの一人が歯科医の息子で、彼自身も当然のように歯学部に進学し、長らく大学で教鞭をとったあと今では都心に立派な個人病院を経営しているのがいる。
一度、従姉が舌に違和感を感じて医者の紹介を頼まれたことがあり、彼に電話したところ、普通なら数週間待たされるところを直ちに診療してくれたことがあった。彼は口腔外科の権威でもある。
各クラスに3-4人、「ご逝去」という特記がある。60歳までで一割弱のクラスメートが他界しているのかと思うと、普段は生きているのが当たり前だと思っているのが、まるで足元の土が少し崩れているような感じを受ける。その中にはすぐに顔を思い出すことのできるのが何人かいた。そして二年生の時に米国に留学し、大学卒業して官僚となり、その後選挙に出て市会議員になった女性も含まれていた。笑っている顔など見たこともない、向上心の強い人だったが、折角そこまで行っても早死にしたら何にもならないではないかと思う。彼女のほか、結婚した女生徒の欄には高校時代の旧姓が括弧書きされている。これはジェンダー平等の観点からは問題のあるところだろう。
高校は大学に比べると通過点のようなところに思えて、印象が薄いところもあったが、今思うと実にバラエティーに富んだところだった。信じられないくらい頭の良かったのもいたし、その後の進路だって千差万別。自分の中ではこの高校を少し過小評価していたところがあったように思う。
還暦を迎えるころは、組織で働いていると多くの場合、第一線から退くころに当たる。その意味では人生の大きな区切りの時期に当たると言えるだろう。記念誌に掲載されていた高校の卒業式の時の集合写真の輝くような表情にくらべると、同期会の最後に撮った集合写真には、どこか寂しさが漂っている気がしてならない。
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