回顧と展望

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悲しみは空の彼方に

2022年01月20日 17時24分43秒 | 日記

今日のNHK BSプレミアムシネマは1959年に公開されたメロドラマの傑作と言われるアメリカ映画「悲しみは空の彼方に」。原題の「Imitation of Life」というのがどうしてこういう日本語の題名になったのかは寡聞にして知らない。この映画は1934年の同名の映画のリメイクで、その時の邦題は「模倣の人生」。たしかに直訳ではあるが、やはりこれだけでは何を意味するのか想像するのが困難。一方でこの映画がフランス語圏で公開された時の題名は「Mirage de la Vie」。これを訳せば「人生の幻影」となる。

ここではニューヨーク近郊のコニーアイランドを舞台にした(成功を夢み、そして成功した)女優とその周辺の人物が描かれている。ショービジネスの世界もいくつか出てくるがそれ以上に、養育係兼家政婦の黒人女性およびその娘(混血ながら白人として見られたいと渇望する肌の白い)を巡る、当時の黒人に対する差別の苛烈さを極めて批判的に描いている。この映画の後、アメリカでは黒人に対する人種差別をなくす様々な取り組みがなされてきたし、オバマのように黒人の大統領が出現するまでに至っているが、この映画で描かれた人種差別は決して過去のものではないと思われる。そのせいか、60年以上経っても古臭さを感じさせない。

黒人の母親が病死して葬列が進もうとするその時に親を捨てて行方知れずになっていた娘が駆けつけ棺に縋り付いて泣くところで終わるこの映画、アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたファニタ・ムーアの熱演には思わず涙腺が緩みそうになった。

と同時に、この映画の舞台なっているコニーアイランドの富裕層の生活ぶりにも目がいく。その豊かな生活は今の平均的なアメリカ人の生活水準から見ても十分に豪華、豪華すぎると言えるだろう。そこには資本主義を謳歌する1950年代当時のアメリカの圧倒的な経済力を垣間見ることが出来る。昨今、日本でも若い世代の中に、自分たちの将来の生活水準は今の親の水準を下回るのではないか、という悲観的な見方があるという。この映画を見るアメリカ人の中にはそんな思いを抱く人がいるのではないか、とふと思った。

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