コロナ感染者が350万人を超え、死者も9万人を超えて厳しい都市封鎖(ロックダウン)の続くイギリスで、もし車を持っていたら息抜きの出来るところは郊外の、自然保護団体ナショナル・トラストが運営する歴史的建造物(主として貴族の所有していた城や館)や庭園だろう。相続税の高いイギリスでは、多くの貴族(爵位を持っている、と言う意味で)は、住み続けながら館と付随する庭園をナショナル・トラストに寄贈し一般に開放している。世界に名だたる富豪、ロスチャイルド家の居城であるWaddesdon Manor(ワッデスドン・マナー)も例外ではない。現在、開放されているのは庭園のみであり、ロックダウンに伴う政府からの指示により建物内部に入ることは出来ず、また、レストラン等も閉鎖されている。かなり数を絞った上での完全事前予約制、かつ、園内での知り合い等との集合も禁止されている。先日、Skypeで話した友人もこのところ頻繁に散歩(運動不足解消)を兼ねてナショナル・トラストの庭園に足を運んでいると言っていた。
この、イギリスにあるとは思えないような16世紀フランス・ルネッサンス様式シャトーは、ロスチャイルド家3代目のフェルディナンドが19世紀末に建てたもの。外観は数あるイギリス貴族の館の中でもひときわ異彩を放っており、ナショナル・トラストが管理するマナーハウスの中でも毎年最も人気のある(訪問者数の多い)館の一つに挙げられている。
ここは建物自体が第一級の歴史的建造物に指定されている(Grade I listed house)ほか、贅を尽くした内装や調度品はフェルディナンドの好みのロココ調で、掛かっている絵画も殆どがロココ時代のもの。
このブログでは先ごろブーシェとフラゴナールの絵のことを書いたがその延長で、この館のコレクションの中でロココ風の調度品を二つほど。ロンドン駐在時、ナショナル・トラストのメンバーになっていたので、ここには無料で入場することが出来た(ナショナル・トラストの年会費は払わなければならないが)。コロナが終息して、またこの館を訪れることが出来るのはいつのことか。
18世紀フランスの椅子(ボーヴェ織カバー)
18世紀、マイセン陶器で飾られたフランス式時計
Waddesdon Manor外観
モントリオール美術館は椅子の歴史的コレクションを持っていますが、そこに行った時、椅子というのは権力者の場所の指標になること、そしてロココ時代のものが最もきらびやかで、絶対王政という権力を飾る工芸の粋を集めているのだなと思いました。
また磁器は、イギリスは行っていませんが、フランス、スウェーデン、デンマークの宮殿に行って彼らが東南アジアから言えば異状ほど陶磁器にあこがれていて、多量のコレクションを競争していたこと、特にマイセンはヨーロッパで初めて磁器を焼き、それがちょうどロココの時代だったのでデザインがロココそのものが多くありました。
磁器は作ったときの輝きがそのまま残るので、ヨーロッパの輝かしいロココの記憶のバックボーンになっていると思います。
コメントありがとうございます。
ロココの椅子や時計・陶磁器は立体的なものだけに、一層煌びやかですね。
マイセン、ドレスデンの陶磁器の名品の多くが第二次大戦後ドイツに侵攻してきたソ連兵によって破壊されました。
恐ろしいことです。