回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

Wimbledon Common

2020年12月03日 15時10分09秒 | 日記

この写真は、先月末、ロンドンの家の近くのWimbledon Commonで撮られたもの。冷気のせいか少し靄がかかっている。夏には鬱蒼として空はどこにも見えなかったが今は枯葉を落として色の褪せた木の枝越しに薄い雲のかかった空が拡がっている。

家の近くにこういった空間が広がっているのは散歩好きには得難いものだ。しかし、歩き続けていないと足元から寒さが忍び寄って来る。飼い主と一緒に散歩している犬たちは左右にジグザグに歩いてすこしでも暖をとろうとしているようだ。

近くに大きな楢の木がある。落葉樹として葉を落としているこの老木は、言い伝えではここWimbledonに邸宅を構えていたヘンリー八世の6番目にして最後の妻であるキャサリン・パーがこの木の下で夫の死を嘆き悲しんだとある。

ヘンリー八世はその遺言で彼女に莫大な年金を支払うように取り計らったが、彼女はそれに見向きもせず間もなくかつての恋人トーマス・シーモア(彼女にとっては4番目の夫)と再婚してしまう。しかし、その夫には彼女が養育していたのちのエリザベス一世との間で醜聞を起こし、エリザベスを家から追い出すが彼女自身は初めての女の子を生んだ後産褥熱のためあっけなく世を去ってしまう。キャサリンの死で莫大な財産を手に入れたトーマス・シーモアはその権力欲ゆえに謀反を企て、結局は処刑されてしまうというから当時の英国はあるいは英国王室はどこか血なまぐさい。

その高い教養から、ヘンリー八世の寵愛と信頼を得(処刑されることもなく、また離婚されることもなく)たキャサリン・パーからは、周囲の男たちは権力欲や色欲に目がくらんだ軽薄なものにさえ見えたかもしれない。

それでなくても夜の長いこの時期のロンドンは陰鬱だが、さらに今年は外出もままならない。もしこのような広い公園がなかったら精神衛生上はこの上なく厳しいものになっただろう。枯葉の敷き詰められた散歩道で深く息を吸い込むと鼻の奥が痛くなるような冷たさを感じていると、頭のほうも冴えわたってくるように思う。先週、10年来の知人からの頼みごとに応えることが出来なかった。熟慮の上の判断だが、それでもどこかに後悔のようなものが残っている。渋い柿を食べた後、口の奥の方にそれがしばらく張り付いて残っているような、あるいは歯の奥からにじんでくる苦さのような感じとでも言おうか。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ra9gaki_do)
2020-12-03 15:27:25
お元気でお過ごしでしたか?
寒くなりました。
風邪など引かれませんように
お体くれぐれも大切に!
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Unknown (popra)
2020-12-03 17:53:56
体調を悪くされてるのかなと心配しておりました!
お元気で何よりです!
harborside様ならではのクリスマスシーズン記事を楽しみにしていまーす☺️
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Unknown (harborside)
2020-12-04 13:25:33
ra9gaki_doさま
コメントありがとうございます。
すっかり冬ですね。
絵手紙教室のお仕事師走で多忙を極めることと思いますが十分ご自愛ください。
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Unknown (harborside)
2020-12-04 13:27:21
Popraさま
コメントありがとうございます。
ご心配おかけしました。
昨日、ニューヨーク・ロックフェラーセンターのクリスマスツリーが点灯しましたね。
ピアノで聞く「ひいらぎかざろう」も素敵でさすがと思いました。
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