世界最大の銀行JP Morgan Chaseのロンドンを舞台にしてこの銀行に60億ドル以上の損失を発生させた同行の元トレーダー2人Javier Martin-Artajo とJulien Grout、通称「ロンドンの鯨」を米国検察当局とFBIが近々逮捕に踏み切る模様。英米の間には犯罪人引渡条約が結ばれているから、この2人の身柄を確保できれば米国に移送することになる。欧州生まれのこの2人の所在は明らかになっておらず、実際に逮捕できるかは今後の捜査による。
この2人に加え、法人としてのJP Morganにどのような刑事責任を問えるかが、今回の焦点にもなっている。米国における金融不正事案では、監督当局SECとの間では、司法取引による和解金(実質罰金)を支払うが、その際には、当該会社は自己の「不正を是認も否認もしない」形とする。しかし、今回SECはあくまでJP Morgan にたいして「不正の是認」を追及とする強硬な方針にあるといわれている。それだけ、今回の事件では、会社側の悪質さ・不手際が際立っていると言う事のようだ。ただ、実際に裁判となると今回の不正なるものが実務の専門家ですらその解釈に相違が出るほど複雑かつ曖昧な規制に基づいた違反であり、はたして陪審員が判断できるのか、疑問ではある。
かつて、大和銀行ニューヨークを舞台にした債券の不正取引があり、現地採用の日本人トレーダーと法人としての大和銀行が裁かれ、結局大和銀行は米国から追放されたが、その際の手口は幼稚の一語に尽きるものだった。今回はそれに比べると比較にならないほど巧妙、複雑そして大胆。さらに、大和銀行の場合、件のトレーダーは自首して捜査に全面協力した点も今回とは異なる。
ただ、浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ というのだけはこの現代においても通用している。
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