こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

これからだよ

2016年01月21日 00時24分35秒 | 文芸
「これからだよ」
おかあちゃんがつぶやいた
「待ってるから、いっぱい」
息子をみようとしない
「すばらしいことが」
天を仰いだおかあちゃん
ぽろっとこぼれた涙
「それが、お前の人生なんだから」
声が震えていた
それでも
息子をみようとしない
でも息子のことで
頭がいっぱいなんだ
それだけは
ちゃんとわかった
おかあちゃんの息子だもん
わかってるよ
もう人様に迷惑かけないわ
もうおかあちゃんの涙
見たくないもん
いい息子になるからさ
もう泣くなよ
ええか、おかあちゃん!

いくら語りかけても
もう何も言ってくれない
僕が大事にしまってた
思い出も受け止めてくれやしない
そうか
おかあちゃん天国に行っちゃったんだよな

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デカシタ!

2016年01月20日 01時18分24秒 | 文芸
年が明けて、

十四日に連絡があった。

「いま出産しました。

娘です!」

 娘婿の声は,

一オクターブ上がっていた。

第一子の誕生は、

いつも感動ものだ。

私の場合も同じだった。

喜びは体中をかけ巡った。

その時に授かったのが、

いま出産した娘である。

 今回は違う意味の喜びがあった。

なんと『おじいちゃん』になったのだ。

 実は子供が四人いる。

息子二人に娘二人。

末の娘をのぞいて、

みんな社会に出ている。

三十を越す息子らは、

最初から,

「俺、

結婚しない」

と言い切った。

居酒屋の店長をしていては、

異性とデートする時間も取れないらしい。

親としては、

孫を持つのを、

もう諦めの心境だった。

それが今回、

娘が打ち破ってくれた。

デカシタ!

わが娘よ。

もうすぐ娘が里帰りしてくる。

初孫との顔合わせが楽しみだ。

 とにかく、

これで今年の生きがい目標ができた。

最高のおじいちゃんになって、

孫を猫可愛がりするぞ!

へへへへへ……嬉しいな。






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素敵な記憶

2016年01月19日 01時00分51秒 | 文芸
「ゆーきや、

こんこん。

あられやこんこん。

ふっても、

ふっても~~♪」

 童謡から思い浮かぶ光景。

それは子供のころに満喫した、

わがふるさとの姿である。

 冬になると、

よく雪は降り積もった。

ちょっと冷えたかなと思えば、

チラチラ白いものが降り出す。

こな雪、

ぼたん雪、

あられ……冬の光景は白く彩られた。

楽しくて家を飛び出し駆け回った。

手を突き出すと、

雪は手のひらに舞い降りる。

あっという間に解けた。

降り続けると、

手のひらに白く積もった。

 夜にしんしんと降り出せば、

翌朝はあたり一面真っ白の銀世界である。

なぜか胸が感激でときめいた。

雪だるまつくりをを競いあう。

手製の竹スキーで滑る。

そして雪を手で丸めて、

楽しい雪合戦だ。

ほっぺたを真っ赤にして、

はしゃぐ子供たちのなかに、

わたしはいた。

 もうあの情景の再現は難しい。

雪が降らなくなった。

暖冬というより、

温暖化なのだろう。

 あの光景を、

さとの子らにも見せたいなあ。
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あの日の記事

2016年01月18日 00時22分42秒 | 文芸
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しゃかりきの日々

2016年01月17日 01時08分28秒 | 文芸
「お義父さん、

子供が

いま生まれました」




 長女の夫が連絡をくれた。

初孫誕生!

六十七歳。

遅いといえば遅いおじいちゃんだ。




 妻がおもむろに訊いた。




「どんな気持ち?

おじいちゃんよ」




「ピンと来やへん。

おじいちゃんなんて……」




「素直に喜べば。

すべて順調ってこと」




 確かに順調だった。

子供四人を授かり、

さほど問題もなく

人生を送って来た。 




 でも、

モヤモヤしている。

結婚する時に妻と交わした約束は、

何一つ実現していないのだ。




 三十五年前、

いっぱいの夢と希望に胸をふくらませた、

高校生の妻に出会った。

私は駅ビルの喫茶店調理場に勤める三十男。

唯一の共通項は、

演劇だった。




 全国大会で賞を取った、

高校演劇部の部長だった彼女。

社会人になっても続けたいと、

私が主宰するアマ劇団に入団を求めてきた。

他のメンバーにない芝居にかけた情熱は、

いつしかグループのリーダー的存在になった。




 ちょうどその頃、

私は念願だった喫茶店経営に踏み切った。

社会に出た時から抱き続けた夢の実現である。

開店準備に奔走する私を見かねたのか、

彼女はアルバイトを申し出た。 




 彼女は最高の助っ人だった。

短大に通いながら、

時間があればアルバイトに駆けつける彼女に、

信頼は増すばかりだった。。




 短大を卒業する直前に、

彼女の逆プロポーズを受けた。

女性との付き合いが苦手で結婚を諦め、

自分の店と劇団に人生を賭ける覚悟をしたばかりだった。




「ひとりでバタバタしてるん見てられへん。

かわいそうやから私がそばにいてやるわ」




 その日から私は彼女をひとりの女性と認めた。

結婚を前提に付き合いが始まった。

しかし、

店の経営は生半可なものじゃない。

人並みなデートもできない。

それでも、

店が終わると、

できるだけ顔を合わせた。




 あれは、

赤穂の海岸だった。

星を見上げながら、

私は彼女に結婚を申し込んだ。




「一緒に生きていこう。

君でないと僕の人生のパートナーは務まらない」




 自分でも恥ずかしくなるキザっぷりだった。




「子供ができても、

芝居作りは絶対やめへん。

家族で劇団作って、

田舎を巡演して回ろう」




「それ本気なの?」




「ああ。

僕と君をつなぐのは芝居なんだ。

生涯二人で芝居をやっていかなきゃ。

約束する」




「うん!

約束だよ。

じゃ結婚してあげる」




 今思えば青臭い宣言だった。

それでも、

あの瞬間、

二人の絆は強く結ばれたのだ。




 子供に恵まれてからも、

約束通り劇団活動を続けた。

喫茶店も順調だった。




 三人目の子供を授かると、

生活は大きく変わった。

大黒柱の責任が重くのしかかった。

子供らの将来を考えれば、

収入を優先しなければならなくなった。

劇団活動をしばらく休むことにした。

結局、

そのまま芝居は諦めざるを得なくなった。

四十五年近く続けた芝居への未練を犠牲にした。

いつか再開するとの思いを、

心の奥深く刻んだ。




 以来、

仕事に専念した。

不振になった喫茶店を閉めて、

ほかの働き口を掛け持ちした。

妻も共稼ぎで、

育児家事に奮闘した。




 夫婦の頑張りは、

四人の子供を、

それなりの社会人に育てあげた。

大学教育も受けさせた。

親のやるべきことを、

ついにやり遂げたのだ。




「いまさら芝居できっこないよなあ」




「当たり前やん」




 即答する妻に、

芝居はもう思い出なのか。




「ごめんな。

お前との約束、

果たせなんだわ」




 私の中には、

まだあの頃の青春が、

影は薄くなっても、

ちゃんと残っている。




「約束やなんて、

あんなもん破るためにあるんや。

おかげで、

私ら幸せになったやんか」




 そう。

あの約束を、

しゃかりきになって守っていたら……!

いま私たちに笑顔はなかったかもしれない。

複雑な思いで、

妻を見やった。




(お前の笑顔を絶やさんように、

頑張らなきゃ)




 それは妻にする、

人生最後の約束だった。
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つらいなあ

2016年01月16日 00時41分12秒 | 文芸
ニュースでスキーツアー高速バスの大事故を報じている。

すさまじい現場の状況に、

昨年遭遇した横転事故を思い出して、ぶるっと身震いした。

犠牲者は10代後半から20代前半……わが娘と同世代なのだ。

若い命が失われるのは、

実に耐えがたい。

娘がもしも遭遇したら、

気がくるってしまうだろう。

ご遺族の心情を思えば……アアーー



心の乱れを何とかしたくて、

娘の部屋へ。

彼女は大学に行っている。

静かな部屋に、

「ガリガリ」

「バン!バン!」

と、

思い出したように!

騒々しくなる。

そう、ウサギのフクちゃんと、

モルモットのマルちゃんだ。、

私の気配に、

「こっちへ来て!」

張り合うのだ。

ウサギのケージの前で、

「……つらいよな、

若い人が死ぬのを見るのはさあ」

話しかけている。

フクちゃんはケージの隙間から、

鼻先を突き出して懸命だ。

手を入れると、

顔を摺り寄せる。



おやつを少しやる。

「しばらく、

一緒にいていいだろう」

あぐらをかいて、

ケージの扉を開ける。

するっと飛び出すウサギのフクちゃんだ。

でも、

しばらくはねると、

いつのまにか私の膝の上に上がって来た。

フンフンと手先を嗅いでいたかと思うと、

「コリコリ」

おいおい、

俺の手はおやつじゃないんだぞ!

思わず、

笑ってしまった。

また、

私の重く沈みかけた心を

救いあげてくれた。

さんきゅー!

フクちゃん。

「ガリガリガリ」

かなり焦っている。

モルモットのマルちゃんだ。

わかってるよ。

お前も、

私を癒してくれるんだよな。

すぐ、

そっちへ行くよ。

生きているから、

味わう、つらさや苦しみ、

そいつをお前らに、

救ってもらうなんて、

人間って、

自慢できる代物じゃないんだ。

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初孫だ~!

2016年01月15日 01時30分10秒 | 文芸
おじいちゃんになったぞ!

昨春結婚した娘が、

新しい年早々に、

出産したのだ。

「生まれました!」

婿さんから喜びの連絡を受けた。

すぐにピンとくるものはなかったが、

じわじわと沸いてきた感激!

4人子供を授かったが、

初孫である。

67で初孫は、

少し遅め。

息子2人は結婚する気は、

さらさらなさそう。

それも時代なのだろう。

てなわけで、

孫を持つなど夢物語にしか思っていなかった。

それが、

ついに初孫だ。

私の人生、

いつも、

遅れっぱなしである。

結婚をあきらめたとたんに、

逆プロポーズ。

あれこそ、

遅れてきた男の再骨頂だった。

「お前、結婚するとは思わなんだ」

友人は口をそろえていう。

生真面目でヘンコツな変人だったから、

そうみられて当然だった。

それでも、

人並みに結婚できたのだ。

子供も4人。

人生捨てたものではない。

真面目に生きていれば、

神様も見捨てはしないのだ。



ちょっと脱線しすぎかな?

とにかく、

またまた人生に喜びの一行が

加わったのだ。

素直に幸せを感じることにしよう。



さて、産院に直行だ。

どんな言葉を、娘に、

かけてやるかな?

「おめでとう」

じゃ他人行儀か。

「ご苦労さん」

これも……ムムム?



決めた。

黙ってうなずいてやろう。

それも顔を崩して、

何度も頷くのだ。

「お父さんらしい」

人とのコミニューケーションが苦手な、

父と性格がそっくりな娘には、

ちゃんと通じるよな。

よし、

急いでいくぞー!








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やり直そう

2016年01月14日 00時16分22秒 | 文芸
ふいに足が止まった。

なにか目に入ったのだ。

見やると、

カラフルな観光旅行のパンフレットを、

差し込んだスタンドがある。

京都・嵐山の観光案内が、私の目を奪った。

 懐かしい気持ちにそそられ手に取った。

京都観光名所のカラー写真が、

記憶にある光景と重なる。

冬枯れた嵐山・渡月橋を、

寄り添い寒さをしのぎ、

黙々と歩く二人……。

 付きあっていた彼女が妊娠したので、

周囲が奔走、

結婚が急遽決まった。

当時、

ちいさな喫茶店を営んでいた私は、

常に商売優先。

結婚式も新婚旅行も、

考える余裕はなかった。

「奥さんのために、

結婚式も新婚旅行もやってあげなきゃ駄目だ。

それが男の責任だぞ」

 昔気質な父の言葉。

無視はできなかった。

 結婚式は父が急遽見つけた古い神社で済ませ、

新婚旅行は、

それでも妻と二人で決めた。

決めたというより、

親や友人たちの手前、

旅に出たと繕うためだったのだ。

 盛大な見送りを受け、

新幹線で出発。

近場の神戸ポートピアホテルに落ち着いた。

「もう帰ろうか?」

 私の気持ちを気遣う妻の顔を見ると、

とてもそんな気になれなかった。

愛する妻なのだ。

「京都へ行こう。

嵐山は君が行きたがってたとこだから。

それに二人一緒だと楽しいよ」

 足を向けた京都嵐山は、

寒々としたシーズンオフのさなか。

寒い中、

身重の妻と歩いた。

ただひたすら、

人影のない名所旧跡を……。

(あいつ、

何も言わず笑顔でいたけど、

きっとわびしい思いしてたんだろうな……)

 もう一度パンフレットに目を移した。

 そして決めた。

妻と桜満開の嵐山を歩こう。

三十六年目、

新婚旅行をやり直すのだ。

 寒さが厳しい中、

京都観光(?)を我慢強く共にしてくれた妻。

おなかの赤ちゃんと親子三人、

初めての旅だった。

あの日に知った妻の優しさと思いやりが、

四人の子に恵まれた幸福な家庭を、

身勝手な男にくれたのだ。

 今度は私。

愛をこめたふたり旅を贈ろう!

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猿真似

2016年01月13日 00時11分15秒 | 文芸
眼鏡をかけ始めたのは,

六年生のとき。

そこでさっそくつけられたあだ名が、

メガネザル。

それも、

クラスで一番成績のいいヤツが、

「ゴーグル・モンキー」と,

きざな横文字風に命名した。

 クラスの誰もかれもが顔を見れば、

「ゴーグルモンキー、ゴーグルモンキー」

の大合唱。

子供は残酷なものだ。

呼ばれる方が、

どんなに傷ついたかを考えもしない。

 といっても、

近視は進む一方で、

牛乳瓶の底みたいな分厚いレンズと,

黒縁のメガネを外せなくなった。

恥ずかしくてたまらなかった。

「猿が木から落~ちる♪」

 はやし立てられるのも,

我慢の限界だった。

それでも孫悟空に変身できるはずもない。

なら最後の手段と取ったのは猿真似。

猿の動きと顔を作って、

「キャキャ」

と道化た。

「お前、

すごいうまいのう、

猿の真似!」

 一躍クラスの人気者に。

そうなると,

メガネザルのあだ名を口にする者は,

みるみる減った。
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クラスメート

2016年01月12日 00時27分29秒 | 文芸
地元の高校を受験した。

受験生は市内の各中学生がほとんど。

ベビーブーム世代だから、

それなりに競争率は高かった。

ただ昨年まで母校の志願者は、

ほぼ全員合格していた。

 入試本番の日。

志願する生徒は中学校に自転車で集合だ。

普段徒歩通学で、

あまり慣れていない自転車に、

緊張感はいや増した。

列を組んで、

黙々と高校に向かった。

 試験が終わり、

また全員うち揃い、

帰途に。

三日間の試験中。

自転車の隊列で往復だ。

 合格発表の日、

また自転車の隊列で向かう。

試験日とは違いワイワイガヤガヤと、

誰も不合格になることなど頭になかった。

田舎の中学校でのんびり育つと、

こうなる。

 帰り道は、

あの試験日と同じ無言の隊列となった。

三人が不合格!

仲よしの友達が受けた試練を、

みんなが共有した。

帰りに誰も隊列を抜けるわけにはいかない。

自転車の列は、

学校に帰り着くまで、

まるで葬列だった。

世間の厳しさを,

初めて味わう日となった。
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