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ボンバル機胴体着陸事故で事故調が報告書

2008-06-01 10:28:58 | 鉄道・公共交通/安全問題
「作業手順に不備」事故調が報告書(毎日新聞)

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 高知空港で昨年3月、全日空のボンバルディア製DHC8-Q400型機(乗員乗客60人)の前脚が出ずに胴体着陸した事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は28日、前脚の格納ドア開閉装置の「スペーサー」と呼ばれる筒状部品が飛び出し、開扉を妨げたのが原因とする報告書を公表した。スペーサーを所定の位置に留めるボルトが欠落したまま機体が納入された疑いが強いという。ボ社は05年6月の納入前試験で事故機の開閉装置を損傷、修理の際の不手際でボルトを付け忘れたとみられる。

 事故調は同日、「重要な部品の交換作業で会社側の手順の指示が具体的でなかったことがボルトの付け忘れミスにつながった」として、製造国・カナダの運輸省に対し、品質管理体制の強化をボ社に指導するよう求める安全勧告を出す。

 報告書によると、前脚格納ドアの開閉装置を動かすアーム状の部品「トグル・リンク」の支点から金属製のスペーサー(直径1センチ、長さ3センチ)が約1センチ飛び出し、「サポート・フィッティング」と呼ばれる固定板に引っかかって開扉できなかったことが分かった。スペーサーはトグル・リンクの動きをスムーズにする部品で、本来はボルトによってリンクの支点に固定される。

 しかし、調査の結果、外部機関の鑑定でボルトを付けた形跡がない▽全日空側は機体を受領した05年7月以降、開閉装置に触れていない--ことが判明。ボ社のボルト付け忘れの疑いが強まった。

 ボ社は05年6月16日、納入前の機能試験を行った際、前脚ドアを開けたままにする安全ピンの差し込みが不十分だったため、不意にドアが動き、トグル・リンクとサポート・フィッティングを損傷した。作業現場に開閉装置一式の交換を指示したが、現場は損傷したこの2部品だけを交換していた。

 開閉装置は、米国の部品メーカー「グッドリッチ」が組み立てた状態でボ社に納入している。ボ社の作業現場に問題部分の修理用マニュアルはなく、事故調は、会社が作業手順を徹底しなかったことがミスにつながったと結論付けた。ただ、「海外の製造会社に対する調査権はその国にある」との原則から、事故調はボ社の社員らから直接の聞き取りができなかった。このため、ボルト付け忘れの詳しい経緯は不明で、報告書には具体的な対策を盛り込んでいない。【窪田弘由記、高橋昌紀】

 ◇ボンバルディア機事故報告書の骨子

・前脚ドア開閉装置の部品「スペーサー」が飛び出して固定板に引っかかり、開扉しなかった
・スペーサーを留めるボルトを付けた形跡がない
・ボ社が納入前試験で開閉装置を損傷。部品交換の際、ボルトを付け忘れた
・ボ社は作業現場に具体的な修理手順を示さなかった
・乗務員の乗客への指示と着陸操作は適切

 ◇ボ社「改めて深くおわび」
 ボ社のトッド・ヤング副社長は28日、国土交通省で会見し、「多くの皆様にご心配やご迷惑をおかけしたことを改めて深くおわびする」と陳謝した。

 日本でのボ社製航空機への不信感について聞かれると「事故後、修理マニュアルを具体化するなど5段階の改善策を実行した。安全性には自信を持っている」と強調した。【窪田弘由記】
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高知空港での衝撃的な胴体着陸事故は、「ボルト付け忘れ」という単純ミスが原因だった。

そのことももちろん大きな問題だが、よりいっそう深刻なのは、ボンバルディア社が現場に作業手順書を示していなかったことである。作業手順書は航空機の修理、点検作業の手順を示すもので、いわば「航空機の取扱説明書」というべきものだ。

家電製品だって、「うちの製品には取説はありません」といわれたら、ユーザーは「ふざけるな」と怒って即刻その場で返品だろう。それが、人の命を預かる航空機メーカーが取説を作っていないなんて全くあり得ない話だ。ボンバルディア社は、「事故を受けて手順書を作った」などと強弁しているが、そういう問題ではないだろう。

全日空が、こんなメーカーの航空機でも購入せざるを得なかった背景には、定員50人~100人クラスの航空機が、世界的に見てもDHC8-Q400くらいしかないという事情が見え隠れする。かつては国産プロペラ機YS-11や、今も成田~中部空港線などで使われているフォッカー50などがこのクラスの代表だったが、YS-11は製造中止になり、フォッカー社は1996年に倒産したため、ボンバルディア社の独占に近い状態となっている。その上、DHC8-Q400は低燃費で高性能と来ている。経費節減のため、多少の欠陥には目をつぶらざるを得なかったということらしいのだ。

全日空は、ボンバルディア社に賠償請求する方針と伝えられる。全日空にも欠陥飛行機を導入する決定をした責任があると当ブログは考えるが、せめて少しでも事態を改善してゆくため、被害を受けた航空会社はどんどん訴訟を起こすべきだ。
作業手順書も作らず、事故発生後「今作ったからいいだろ」と開き直るような航空機メーカーにお灸を据えるには、「安全を軽視することがいかに高くつくか」をわからせる以外にないからだ。

事故調の報告書も突っ込み不足だと思う。
今回、事故調は「海外の製造会社に対する調査権はその国にあるとの原則」から、「ボ社の社員らから直接の聞き取りができなかった」などとヌルいことを言っているが、そもそも日本の空を飛んでいる飛行機は全部外国製だ。

ボーイングもエアバスも外国メーカーだが、それでも事故調は可能な限りの手段で外国メーカーから事情聴取をして事故を調査してきた。それが今回に限って、こんなに弱腰なのはいったいどうしたことなのだろうか。

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