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イージス艦事故、「海自側に主因」の裁決

2009-01-22 23:20:35 | 鉄道・公共交通/安全問題
イージス艦衝突:海自側に「安全の徹底を」海難審判裁決

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 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」が昨年2月に衝突した事故の海難審判で、横浜地方海難審判所(織戸孝治審判長)は22日、あたごの所属部隊、第3護衛隊(当時は第63護衛隊)に対し、安全航行の指導徹底を求める勧告をするとの裁決を出した。審判所は「あたごが動静監視を十分に行わず、清徳丸の進路を避けなかったことが事故の主因」と判断した。裁決が確定すれば、海自組織に対する勧告が初めて発令される。裁決は一方で、事故時の当直士官、長岩友久・前水雷長(35)ら個人4人への勧告は見送った。【池田知広、吉住遊、杉埜水脈】

 刑事裁判の被告に当たる指定海難関係人は▽長岩・前水雷長▽前艦長の舩渡(ふなと)健1佐(53)▽交代前の当直士官、後潟(うしろがた)桂太郎・前航海長(36)▽安宅(あたか)辰人・前船務長(44)▽第3護衛隊--の1組織、4個人が指定されていた。

 裁決は、長岩・前水雷長について「当直についた際、他船の動静を十分監視しなければならない」と指摘。こうした、あたご側の監視不十分について「乗組員の教育訓練に当たり第3護衛隊が、艦橋と戦闘指揮所(CIC)の連絡・報告体制、見張り体制を十分に構築していなかった」と、勧告する理由を述べた。

 一方で長岩・前水雷長には「勧告しない」、後潟・前航海長ら3人の行為については「発生原因とならない」として、個人4人への勧告は見送った。ともに業務上過失致死容疑などで横浜地検へ書類送検された長岩・前水雷長と後潟・前航海長に関し、裁決の判断が分かれたことは、地検の処分や起訴後の公判に微妙な影響を与える可能性がある。

 また、漁船側についても「衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも(事故の)一因」と述べた。

 事故は昨年2月19日午前4時6分に千葉・野島崎沖で発生。衝突で清徳丸は船体中央部で分断され、船長の吉清(きちせい)治夫さん(当時58歳)と長男哲大(てつひろ)さん(当時23歳)が行方不明になり、同5月に死亡認定された。

 あたご側は審判で、清徳丸があたごの後方を通り過ぎる進路をとっていたが、事故直前に大きく右転したため危険が生じたと反論。事故後も再発防止策を練り、教育・訓練していることから「勧告するまでもない」としていた。これに対し裁決は「あたご側主張の進路は合理性に欠ける」と退けた。
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船舶の交通方法を定めた海上衝突予防法は、「二隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない」(第15条)と定めている。当時、相手を右舷側に見る位置にあったのはイージス艦「あたご」だった。同艦の責任は免れず、裁決は妥当と判断する。

自衛隊側は、海難審判が始まって以降も「回避しなかった漁船の責任」と主張し、海難審判庁理事官(検察官に相当)と対立を深めていたとされるが、組織として責任を認めようとしない傲慢さに当ブログは怒りを表明する。20年前の1988年にも、やはり海上自衛隊の潜水艦「なだしお」と釣り船「第一富士丸」の衝突事故があったが、この際も「第一富士丸」を右舷側に見ていた「なだしお」に回避義務があったにもかかわらず、同艦は回避措置を取らなかった。難を逃れて生還した「第一富士丸」船長の「軍艦は絶対に避けてくれない」という言葉を、私は今も忘れない。

海上衝突予防法は「千九百七十二年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約に添付されている千九百七十二年の海上における衝突の予防のための国際規則の規定に準拠して、船舶の遵守すべき航法、表示すべき灯火及び形象物並びに行うべき信号に関し必要な事項を定めることにより、海上における船舶の衝突を予防し、もつて船舶交通の安全を図ることを目的とする」(第1条)と立法目的をうたっている。この法律が他の法律と違うのは、条約の実施法としての性格を持っている点にある。考えてみれば、海は世界全体の物であり、領海という概念はあるにせよ、ある1国の独占物ではないから、そのために条約という形で国際社会が統一的な航海ルールを設けているわけである。海上衝突予防法は、海上衝突予防条約を日本国内の船舶に適用させるためのルールということができる。

今回、自衛隊がこの法律を無視する姿勢を取ったことは、事実上「自衛隊は国際条約を守らない」と宣言したことになるわけで、海自には猛省を促したいところだが、一方では「そもそも自衛隊に法令遵守なんてできるのか」という根本的な疑問も当ブログは持っている。なぜなら、防衛省・自衛隊は、その存在自体が憲法に違反しているわけであり、生い立ちからして違憲と考えられる組織に法令遵守なんてできるわけもないと思われるからだ。

今回の事件が明らかにしたのは、自衛隊の「最新鋭イージス艦」は漁船を探知する能力もろくに持ち合わせていないということだ。これで「外敵」を発見しようだなんて、冗談も休み休みにしてほしい。

こんなことを書くと、「イージス艦のことなんて何も知らないくせに、偉そうなことを言うな」などと軍事オタク諸君に揶揄されそうだが、そんな軍事オタク諸君こそ、「装備さえ作れば防衛できる」と考えているおめでたい連中である。いくら高いカネをかけて艦船を建造しようとも、自衛隊員たちのこの弛緩ぶりでは壮大な税金の無駄遣いに終わることは目に見えている。

もうひとつ、この事件が教えてくれたのは、「軍隊は国家権力や特定支配層は守ってくれるが、庶民のことは守ってくれない」という事実である。この事実を知ってしまった以上、私たちは何も恐れることはない。今、我々がなすべきことは、無駄なイージス艦の建造など中止し、こんなところで無駄遣いされているカネを、きちんと国民生活に振り向けられるよう政治の転換を図ることだと考えるが、いかがだろうか。

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