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八戸―青森間の鉄道資産、83億円で購入へ

2009-01-14 21:35:43 | 鉄道・公共交通/交通政策
県:八戸―青森間の鉄道資産、83億円で購入表明 県議会特別委に報告 /青森
(毎日新聞青森版)

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◇「貢献策」への質疑相次ぐ
 2010年の新幹線新青森駅開業に伴う並行在来線(青い森鉄道)の延伸問題で、県は8日、八戸―青森間(96・0キロ)の鉄道資産を約83億7000万円(消費税含む)でJR東日本(東京都)から譲渡してもらうことを県議会の新幹線・鉄道問題対策特別委員会に報告した。委員は「一定の評価ができる」とする一方、「納得できない」との意見も出していた。

 県によると、JRから鉄道資産を取得する際、96年度の資産ベースで約160億円がかかるという。05年8月ごろに始まった両者の協議で、県側は「無償もしくは低廉な価額」での譲渡、JR側は簿価(約160億円)での譲渡を主張していた。

 協議の結果、昨年12月26日、三村申吾知事と田中順造県議会議長、JR東日本の清野智社長が会談し、約83億円で譲渡することでまとまった。一方、開業までに駅舎をはじめとする鉄道施設を修繕し、開業後は新リゾート列車の導入やJRからの出向社員に支払う給料の負担軽減、観光キャンペーンへの取り組みなどをJRが行うという。県は「JRによる貢献策は『100億円+α』で、実質的県負担はゼロ」としている。

 8日の特別委員会で、古村一雄委員(県民クラブ)や伊吹信一委員(公明・健政会)らから、「100億円+α」の根拠や譲渡価格が県財政に与える影響などを問う意見が相次いだ。だが、蝦名武副知事はJRの貢献策について「感触としては得ているが、JRとの約束で言えない」と述べるにとどまった。JR東日本本社広報部は「3年半にわたって精力的に協議を進めてきた結果、譲渡価額について青森県とおおむね合意に至った。今後、譲渡契約に向けて最終的な調整を進めたい」とコメントした。

 譲渡価額の支払いについては、最大70%まで起債し、残りは積立基金を崩していく方針で、県議会に承認を求めるのは来年9月の定例会ごろになる見込み。

 青い森鉄道は、県が鉄道資産を所有し、JRからの出向社員を含む第三セクターが旅客運送をする「上下分離方式」を採用している。【後藤豪】
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青森県のサイトによれば、同県の予算規模は約7000億円。83億円は県予算の1%を超える数字であり、財政基盤の脆弱な地方にとって決して安い買い物ではない。議員たちが積算根拠を求めるのは当然だろう。

青森県は「JRによる貢献策は『100億円+α』で、実質的県負担はゼロ」と説明しているようだが、それはあくまで「譲渡時の負担」に限った話である。鉄道譲渡後は県が施設保有者として保線などの維持管理を行わなければならないわけだが、この記事にはどういうわけかこのランニングコスト部分が出てきていない。実際には、鉄道は譲渡を受けてからの方が金がかかるにもかかわらず。

83億円が高いか安いかと言えば、青森県は傲慢不遜な巨大企業・JR東日本を相手によく値切ったとは思う。鉄道が、施設を使用させてその対価で稼ぐ特殊な産業であることは、当ブログでもかねてから指摘しているわけだが(過去ログ)、その特性ゆえに鉄道は、生産設備が老朽化すれば減価償却と称して帳簿価格を下げればよい他の産業とは違う。鉄道施設が老朽化すればそれに見合うだけの資本を投下して施設・設備を維持しなければならないから、鉄道施設の簿価は他産業の減価償却設備のようには低下しない。その中で青森県は半額に値切ったのだ。

県の財政の1%を拠出して、青森県が東北本線の一部である輸送の大動脈を買い取ることに当ブログは反対ではない。国民・地元住民が望むなら、公共交通は採算を度外視してでも維持すべきものであり、このような選択肢は当然あり得るものだ。

むしろ、当ブログが疑問視しているのは以下の2点である。

1.施設を買い取ることで、青森県が未来永劫、保線などの維持費を拠出しなければならないことを県がきちんと議会や住民に説明しているのか。また、そのようなランニングコストにいくらかかり、それは県が拠出すべき金額として妥当かどうか。

2.「新幹線が開業したら在来線はご苦労さん」という現在の鉄道政策は、地方切り捨てであると同時にJRの公共性放棄であるが、青森県がこうしたJRの地方切り捨てと公共性放棄について、どのような見解を持っているのか。

私のブログなどどうでもいいから、県民に対し、青森県はこれらの点をきちんと説明し、理解に努めてもらいたいと思う。

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