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東海道新幹線、相次ぐミス~お膝元の「技術」は大丈夫か?

2010-02-02 23:23:16 | 鉄道・公共交通/安全問題
東海道新幹線新横浜~小田原間で29日に起きた架線切断事故は、架線の老朽化ではなく、パンタグラフへのボルト付け忘れという、きわめて初歩的な人為ミスであることが判明した。その上、翌30日にはまた新横浜~小田原間で信号(ATC)異常のため列車が一時運転を見合わせる騒ぎがあった。JR東海のお膝元で技術の継承が途絶えつつあるのではないかという危惧を抱かざるを得ない。

2008年6月、JR不採用問題を巡る訴訟に証人として出廷し、「安全・安定輸送のため」に人材活用センター(国鉄「改革」反対派組合員を隔離収容したセンター)を作ったとうそぶいた葛西敬之会長に、今、改めて当ブログは問う。新幹線の海外売り込みやリニア建設にうつつを抜かしている場合なのかと。

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東海道新幹線のボルト締め忘れ、ベテラン社員も見逃す(朝日新聞)

 週末のダイヤを大混乱に陥れた東海道新幹線の停電事故は、架線でも車両でもなく、作業員のボルト付け忘れという単純な人為ミスが原因だった。JR東海は「普段から人為ミス防止に向け、対策や教育をとっているが、機能しなかった」と釈明した。

 JR東海などによると、事故で外れたパンタグラフ上部の「舟体(ふなたい)」には、架線から車両に電気を取り込む「集電舟」などがある。

 通常、舟体は年数回ある本格検査の際しかボルトの着脱は行わないという。簡易検査主体の大井車両基地にとっては、今年度初の作業だった。

 ただ、ボルトを付け忘れた社員2人はそれぞれ3年と10年程度の経験しかない若手と中堅だったとはいえ、確認役の車両技術主任は約30年の経験を持つベテランだった。3人は事故後の同社の聞き取り調査に、当初は「自分たちは、しっかりやった」と話したという。しかし、同時に交換を行った6号車のパンタグラフには付いていた確認マークが、12号車には付いておらず、付け忘れであることがはっきりした。

 ボルトがないまま1千キロ以上走りながら、事故までの間、パンタグラフが外れなかったのは、偶然でしかない。上からのしかかる舟体の重さと、下からバネの力で伸びようとするアームで「サンドイッチ状態」になっていたのだ。

 同社関係者は「脱線などに発展するミスではない」というものの、舟体とアームの重さはそれぞれ約12キロあり、市街地などで起きれば大事故に発展するおそれもあった。

 また、ボルトはパンタグラフ以外にも使われるため、作業後に余っていても付け忘れに気づきにくかったという。にもかかわらず、チェックシートなどでミス防止の仕組みを取っていなかった。

 国土交通省によると、パンタグラフのボルトの付け忘れによる事故は、在来線では過去に数例あるが、新幹線では極めて異例。担当者は「鉄道は、新幹線も在来線も車両ごとに部品が違う。点検項目を法令で定めるのは難しく、事業者に任さざるを得ない」と話す。同省は徹底した再発防止策の提出を同社に求めている。

 JR他社のある幹部は「極めて初歩的なミス。東海は海外展開やリニアに熱心で、足元がおろそかになっているのではないか」と指摘する。東海道新幹線では事故2日後の早朝にも変電所の作業員が配線を誤り、上下14本が遅れるトラブルがあった。JR東海の長田豊・新幹線鉄道事業本部副本部長は会見で「部品の数量管理や作業記録を改善し、再発防止に努める」と述べ、態勢面の見直しを始めたことを明らかにした。(小林誠一)
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<東海道新幹線>信号故障で運転見合わせ 3800人に影響(毎日新聞)

 31日午前6時ごろ、東海道新幹線の新横浜-小田原間で信号トラブルがあり、同区間の上下で約30分間運転を見合わせた。このトラブルで上下14本が最大で76分遅れ、約3800人に影響が出た。

 JR東海によると、午前6時に下り「ひかり493号」が始発の新横浜駅を出た直後、前方に列車がいないのに信号機が停止信号になった。平塚変電所(神奈川県平塚市)で30日に電力関係の工事を行った際、信号装置の配線を誤ったことが原因と分かり、配線を正常に戻して復旧させた。

 東海道新幹線では29日に品川-小田原間で下りの架線が切れ、約3時間半停電するトラブルがあったばかりだが、JRによると、29日の事故との関連性はないという。【佐々木洋】
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「極めて初歩的なミス。東海は海外展開やリニアに熱心で、足元がおろそかになっているのではないか」という「JR他社のある幹部」の指摘は全く正しい。技術の継承ができなくなりつつあるのではないか。

ヒューマンエラーはいつどこででも起こりうる。そのエラーを補うシステムが必要だが、鉄道会社が多種多様な車両を運用している以上、そのひとつひとつについて行政が点検基準を定めることは困難かもしれない。しかし、記事にもあるように市街地でこの事故が発生していれば大きな被害が出る可能性もあった。国土交通省はせめて鉄道事業者から車両ごとに点検・保安基準を提出させ、事後であっても専門家を交えてその妥当性を審査するような仕組み作りをすべきだろう。

JR東海が、車両の点検基準を見直さなければならないのは当然である。しかも、今回のトラブルを通じて、補助吊架線が85年以来、四半世紀にわたって交換されていなかった事実も明るみに出た。この際、架線の交換基準の策定も含めた東海道新幹線の技術・安全の立て直しに真剣に取り組んでもらいたい。

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