人生チャレンジ20000km~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

「限界集落」と化した地方における公共サービスとは

2010-02-04 23:51:11 | その他社会・時事
農産物直売所/高齢者への対応を急げ(日本農業新聞論説)

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 季節の産物が並ぶ農産物直売所へ出向くのを楽しみにする人は多い。売り台の産物を眺めたり、POP(購買時点広告)を読んだりすると、季節や農家の暮らしを感じる。だが、直売所へ行きたくても行けない人たちがいる。地域に住む「交通弱者」のお年寄りだ。地産地消の拠点として存在感を増す直売所は、さまざまな地域貢献策をとっているが、「食育」に偏るきらいがある。地域の先輩、JAの先輩であるお年寄りへの目配りも考えたい。

 まずは、直売所へ出荷する高齢会員への対応だ。お年寄りが庭先の畑で孫をかわいがるように育てた作物を、直売所まで日々運ぶのは大変だ。車の免許を持たない人もいる。お年寄りが丹精して作った少量の作物や漬物を直売所に並べる手伝いを考えたい。

 直売所会員は高齢化し、担い手づくりが共通の課題である。各地の直売所で育成策を探るが、スムーズに進んでいない。ならば、現役のお年寄りにできるだけ長く活躍してもらうことだ。直売所側が集荷を担えば、まだまだ生産を継続できるお年寄りは多い。

 直売所による集荷は、既に各地で取り組みが芽生えている。福井県では今年度から、「ふるさと畑緊急総合サポート事業」を始め、直売所側の集荷に道筋を付けようとしている。この事業は、中山間地域などで高齢であったり、輸送手段がなかったりして出荷されない農産物を集めるため、直売所に集荷費用を一部助成する事業だ。いずれ、どの直売所も取り組まなければならない課題といえよう。

 次は地域に住む高齢の消費者対策だ。買い物にも不自由するお年寄りは着実に増えている。今、スーパーや生協が行う「ネットスーパー」の利用が増え、幼児を抱えた女性だけでなく、お年寄りにも利用が広がっている。直売所としても検討すべき課題である。JA直営店では、福岡県JA北九のアンテナショップ「土間もやい 黒崎店」が、買い物した商品を当日、自宅に配達する「お買いもの便サービス」を始め、高齢者らから好評だ。買い物に出づらいお年寄りから注文を取り、届ける事業へ進展すれば、さらに喜ばれよう。ぜひ実現してもらいたい。

 直売所の良さは、生産者を身近に感じながら買い物ができる点だ。友達や知り合いの産物を見るのも楽しい。宅配では味わえない楽しみだ。具体的な対策はまだ見られないが、マイクロバスなどで巡回し、お年寄りを直売所に案内できないだろうか。行政や福祉団体と連携して、デイサービスなどの送迎で直売所ルートを作りたい。5億円以上を売り上げるJA直営の大型直売所が各地にでき、地産地消の拠点としての地位を確立してきた。JA直売所が「弱者への目配り」をすれば、直売所の、そしてJAの社会的地位を高め、地域の人々から信頼されることにつながる。
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ここにきて、地方の交通弱者の問題がクローズアップされ始めた。鉄道ファンとして、20年前からローカル線の実態を見ている私にしてみれば、何を今さらの感はあるが。

とりわけ、ここ10年ほどの日本は、大都市部さえ生き残れば地方などなくなってもいいという政治が行われてきた。その結果、地方では鉄道はおろかバスも消え、自治体のマイクロバスやオンデマンドタクシーが唯一の交通手段というところが目立ってきている。早急に対策を講じなければ、買い物に行けなくてお年寄りが「孤独死」などという事態が起こりかねない。いや、実際、報道されないだけで、すでにそのような事態はどこかで起こっているのではないか。

長年、地方交通の実態を見てきた当ブログだが、みずからの無力を最も感じるのは、このような事例に遭遇したときである。実際、ビジネスのために活動している民間企業はこんな時、全くアテにならない。ハコモノ行政のツケで財政赤字まみれになった自治体も動けない。集落共同体もお年寄りなど弱者ばかり。そうなると、次の出番は農協などの協同組合やNPOなどの非営利法人である。私企業のように利潤目的でなく、自治体のように財政赤字や法制度の縛りもそれほどなく、バブル期に危ないビジネスに手を出さなかったおかげで財政も健全で、かつある程度自由に動ける若者も組織でき、新しい存在であるため昔からの集落共同体的しがらみもない。そんな新しい時代に適合した新たな「公共」のあり方が、今後の鍵になりそうな気がする。

公共性をもって維持すべき経済分野には積極的に国や自治体が関与せよ、とかねてから当ブログは主張しているが、実際のところ、厳しい財政赤字と公務員の人材難(数は確保していても、時代に合った生産的思考のできる人材の枯渇)の中で、国や自治体が新しい公共サービスの担い手となるのはもはや困難ではないかと思うことがしばしばある。新しい「公共」は、国・自治体からではなく、NPO法人や協同組合など、従来は「公共」の周辺部をうろうろしながら、その主流を担い得なかった人たちの中から生まれてくるのではないかという予感がしている。そして、そのとき、新しい「公共」の中心的担い手となるのはおそらく、女性と若者だろう。少なくとも、既得権益の確保と自己保身しか頭になく、自分にとって得になることでなければ動こうともしない中堅男性が、その担い手になり得ないことはすでにはっきりしている。

あり得べきシナリオの中で最有力なのは、苛烈な「派遣切り」などの体験を通じて、もはや都会では食べられないと悟った若者や女性たちの間に、地方を見直す機運が生まれ、従来の発想にとらわれないアイデアと行動力を駆使して、彼ら彼女らが地方再生という仕事にみずからの居場所を見つけていく、というものである。ついでに言えば、若者や女性を食べさせることができなくなりつつある大都市の姿を白日の下にさらけ出したという意味において、2008年末の「年越し派遣村」は、やはりひとつのエポックメーキングな出来事であったといえる。少なくとも当ブログは、あの悲劇的ながら未来への希望も混在した年末年始の出来事の中に、我が世の春を謳歌してきた大都市の断末魔をはっきりと見たのだ。

農協は、NPOと異なり、昔ながらの地域的しがらみを持って自由に動けないことも多いに違いないが、それでもこの論説記事にあるような取り組みを農協が率先して進めようとしていることは注目すべきだと思う。農業の社会的地位が低下して危機感を持った農協が、生き残りを賭けて「総合地域再生サービス業」に打って出るための揺籃期なのかもしれない。焼け野原になった地方に最後の砦として残った農協が、今後、どのような積極策に打って出るのか、当ブログは注視したいと考えている。

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