安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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JR不採用問題、解決案まとまる

2010-02-24 20:17:04 | 鉄道・公共交通/交通政策
<JR不採用>与党と公明が解決案 230人雇用要請へ(毎日新聞)

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 87年の国鉄分割・民営化に反対した国鉄労働組合(国労)の組合員ら1047人がJRに採用されず、3年後に旧国鉄(国鉄清算事業団、現在は独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構)からも解雇された問題で、与党3党と公明党の各担当者は23日、会合を開き、政治解決に向けた素案をまとめた。戦後最大の労働問題とされる不採用問題を巡っては、組合員側が解雇撤回などを求める訴訟を争っているが、約23年ぶりに政治決着する方向で大きく動き出した。今後、政府の最終的な解決案が焦点となる。

 関係者によると、担当者が各党に持ち帰って検討し、3月上旬に国土交通省など政府に要請する。素案は「人道的観点から救済する」とした上で、同機構が▽解決金として1世帯当たり約1600万円▽解雇で消滅した期間の年金相当分として約1300万円--など計約270億円を組合員側に支払う。また、不採用者が設立した18の事業体に各1億円の支援金を提供することや、55歳以下の組合員約230人の雇用もJR各社に要請する。

 組合員側によると、救済の対象となるのは現在、約910世帯。4党案を基本的に受け入れ、訴訟を取り下げる構えという。

 これまで組合員側が旧国鉄を相手取った訴訟では、「所属組合による採用差別があった」と認め、賠償を命じる地・高裁判決が計3件ある一方、「時効(3年)が成立」として敗訴したケースもある。いずれも双方が控訴したり、最高裁に上告している。

 鳩山由紀夫首相は2月4日の参院決算委員会で、「人道的立場から解決を急がなければならない」と前向きな姿勢を示している。【坂本高志、松谷譲二】

 【ことば】JR不採用問題

 国鉄分割・民営化では北海道、九州の国労組合員を中心に約7600人がJRに採用されなかった。中央労働委員会は最終的に国鉄清算事業団にも解雇された1047人の大半について選考見直しや採用を命じたが、JR側は行政訴訟を起こし、03年に最高裁で「JRに採用責任はない」とした判決が確定。現在は旧国鉄を相手取った6件の訴訟が係争中。

 ◇解決へ「ラストチャンス」

 JR不採用問題について、与党と公明党が政治解決に向けたたたき台をまとめた背景には、国鉄分割・民営化から23年が経過した今も放置され、問題が長期化していることがある。国鉄改革の国会審議で当時の中曽根康弘首相は「一人も路頭に迷わせない」と述べたが、果たされないままで、国際労働機関(ILO)も政治的、人道的見地からの解決を促してきた。

 解雇された1047人は政治、行政、司法のはざまで翻弄(ほんろう)されてきた。全国の地方労働委員会はJRの「不当労働行為(採用差別)」を認めたが、最高裁は03年、「差別があった場合の責任は旧国鉄」と、JRを免責した。また、00年に自民、公明、保守の与党3党と社民党が「JRに法的責任なし」と認めた上で、雇用や和解金を検討するとの「4党合意」を示したことがあるが、国労が内部をまとめられず頓挫した。

 現在、平均57歳と高齢化した組合員の多くは「今回がラストチャンス」と受け止める向きが大半だ。4党合意時と異なり、採用差別を認めた三つの司法判断があるという支えのほか、左派系労組への抵抗感が強かった自民党が下野した今しかないとの思いもある。

 これまで裁判所が認めた賠償額は最大で1人550万円で、解雇無効とした判断はないが、4党案は「路頭に迷わない内容」を求める組合員側に一定の配慮をみせた。だが、鳩山内閣がたたき台を大きく後退させるようであれば、組合員側が裁判闘争にUターンし、自民党時代の「負の遺産」をいたずらに延ばす可能性も残る。【坂本高志】
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国鉄分割・民営化以来、23年間解決することなく続いてきた不採用問題は、連立与党3党案がまとまり、政治決着に向けいよいよ大きな山場を迎えた。現在、解雇された元職員のほとんどをまとめる立場にある「4者・4団体」が要求してきた3項目要求「雇用・年金・解決金」にほぼ沿った内容といえる。

この解決水準に納得のいかない人も当事者の中には大勢いるだろう。当ブログ管理人も、23年間、筆舌に尽くしがたい苦労をしてきた人たちに対する解決水準がこんなものでいいのだろうかと思うひとりである。しかし、ここで解決できなかったら、おそらく当事者が生きているうちに解決はないと思う。指導部は、この際、なんとしてもこの解決水準を下げることなく交渉をまとめる力量を発揮して欲しい。

55歳以下の組合員の雇用をJR各社に要請するという方針は妥当なものだ(55歳で区切る必要はないと思うが)。団塊世代の大量退職を控え、2011年度もJR東日本JR東海ともに大量採用の計画がある。被解雇者らを採用できないなどということは絶対にないはずである。

23年後の今、JRは国鉄とはまったく違った企業になり、尼崎事故などJRの安全性は崩壊している。そんなときに、安全に対しては大きなこだわりを持った元国労組合員たちの一群がJRに戻ることができるなら、それには大きな意味があるといえよう。

折しも、尼崎事故を巡って、神戸第1検察審査会が井手正敬・元JR西日本社長(元国鉄総裁室長)の起訴の是非を判断するため、遺族らから意見を聴いている。再び起訴相当の議決が出れば、改正検察審査会法に基づき、井手氏らは自動的に起訴されることになる。23年前、首を切られた国鉄マンたちが職場に戻り、一方で、元国鉄総裁室長として彼らの首切りを先導した井手氏が刑事被告人となれば、それは明らかな歴史の逆転といえる。「従業員のために経費節減に努めるメザシの土光こそが正しく、国民の迷惑も顧みずストで列車を止める怠け者集団の国労は国賊」という価値観から「国民のために安全・安定輸送に尽くしてきた労働者たちこそが正しく、企業を私物化し107人を殺した井手こそが真の敵」という価値観への、それは文字通りコペルニクス的転換となるのだ。

当ブログはこれまで、国労組合員らの解雇問題と、尼崎事故に代表される安全問題を根底でつながったひとつの問題として、すなわち鉄道の持つ「公共性」を破壊した民営化に起因する問題として捉え、それに対する批判的視点を持つよう常に提起してきた。民営化によって発生した問題は民営化の見直しによってしか解決することはできない。少なくとも、利益最優先と化したJRの民営化見直しに一定の見通しがつき、旧国鉄の全国ネットワークを引き継いだこの鉄道に新たな「公共性」復活の一歩が記されるまで、当ブログが「国鉄を壊した者」への告発をやめることはない。

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