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【JR尼崎事故】歴代社長公判へ向けた動き

2010-06-21 22:20:55 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR歴代3社長の強制起訴以来、しばらく動きのなかった尼崎事故だが、検察から起訴された山崎前社長を含む公判の準備段階での動きが出始めた。今日は、そうした動きに注目してみよう。

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指定弁護士が社員らを事情聴取…起訴後、補充捜査で(読売新聞)

 JR福知山線脱線事故で、改正検察審査会法に基づき、井手正敬(まさたか)氏(75)らJR西日本の歴代社長3人を業務上過失致死傷罪で強制起訴した検事役の指定弁護士が起訴後、JR西社員ら数人を任意で事情聴取していたことがわかった。指定弁護士が補充捜査として関係者を取り調べたのは初めて。

 指定弁護士は、3人が社長在任中、事故防止の対策を指揮する総合安全対策委員長を兼務し、現場の危険性を認識できたのに自動列車停止装置(ATS)を設置すべき注意義務を怠ったとして4月23日に起訴。このため、3人が現場カーブの危険性について、どのように報告を受けていたかなどを確認するため社員らに事情を聞いたとみられる。

 兵庫県明石市の歩道橋事故で、明石署の榊和晄(かずあき)元副署長(63)を強制起訴した指定弁護士も起訴後、関係者を聴取しているという。
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検察審査会の議決に基づく強制起訴裁判で、指定弁護士が関係者に対する補充捜査を行うのは、明石歩道橋事件と合わせて初めての事例である。指定弁護士は、検察官に補充捜査への協力を求めることができるとされているものの、そもそも検察が有罪にできないと判断した事件を起訴するのだから、検察がどこまで本気で補充捜査に協力するかは疑問を感じる部分もある。

しかし、それでも今回、JR西日本社員などの関係者は任意の事情聴取にも協力的で、記事を見る限りではある程度の補充捜査はできたようだ。憶測に過ぎないが、JR西日本社内でも、歴代社長、とりわけ井手元社長に不満を抱く者が大勢いるということなのかもしれない。

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尼崎JR脱線事故 山崎前社長の初公判、来年に(神戸新聞)

 107人が死亡した尼崎JR脱線事故で、業務上過失致死傷罪で在宅起訴されたJR西日本の山崎正夫前社長(67)の初公判が、事実上来年にずれ込むことが16日、複数の関係者への取材で分かった。9日の第3回公判前整理手続きで、検察側が請求したJR西関係者の供述調書について、弁護側がすべて不同意にしたため。争点や証拠を整理する同手続きの長期化は必至で、初公判は早くとも年明けになる見通し。

 山崎前社長は昨年7月、在宅起訴された。

 検察側・弁護側双方の関係者によると、9日の手続きで弁護側は起訴内容を否認。山崎前社長の供述調書について判断を留保し、JR西関係者の供述調書については「事実をありのままに記していない部分がある」などとして数十ある調書をすべて不同意にしたという。

 検察関係者は「供述調書が不同意になると、その関係者を証人尋問しなくてはならない」としている。公判前整理手続きの予定は、10月14日の第6回まで決まっている。
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当ブログは、尼崎事故について、歴代3社長と同様、山崎社長にも責任があると考える。しかし、裁判で弁護人の弁護を受けることは誰にも認められた権利であり、山崎社長が否認すること自体は仕方がない。山崎社長にしてみれば、「会社の経営者として当時の状況の中で精一杯適切な判断をしたのに、そのことで何故に罪に問われねばならないのか」という思いはあろう。「これが罪に問われるなら、誰も経営者の引き受け手などいなくなる」という思いも、あるいはあるかもしれない(当ブログは、経営者の高額な報酬を考えれば、その程度の責任を引き受けることは当然と考えているが)。

検察側の供述調書に対して弁護側が不同意を表明したために、検察は法廷の場で証人尋問を改めて行わなければならなくなった。最近、厚労省局長の郵便不正事件を巡る訴訟で、検察の供述調書が裁判官からすべて却下されるなど、検察は手痛い失点が続いているが、このこと自体は、えん罪を防ぐ上では望ましいことであるといえる。むしろ、これまでの「供述調書至上主義」の中で、警察・検察が長期間、被疑者を勾留して強引な尋問を行うことがえん罪発生の原因になってきた。

供述調書の重要性が下がり、法廷での証言がより重視されるようになることは、こうした長期間の拘留による不当な取り調べの必要性を低下させるばかりでなく、被告が法廷で供述を翻して無罪を主張した場合、そのような不当な取り調べ自体が裁判官を無罪判決へと導くきっかけとなりかねないからだ。

検察は、有罪立証の自信があるからこそ山崎社長を起訴したのだろう。そうであるならば、公判の場で粛々と証拠を積み上げればよい。

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強制起訴JR西3元社長、審理併合を決定(読売新聞)

 JR福知山線脱線事故で、改正検察審査会法に基づき、検事役の指定弁護士に業務上過失致死傷罪で強制起訴された井手正敬(まさたか)氏(75)らJR西日本の歴代社長3人について、神戸地裁(岡田信裁判長)は18日、併合して審理することを決めた。指定弁護士は3人を共犯とせず、別々に起訴していたが、過失の構成や証拠が重なるため一緒に審理するのが適当と判断したとみられる。3人はいずれも起訴事実を否認する方針。
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現時点では、裁判所の併合審理の決定は妥当と考える。3社長の行動が、それぞれバラバラなものとして尼崎事故の原因になったわけではない。3社長それぞれが、それぞれの持ち場、立場にあって行動してきたことが複合的要因となって、事故を招いたと考えられるからだ。

3社長の裁判は、形式的には各個人を対象とした刑事訴訟である。しかし、裁かれなければならないのはJR西日本による企業犯罪である。個人の責任追及が目的なら、各被告ごとの訴訟もいいだろう。しかし、企業犯罪として事故の発生原因を追求する中で、再発防止につなげていくためには、企業の組織的失敗が検証されなければならないのである。そのためには、3社長の訴訟を併合し、一体のものとして検証するほうがより望ましい。

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